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第17話 顔を舐められるのは

 朝ご飯の後、クラーナの片づけが終わり、私達はソファに座っていた。

 全ては、クラーナの望みを果たすためである。


 つまり、私はこれからクラーナに顔を舐められるということだ。


「その……本当に嫌じゃないのよね?」


 ソファで向き合ってから、クラーナがそんなことを言ってきた。

 クラーナは優しいので、こういう気遣いができる子だ。


「大丈夫、嫌じゃないよ」


 私は、笑顔でそう返す。


 ここまで来て、今更嫌だなんて言う私ではない。

 寝ぼけて約束したことだが、考えてみるとそこまで嫌ではなかった。


 それに、これは犬の獣人が持つ本能的なものだ。

 だから、仕方ないことで、他意はないのである。


 そもそも、クラーナは他人と深く関わったことがなく、その本能を体感するもなかったはずだ。

 きっと慣れてくれば、歯止めが利くようになるだろう。


「それじゃあ、いくわよ」

「あ、うん……」


 私が色々と考えていると、クラーナが近づいてくる。

 いよいよ、私が舐められるのだ。


「う……」

「本当に、大丈夫かしら?」


 やはり、覚悟を決めていても、恥ずかしいものは恥ずかしい。

 私は、結局とても緊張しているのだった。


 クラーナは、顔を赤くして興奮気味である。尻尾をすごく振っていることから、かなり嬉しいと予測できた。

 恐らく、止めてももう無駄なのではないだろうか。


「大丈夫だよ」

「そう? なら、いいわ」


 クラーナがそれだけ言って、私の頬に舌を当てる。

 いつも通り、生温かくて湿った柔らかい感触だ。


「ペロ……」

「その……」


 黙っているのもなんなので、私はクラーナに疑問を聞いてみることにする。


「これって、楽しいの?」

「楽しいわ……ペロ」


 これは、楽しいもののようだ。

 何が楽しいんだろう。


「何が、楽しいの?」

「幸せな気持ちになれるのよ……ペロ」


 幸せな気持ちになるんだ。

 なんだか、ちょっと嬉しいかも。


「ひょっとして……おいしいの?」

「……ええ、おいしいわ……ペロ」


 興味本位で聞いてみたけど、これは聞かなければよかった。

 なんだか、色々よくわからないが恥ずかしい。


「あ……」

「どうしたの?」


 そこで、クラーナが一度舐めるのをやめる。

 そして、一点に視線を集中させているのだ。


「……え?」


 その部分は、私の口である。

 もしかして、口も舐めたいのだろうか。


 口を舐める。それは流石にまずいのではないだろうか。

 だって、それってつまりは、キスということだ。


「ク、クラーナ……」

「う……」


 これは、流石に止めるべきだろう。

 そう思い、私は口を開くのだった。

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