第48話 口移しで
私は、クラーナに口移しでお酒を飲ませることになっていた。
とりあえず、私はお酒を少量口に含む。あまり飲ませたくないため、量はかなり少なめである。
「ん……」
「ええ……」
私が近づくと、クラーナは目を瞑った。
そんな彼女の口元に近づき、私はそっとキスをする。
「んんっ……」
「ん……」
クラーナは、私の口の中から水分を奪っていく。
その後に響くのは、彼女の喉を鳴らす音である。
「ふう……」
「クラーナ、これで満足した?」
唇を離した後、クラーナはとても満足そうな顔をしていた。
これで、彼女もこれ以上飲みたいなどとは言わないだろう。
「アノン、次は私がお礼をしてあげるわ」
「お礼?」
「ええ、私が飲ませてあげる」
クラーナは、尻尾を振りながら、そのようなことを言ってきた。
どうやら、私に口移しで飲ませてくれるらしい。
その提案に、私は少し考える。これは、別に断らなくていいのではだろうか。
私がお酒を飲むのだから、クラーナが飲む訳ではない。多少は飲むかもしれないが、それはかなり少量だろう。
私は、それなりにお酒に強い。それなら、飲んでも問題ないだろう。クラーナが口移しで飲ませてもらえば、絶対に美味しいので、断る理由などどこにもない。
「それなら、よろしくね。クラーナ」
「ええ……」
クラーナは、自分の口の中にお酒を入れた。結構量を入れているように見えるが、気のせいだろうか。
私がそう思っていると、クラーナが迫って来ていた。そのまま、私の口にゆっくりと、その唇をつけてくる。
「んんっ……」
「んん?」
「んっ……」
私は、ゆっくりとクラーナの口の中からお酒を飲む。
クラーナから飲ませてもらうだけで、このお酒の価値はとても上がっている。
正直、滅茶苦茶美味しい。もっと飲みたいと思ってしまうくらいだ。
だが、自制はしなければならないだろう。お酒を飲み過ぎると大変なことになる。これが終わったら、流石にやめにした方がいいだろう。
「お、美味しかったよ……」
「それなら、よかったわ」
口移しでお酒を飲ませてもらい、私はとても満足していた。
こんなに満足できる水分を補給させてもらったのは、久し振りである。
「アノン、もう一度飲ませてくれない?」
「駄目、流石にもうこれ以上は飲んだら体に悪いと思う」
「そんなこと言わないで……もっと飲ませてくれたら、この後たくさんサービスするから……」
「サービス……いや、それでも駄目」
クラーナは、尚もお酒を飲みたがっていた。
しかし、これ以上飲ませる訳にはいかない。これだけお酒に弱いのに、もっと飲ませたら大変なことになりそうだからだ。
こうして、お酒を飲みたいクラーナと、飲ませたくない私の攻防が始まるのだった。




