第51話 眠る隣で……
私とクラーナは、お酒を飲んでいた。
明らかにお酒に弱いのに、さらに飲もうとするクラーナを、私はなんとか止めることができた。これで、特に心配することはないだろう。
ただ、その代わりにお水を口移しで飲ませてあげることになった。そのため、お酒を片付けた後、お水を持ってきたのである。
「すー」
「クラーナ?」
しかし、お水を持ってきた時に、クラーナは寝息を立てていた。
酔っ払って疲れて、眠ってしまったようである。少し残念だが、これも仕方ないだろう。
とりあえず、私はクラーナの横に座る。すると、ゆっくりとクラーナが私にもたれかかってきた。
「クラーナ? 起きているの?」
「クゥン……」
起きているのかと思ったが、そうでもないらしい。
恐らく、私の気配に無意識で気づいてもたれかかってきたのだろう。
そのことが、とても愛おしい。起こしてしまうために実行する気はないが、今すぐに抱きしめたいくらいである。
「ふう……」
私は、ゆっくりと持ってきた水を飲む。
なんというか、少し疲れた。恐らく、クラーナを止めるために、色々と頑張ったからだろう。
まさか、彼女がここまでお酒に弱いとは思っていなかった。今後、お酒を飲むのは控えるべきだろう。
一方、私はあまり酔っていない。多少は酔っているとは思うが、ほとんど影響がないのである。
「あっ……」
そこで、私はとても嫌なことを思い出した。
そういえば、ガランは酒豪だったのだ。
もしかして、私はその性質を受け継いだのかもしれない。そのような思考をして、なんともいえない気持ちになった。
「なんで、そんな所で……」
「うん……アノン?」
「あっ……」
私が少し大きな声を出してしまったため、クラーナが目覚めた。
起こさないようにしていたのに、あまりのことに声をあげてしまった。クラーナには、本当に申し訳ない。
「ごめんね、クラーナ、起こしてしまったみたいで……」
「それは別にいいけど、どうかしたの?」
「その……ガランが、酒豪だったということを思い出して……」
「ああ……」
私の言葉に、クラーナは少し切ない表情をした。
彼女は、私とガランの関係性に色々と思ってくれている。だから、そのような表情をしてくれるのだろう。
「そんな顔しないで、クラーナ」
「え?」
「別に、クラーナが気にするような感じではないから。今の私は、単純に娘と父親の関係として話しているつもりだよ?」
「……そうなのね」
ただ、私はもうクラーナにそんな心配をしてもらう必要はない。
なぜなら、私はもうガランに対して、とことん反発しようなどという気持ちはないからだ。
もちろん、色々と複雑ではあるが、前と心情は変わっている。少なくとも、自分では変わっているつもりだ。




