第33話 数奇な定め
ラノアの突然のキスにより、レフィリーナちゃんはしばらくすごく混乱した。
しかし、なんとか平静を取り戻して、それは収まった。なんとか、穏やかなレフィリーナちゃんに戻ったのだ。
「ごめんね、レフィ……」
「別に、もう気にしていませんわ」
ラノアは、レフィリーナちゃんに謝っていた。
話している内に、ラノアもクラーナに言われたことを思い出してきたらしく、自分がとんでもないことをしたと自覚ようだ。
「あなた……本当に、可愛いですわね」
「え? 可愛い? そうかな?」
「ええ……」
ラノアを膝にのせて、レフィリーナちゃんはその頭をゆっくりと撫でる。
どうやら、彼女はかなりラノアを気に入っているようだ。
それは、当然だろう。ラノアはとても可愛い。その可愛さに、勝てる訳がないのだ。
「とにかく、今日のことはもう不問にしますわ。あなたも、もう気にしてはいけませんわよ」
「うん、気にしないようにする」
レフィリーナちゃんの言葉に、ラノアはゆっくりと頷いた。
これで、尾を引くこともないだろう。とりあえず、安心である。
「まあ、結果、まとまったから、何も問題はなかったということだな」
「ええ、そういうことにしてもらえるかしら?」
「色々と、迷惑をかけて、すみませんでした……」
あちらが収まったので、私とクラーナはレクリアさんに頭を下げた。
ラノアがあのような行動をしたのは、私達がきちんと説明していなかったからでもある。もう少し、言い聞かせておく必要があっただろう。後、普段からラノアの前でイチャイチャし過ぎたのも問題だったかもしれない。
「気にしなくていいさ。少々驚いたが、あんなことはどうってことないさ。それに、元々、そういう定めだと思っていたのもあるしな……」
「定めですか?」
「ほら、姉貴達の娘、つまりお前達って、何故かわからないけど、犬の獣人を嫁にしているだろう? だから、レフィもそうなんじゃないかと、思っていたのさ」
「え? いや、それは……」
レクリアさんの言葉に、私もクラーナも困惑した。
確かに、私とキーラさんは、犬の獣人を嫁にしている。それは、紛れもない事実だ。
だが、それでレフィリーナちゃんの運命まで決めてしまうのは早計だろう。流石に、まだ何もわからないはずである。
「まあ、まだ子供だから、なんとも言えないけどな? でも、そういうことになったら、娘のことをよろしく頼むぜ?」
「え? それなら、こちらこそよろしくお願いします?」
「はは、どっちみち家族だから、あまり変わらないかもしれないけどな」
レクリアさんは、とても楽しそうに笑っていた。
なんだかんだ言って、今回の出来事を一番楽しんでいたのはこの人である。私としては、とても疲れたのだが。




