第16話 朝ご飯でも
私は、クラーナの家で朝を迎えていた。
今は、クラーナと一緒に朝ご飯を食べている。ちなみに、クラーナが作ってくれたものだ。
「クラーナ、今日もありがとうね」
「いいのよ、そんなこと」
クラーナはパンをちぎって、私の口に運んでくれる。
手の痛みは引いたが、用心のために今日はクラーナに甘えることにした。
よって、食事を手伝ってもらっているのだ。
「おいしい?」
「うん、とっても」
パンは、程よく焼けておりとてもおいしい。
表面にはジャムが塗ってあり、それが甘くて私の好みだった。
「あ、ごめんなさい」
「え? どうしたの?」
「頬にジャムがついてしまったわ」
そこで、クラーナの手元が少し狂ったようで、私の頬にジャムがついてしまったらしい。
まあ、それくらいで怒ったりはしないので、些細なことである。
「ちょっと、じっとしていてくれるかしら? とってあげるわ」
「うん、お願い」
そう言ってから、私は気づいた。クラーナが私に顔を近づけてくることに。
そろそろ私も、クラーナの考えがわかってきた。
とってあげるというのは、舐めとるということなのだろう。
「ペロ……」
「うっ……」
私の頬に、何度か経験した生温かくて湿った柔らかいものがあたる。
それが、私の頬を這って、ジャムを舐めとってくれた。
「……甘いわね」
「う、うん……」
クラーナにとっては、なんてことのないことかもしれない。
だけど、私にとってこれはとても恥ずかしいものなのだ。
ただ、獣人としては当たり前の行動であり、それを否定するのも憚られる。
そのため、私は何も言わず、この行為を受け入れるのであった。
「……あ」
そこでクラーナは、思い出したように声をあげる。
何か、あったのだろうか。
「そういえば、昨日の夜に言ってくれたこと、覚えているかしら?」
「え? 夜のこと?」
クラーナがそう言って、私も思い出してくる。
そういえば、昨日の夜にクラーナに顔を舐められていた。
そして、その時に私はある約束をしていたのだ。
「日中なら、顔を舐めてもいいと言ってくれたわね?」
「あ、うん……」
確かに、そんな約束をした覚えはある。
しかし、眠たかったため、適当に言ってしまった面もあった。考えてみれば、とても恥ずかしいことではないだろうか。
ただ、それでも、約束してしまったため、これも受け入れるしかなさそうだ。
「ご飯の後に……いいかしら?」
「……うん」
それに、クラーナのこんなに楽しそうな顔を見ていると、それもいいのではないかと思えてしまう。
こうして、私は食事の後にクラーナに舐められることになったのだ。