第63話 帰ってきた娘
私とクラーナは、ラノアが出かけてから三日が経っていた。
今日は、いよいよラノアが帰ってくる。そのため、私達はそわそわしている。
「うーん……」
「クゥーン……」
ラノアが帰ってくることは、嬉しいことだ。
色々とあったが、彼女がいないこの三日間は寂しかった。その寂しさが、やっと吹き飛ぶのである。
だが、帰ってくるまでの間はなんだか穏やかではいられない。なんとなく、そわそわしてしまうのである。
「あっ……」
「あら?」
そんな私達の耳に、家の呼び鈴が聞こえてきた。
どうやら、ラノアが帰って来たようだ。
私とクラーナは、急いで玄関に向かう。いよいよ、再会の時である。
「今、開けます」
私は、ゆっくりと玄関の戸を開けた。
すると、見知った顔が見えてくる。
「ただいま! アノン! クラーナ!」
「おかえり、ラノア」
「おかえりなさい、ラノア」
私達の元に、ラノアは飛び込んできた。
その小さな体を、私達はしっかりと受け止める。
彼女の温もりを感じて、その存在がわかる。それがとても嬉しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。
「……三日振りの再会か。大袈裟な気もするが、こんなものなのかね?」
「お母様、三日は長いですわよ」
「まあ、そうか」
そんな私達の様子を、レクリアさんとレフィリーナちゃんが見ていた。
予想通り、二人ともラノアを見送るために来てくれたようだ。
「レクリアさん、三日間お世話になりました」
「改まる必要はないぜ。今度は、三人で来てくれよ」
「……はい、またいつか」
レクリアさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
今度は、三人で遊びに行かせてもらおう。
「さて、ラノア、これでお別れですわね……」
「うん、そうだね……」
そこで、ラノアとレフィリーナちゃんの目が合った。
二人は、濃密な三日間を過ごしただろう。そんな二人の別れは、とても名残惜しいものであるはずだ。
「また会いましょう」
「うん、またね……んっ」
「あっ……」
ラノアは、ゆっくりとレフィリーナちゃんの頬にキスをした。
先日までと比べると、レフィリーナちゃんの反応は少し異なっている。驚きの感情が、少し薄れているのだ。
唐突にキスされたことには驚いている。でも、キスそのものには驚いていない。恐らく、この三日間で色々とあったのだろう。
「さて、それじゃあ、私達は帰る。お前達も、元気でな」
「はい、レクリアさんもお元気で」
「また会いましょう」
私とクラーナも、レクリアさんと別れの挨拶をする。
こうして、ラノアは帰ってきた。私達のいつも通りの日常が、また始まるのだ。




