第31話 独占欲なのかもしれない
私とクラーナは、レクリアさんとともに、ラノアとレフィリーナちゃんを見守っていた。
ラノアは、レフィリーナちゃんの顔を舐めている。それに対して、レフィリーナちゃんはかなり動揺しているようだ。
「大変そうだな……ああ、あんなに舐めちゃって」
「ラノアは楽しんでいるみたいね……でも、あの子はどうかしら?」
「嫌がってはいないように見えるけど……」
「まあ、あれなら大丈夫だろう」
ラノアは、レフィリーナちゃんの頬をしっかりと舐めている。
その唾液が、彼女の頬から滴っているのが、ここからも見えるくらいだ。
だが、レフィリーナちゃんは、まったく動かない。膝になったラノアの体に手を回し、しっかりと受け入れているのだ。
「ありがとう、レフィ。楽しかったよ」
「あっ……もう終わりですのね」
そこで、ラノアはレフィリーナちゃんを舐めるのをやめた。
歯止めが利かなくなる前に、自制したのだろう。偉い子である。
「あ、ハンカチがあるから、頬を拭いてあげるね?」
「え? 頬を?」
「うん……かなり、濡らしちゃったから」
「別に、構いませんのに」
ラノアは、ハンカチを取り出して、レフィリーナちゃんの頬を拭いてあげた。
そういう優しい所も、ラノアの良い所である。
「ところで、ラノア……あなたは、友達には誰でもこういうことをしますの?」
そこで、レフィリーナちゃんは、そのような質問をした。
その質問は、少し含みがあるものだ。もしかしたら、彼女はラノアに対して、何かを感じているのかもしれない。
「え? あ、その……私、友達、レフィしかいないから」
「あら? そうですのね……」
レフィリーナちゃんの質問に、ラノアは少し恥ずかしそうに答えた。
ラノアには、今まで友達がいなかった。この人間の世界には、獣人を受け入れる人は少ない。そのため、レフィリーナちゃんのような友達ができなかったのである。
「あ、でも、アノンやクラーナにはしているよ」
「そうなのですね……」
「うん、大好きな人は舐めたくなるんだ。それが、犬の獣人の性質というか……そういう感じなんだ」
そこで、ラノアはそのことを言ってしまった。
私やクラーナは、ラノアに舐められている。それは、子供が親に甘えているだけなのだが、レフィリーナちゃんがそう取ってくれるか微妙な所だ。
もし、彼女が感じているのが、独占欲めいたことなら、今の発言はとても嫌かもしれない。だが、それを隠しているよりは、良かったことは確かだろう。




