第42話 お泊りの誘い
ラノアとレフィリーナちゃんの手紙のやり取りは、何度も行われた。
最近は、ラノアもかなり長い手紙を書くようになった。レフィリーナちゃんの方も熱が入ったのか、さらに長い文になっているようだ。
二人の文通は、とてもいいものになっている。楽しそうなラノアを見ていると、こっちまで嬉しくなるくらいだ。
「ねえ、アノン、クラーナ、少し相談したいことがあるんだけど……」
「うん? 何かな?」
「どうかしたの?」
そんな手紙を見た後、ラノアが私達に話しかけてきた。
相談があるということは、手紙の内容で何か悩むような部分があったのだろうか。
「あのね、レフィから誘いがあったんだ。一度こっちの家に泊まりに来てって……その三日間くらい」
「三日間……泊まりに?」
「うん、だから、行ってもいいか聞きたくて……」
ラノアが悩んでいたのは、お泊り会の誘いだったようだ。
その言葉からして、ラノアが一人でレフィリーナちゃんの家に行くということだろうか。それは、少々心配である。
「それは、ラノア一人ということかしら?」
「うん……レフィは、そうしないかと言っているよ。二人も忙しいだろうし、付き合わせるのは悪いんじゃないかって……」
私の疑問は、クラーナが聞いてくれた。
レフィリーナちゃんは、私達が忙しいことを考慮していた。この家から、レフィリーナちゃんの家に行って、泊まって帰ってくるというとかなり長い時間がかかるだろう。
自由な冒険者の仕事をしている私達でも、そのような時間をとるのは申し訳ないのではないか。そのような気遣いを、レフィリーナちゃんはしてくれているのだろう。
「レフィが、レフィのお母さんと一緒に迎えに来て、それであっちの家に行くみたい。だから、道に迷ったりすることはないと思うんだ」
「なるほど……それなら、心配はあまりないかな?」
迎えに来てくれるなら、心配はないかもしれない。
レクリアさんもいるなら、きっと大丈夫だろう。
「ラノアは、一人で行きたいのかしら?」
「え?」
「私達について来て欲しいなら、私達は行くわよ。でも、あなたが一人で行きたいなら、止める気はないわ。どちらがいいか、あなた自身で決めて」
クラーナの言葉は、私が思っていたことと概ね同じだった。
私もクラーナも、ラノアが来て欲しいというなら、一緒に行ける。別に、そこまで冒険者の仕事を重要視していないからだ。
だけど、今回のことは少し違う気がする。なんというか、ラノアが一人で行くことに、意味がある気がするのだ。
だから、クラーナは決断を委ねているのだろう。彼女が、まだ私達を必要とするなら、ついて行く。一人で行くという勇気を持ったならついて行かない。私達が、今心配するべきなのは、それだけなのだ。
「私……一人で行ってみたい。ずっと二人と一緒にいたいけど……でも、よくわからないけど、今回のこれは一人で行ってみたいと思う」
「そう……それなら、今回はラノア一人がお世話になるということでいいかしら?」
「うん、そうみたいだね」
ラノアは、一人で行くことを決意した。
それは、彼女が一歩大人になることを決意したということなのだろう。
その選択は、少し寂しい気もする。だが、それは喜ぶべきことだ。私達の娘が、少し成長してくれたのだから。




