第47話 お酒を飲んで
私とクラーナは、お酒を口に運んだ。
一口飲んで、すぐに思ったことは、そこまでいい味とは思えないということだった。これを好んで飲みたいとは、あまり思わない。そう思いながらも、もう一口飲んでみるが、感想は特に変わらなかった。
「クラーナ、なんだか、変な味だね……」
「……」
「クラーナ?」
隣のクラーナに話しかけると、返答がなかった。
まさか、何かあったのだろうか。そう思った私は、クラーナの顔を覗いてみる。
「クゥン……」
「うん?」
クラーナの顔は、赤くなっていた。
照れているという訳ではないだろう。恐らく、酔っているのだ。
しかし、クラーナはお酒に一口しか口をつけていない。それなのに、既にこんなに酔っているなどあり得るのだろうか。
「アノン……」
「あ、クラーナ、酔っているね」
震える声でクラーナが話しかけてきたため、私は彼女が酔っていることを確信した。
単純に、クラーナはお酒に弱いようだ。私は、割となんともないので、もしかしたら強いのかもしれない。
「クラーナ、もうお酒はやめておこうか? 飲んでも、あんまり楽しくないよね?」
「そんなことはないわ。お酒、結構美味しいじゃない」
「いや、そんなに顔を赤くしているのに……」
「そんなことはないわ。大丈夫よ」
クラーナは、完全に酔ってきた。
恐らく、今自分がどうなっているか、まったくわかっていないのだろう。
これ以上、クラーナに飲ませたくはない。だが、酔っ払っている彼女が何をしてくるかわからないという面もある。
とりあえず、話は聞いてあげた方がいいかもしれない。それから、ゆっくりと宥めた方がいいはずである。
「そうだ。アノン、私に飲ませてちょうだい」
「え?」
「このお酒を口に含んで、私に飲ませて……」
「ええっ!?」
クラーナの要求に、私はとても驚いてしまった。
口移しで、お酒を飲ませて欲しいとは、中々大胆な提案である。
やはり、酔っているため、色々と大胆になるものなのだろうか。いや、酔っていなくても、クラーナならこういう要求はしてくるので、それは関係ないかもしれない。
「口移しで飲むとか、飲まないとかではなくて、そもそもこれ以上、お酒を飲むのはやめた方がいいんじゃないかな?」
「そんなことを言わないで……」
「……もう、仕方ないな……」
クラーナが上目遣いで要求してきたため、私はそれを飲むことにした。
私が口移しで飲ませるなら、こちらで量を調節できる。少しだけ飲ませて、満足してもらうことにしよう。
こうして、私はクラーナに口移しでお酒を飲ませることになるのだった。




