第65話 そういう季節
私とクラーナは、今日も冒険者としての仕事をしていた。
今は、いつも通り依頼をこなして、冒険者ギルドに戻って、報酬を貰って、家に帰ろうとしている所だ。
「お、アノン、クラーナ、丁度良かった」
「あっ……」
「あら?」
そんな私達に、話しかけてくる人がいた。
私達の数少ない友人であるリュウカさんである。
彼女の後ろには、ティネちゃん、キーラさん、カルノさんといういつもの面々もいる。恐らく、あちらも依頼帰りなのだろう。
「リュウカさん、私達に何か用ですか?」
「ああ、お前達に一つ提案があるんだ。一緒に海に行かないか?」
「海……ああ」
リュウカさんの言葉に、私はあることを思い出した。
そういえば、もうすぐそんな季節なのだ。
近年、私とクラーナは、夏になると、リュウカさん達とともに海に行っている。キーラさんの実家が所有するプライベートビーチに遊びに行っているのだ。
「もうそんな季節なんですね……季節が巡るのが早いというか、なんというか……」
「まあ、それは、わからない訳ではないな。年を重ねるごとに、一年が早くなる」
私とリュウカさんは、そんな会話を交わしていた。
一年が経つのが、だんだんと早くなっているのだ。クラーナと出会う前くらいまでは、一年というものはとても長くて、苦しいものだった。それがこのように早くなったのは、年を重ねているからというだけではないだろう。
きっと、私は一年が楽しくなっているのだ。楽しい時間というのは、早く過ぎるものである。クラーナやラノアと出会って、楽しい時を過ごしているから、一年が早く感じるのではないだろうか。
「ああ、そういえば、お前のとこの小さいのは、海が初めてなのか?」
「え? ああ、そうですね……ラノア、そもそも海を見たことがあるのかな?」
「それは、わからないわ。あの子が前いた町から考えると、見たことがなさそうな気はするけど……」
「なるほど、まあ、とにかく、海で遊ぶのは初めてということだな? それじゃあ、水着を買ってあげないとな」
「そうですね、そうします」
そこで、リュウカさんが指摘してきた。
ラノアは、海で遊ぶのが、恐らく初めてのはずなのだ。
それ自体は、問題ない。初めての体験は、きっと楽しみなはずだ。
問題は、彼女が水着を持っていないことである。買いに行く必要があるだろう。
「獣人の水着って、なんか難しいんだよな? 早くした方がいいんじゃないか?」
「はい、明日にでも服屋に行こうと思います」
獣人の服や水着は、少し難しい。尻尾の部分の穴などを開けないといけないからだ。
そのため、服屋などには早く行った方がいい。時間がかかる場合もあるので、早ければ早い方がいいのである。




