第66話 水着を買いに来て
私は、クラーナとラノアとともに、服屋に来ていた。
ここは、この町でも結構大きな服屋だ。基本的に、私達はここに服を買いに来ている。
この町では、犬の獣人は差別されることが多い。この服屋も、それは例外ではなかった。
「かわいい!」
「ラノアちゃん、こっち向いて!」
例外ではなかったのだが、最近はこの服屋に関してはそこまで差別を受けていない。クラーナと通っている内に、だんだんと獣人の評価が変わったのだ。
そうなった要因には、ある人物が関係している。私達が、結婚した後くらいにこの服屋にやってきたとある人物が、この服屋を変えたのだ。
「カルテリーナさん、お久し振りです」
「アノンちゃん、クラーナちゃん、それにラノアちゃん、いらっしゃい。今日は、どうしたの?」
その人物こそが、このカルテリーナさんである。彼女は、珍しく獣人に差別のない人だ。
むしろ、この人は獣人に興味津々な人である。とある理由から、彼女はそういう人なのだ。
「実は、ラノアの水着とクラーナの水着と、後ついでに私の水着を買いたくて……」
「水着……いいわね」
私達の目的は、水着を買うことである。
当初は、ラノアの水着だけでいいと思っていたのだが、せっかくなので私達も新調することにした。
カルテリーナさんにとって、興味深いのは、ラノアやクラーナの水着だろう。私の水着には、恐らくそこまで興味がないはずだ。
「獣人の水着……久し振りに、燃えてきたわ」
「あっ……」
「ああ、血が滾る。滾るわ……さて、それなら、早く作業に取り掛からないとね」
カルテリーナさんは、服に対してこだわりがある。もちろん、服屋なのでそれは当然のことであるのだが、彼女は普通の人よりもすごい。
彼女が獣人に興味津々なのは、人間とは違う服が作れるからである。少しの違いではあるのだが、それが彼女にとってとても刺激になるらしい。
「さて、それでは採寸しないとね……あ、あなたとあなた、手伝ってくれる?」
「あ、はい」
「わかりました」
「じゃあ、あなたはアノンちゃん、あなたは、クラーナちゃん、私はラノアちゃんの担当ね。よろしく頼むわ」
カルテリーナさんが獣人に興味津々だったため、他の店員さんも差別意識がなくなった。
他の人に影響を与える程、カルテリーナさんはすごい人だったのである。
私達にとって、彼女の存在はとてもありがたい。獣人への差別がない人が増えてくれるのは、とても嬉しいことなのだ。
こうして、私達は服屋でしばらく過ごすのだった。
 




