第52話 まだ酔いは……
私は、クラーナと話していた。
それは、私と父親であるガランに関することだ。
「もういなくなったから、そんなに反発しようとは思っていないんだ。でも、まあ、単純に父親として考えても、駄目な人だから、普通に愚痴は言うけど……」
「まあ、アノンの中で解決しているなら、それでいいわ」
私の中で、ガランとのことは解決していた。
彼が亡くなってからは、前程嫌っている訳ではないのだ。
ただ、単純に父親として考えていても、彼をそこまで好ましく思える訳ではない。色々と問題がある人だったことは、間違いないからだ。
「あれ? そういえば、クラーナ、酔いは醒めたの?」
「酔い?」
「うん、なんだかさっきまでよりはきはきと喋っていない?」
そこで、私はあることに気づいた。
クラーナが先程までと比べて、少し平静になっている気がするのだ。もしかして、眠ったから酔いが醒めたのではないだろうか。
「アノン、私、別に酔ってなんかいなかったわよ」
「あれ?」
しかし、クラーナの言葉でその考えは否定された。
その口調が、先程と同じだったのである。どうやら、寝起きであまり意識が覚醒していなかったのが、冷静に見えただけだったようだ。
もしかしたら、話も良かったのかもしれない。真剣な話をしていたから、クラーナも流石に真剣になっていたのではないだろうか。
「少し顔を見せてね……」
「あら? どうかしたの?」
「いや、ちょっと確かめたくてね……」
ただ、少しは酔いが醒めていることは確かなようだ。
その顔を見ていると、よくわかる。赤かった顔が、少し元に戻っているのだ。
今のクラーナは、少し酔っているという感じなのだろう。先程のクラーナ以下、私以上という感じだ。
「ところで、アノン、お水は?」
「え?」
「飲ませてくれるのよね?」
「ああ、そういえば……」
クラーナに言われて、私はあることに気づいた。
彼女が寝る前に、口移しでお水を飲ませてあげると約束していたのだ。
それ自体は構わない。お水を飲めば、クラーナの酔いもさらに収まるだろうし、飲ませてあげたいと思っている。
だが、一つ問題があった。私が飲んでしまったため、お水があまり残っていないのだ。
「ごめんね、クラーナ、実は持ってきたお水を飲んじゃったんだよね」
「あら? そうなの? まあ、私も眠っていたものね……」
「少し待っていてね、もう一回汲んでくるから」
「ええ、待っているわ」
私の言葉に、クラーナは頷いてくれた。
こうして、私は再度お水を汲んでくることになるのだった。




