表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティを追放されたので、犬耳獣人少女と生きていく。  作者: 木山楽斗
afterafter

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

168/280

第36話 愛着を持って

 私は、ガランの仕事を継ぎたくない理由を、クラーナに話していた。

 私は、この地を離れたくない。だから、ガランの仕事を継ぎたくないと思っているのだ。


「昔はね……どこかに留まるなんて、考えたことがなかった。私がガランの娘だと知られたら、逃げるように町を移動して、それが当たり前だと思っていたんだ」

「ええ……」

「でも、この町で……クラーナと出会って、この家に住むようになって、私はここにいたいと思うようになっていたんだ。差別してくる人もいるけど、この町には友達もいるし、良くしてくれる人もいる。だから、私はこの町に愛着を覚えているんだ」


 昔の私は、町に愛着など持っていなかった。

 噂が広まれば、逃げていたからだ。私にとって、町は一時的に滞在する場所でしかなかったのである。

 だが、この町ではクラーナとともに長い間暮らしてきた。私はもう、この町から離れたくないと思ってしまっているのだ。

 だから、ガランの部下達の元には行けない。あそこを本格的に取り仕切るというなら、私はこの町を離れなければならないからである。いくら望まれていても、私がならない選択をするのには、そういう理由があるのだ。


「アノンの気持ちは、よくわかるわ。私も、この町に……アノンと出会ってから、私はこの町にいることを幸福だと思うようになっていたわ」

「クラーナも?」

「ええ、テットアさんや小物屋さんみたいに、優しい人もいるし、リュウカ達みたいな友達もできたわ。始めは、この家が都合がいいから留まっていたけれど、今はもう違うと思うわ」


 クラーナも、私と同じ気持ちだったようである。

 私達は、似た境遇だった。だから、その考えも似たのだろう。


「でも、だからといって、彼等の望みに答えないでいいということではないと思うわ」

「言い訳?」

「ええ、彼等に対して、アノンはそのことを打ち明けた? 相談してみたら、案外いい解決策が思い浮かぶかもしれないじゃない」

「相談か……確かに、考えたこともなかったな」


 クラーナに言われて、私は気づいた。

 よく考えてみれば、私は彼等に何も聞いていない。

 自分で勝手に判断して、決めていたのである。それでは、駄目だ。この問題は、私一人で答えを出していいものではないのだ。


「そうだよね……確かに、クラーナの言う通りだよ。私、一人で決めようとしていた。でも、これは皆と話し合わないといけないことなんだよね……」

「ええ、今度行った時にでも、相談してみましょうか?」

「うん、そうするよ」


 クラーナの言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 こうして、私の悩みは解決した。やはり、一人で抱え込まないのは、いいことである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ