第69話 二人が選んだ水着なら
私達は、水着を選ぶために服屋に着ていた。
クラーナとラノアの水着は、無事に決まった。後は、私自身の水着を決めるだけだ。
そこで、私はあることに気づいた。二人の水着は、ほぼ私が決めたようなものである。でも、二人は特に反対しなかった。それは恐らく、私が選んだ水着が二人の好みとそこまでかけ離れていなかったからだろう。
私は、クラーナやラノアの好みを理解している。それなら、二人も私の好みを理解してくれているだろう。
何より、私が二人に選んだのだから、私は二人に選んでもらいたいと思った。という訳で、私は二人に水着を選んでもらうことにした。
「クラーナ、ラノア、二人は私にどういう水着が似合うと思う」
「アノンに似合う水着? どんなのだろう?」
「私達が選んでいいの?」
「うん、その方がいいんじゃないかな?」
「なるほど、それはいい考えね。いつもアノンちゃんといる二人なら、きっと彼女に似合う最適解を見つけられると思うわ。結局、何が着たいか、何を着せたいかが、重要だとは思うし……」
私の言葉に、カルテリーナさんも賛同してくれた。
何が着たいか、何を着せたいか。それは、確かに重要なことだろう。
思えば、彼女は私に色々な水着を勧めてきた。でも、私が微妙な顔をしていると、すぐに考えを切り替えていた。似合うとか、似合わないとかではなく、彼女は私の好みを優先してくれたのだ。
恐らく、それが彼女のポリシーなのだろう。私としては、ありがたい考え方である。
「アノンは、体が引き締まっているから、あまり体を隠すということは意識しないでいいと思うわ。出る所も出ているけど、そういう面というよりは、どちらかというと体の線に視線を向けたいわね」
「クラーナ、すごい。アノンのこと、よくわかっているね」
私の質問に、クラーナはすらすらと答えてくれた。
その早口に、私は少し驚いてしまったくらいだ。
なんだか、すごく幸せな気分だ。こういう風に理解してもらえているというのは、とても嬉しいことである。
「でも、ビキニだと前と代わり映えしないんだよね? しかも、目線的には胸に行くんじゃない?」
「ええ、そうね……だから、これでいいと思うの」
「これは?」
「ハイネック……胸元が隠れているでしょう?」
「なるほど……確かに、悪くはないかも」
クラーナが渡してきたのは、ハイネックの水着だった。
胸元が隠れているため、先程クラーナが言っていたように目線は体の線に行くのかもしれない。
とりあえず、私は受け取った水着を着てみる。なんというか、結構安心感のある水着だ。
「……どうかな?」
「ええ、やっぱり、こういう水着がアノンには似合うわ……」
「うん、いいと思う……でも、私的には、こっちの方がいいかも」
「え?」
「あら?」
そこで、ラノアが一つの水着を見せてきた。
それは、同じくハイネックの水着だ。ただ、それはクラーナが持ってきたものとは違い、胸元が透けている。レースになっているようだ。
なんだか、少し大人な感じもする。あれが、私に似合うのだろうか。
「ええ、確かにその方がいいと思うわ」
「え? そうかな?」
「ラノアが持ってきた方が、私も似合うと思っているわ」
「そっか……それなら、そっちの方がいいよね」
クラーナの力強い言葉もあって、私はそちらを選ぶことにした。
二人がこう言っているのだ。そこに、間違いはないだろう。
「なるほど、これで三人の水着がそれぞれ決まったわね。それなら、その方向で話を進めていきましょうか」
「ええ、よろしくお願いします」
これで、私達三人がどういう水着を着るかが決まった。
一先ず話がまとまって、一安心である。




