第27話 微妙な二人
私達の元に、私の叔母であるレクリアさんとその娘であるレフィリーナちゃんが訪ねて来た。
とりあえず、二人には中に入ってもらっている。立ち話する理由もないので、中で話しているのだ。
「クゥン……」
「なんですの? 先程から、私の顔を見つめて……」
「え? いや、なんでもないよ」
そんな中、ラノアとレフィリーナちゃんはそのようなやり取りをしていた。
これは、同い年の子が気になるラノアに対して、レフィリーナちゃんが警戒しているため、このようなやり取りになっているのだ。
「なんというか……ラノア、レフィリーナちゃんを気に入っているね?」
「そうね……多分、あの子が犬の獣人を気にしていないのがいいと思っているのね」
「え?」
「ほら、あの子は、ラノアを差別していないでしょう? そういう同年代の子に、ラノアは今まで会っていなかったのではないのかしら?」
「なるほど……」
クラーナと小声で話して、私はラノアの心情が理解できた。
レフィリーナちゃんは、ラノアを拒絶しているが、それは犬の獣人だからという理由ではない。それが、ラノアにとって、とても好ましいものなのだろう。
だから、あれ程までに気に入っているのだ。とても、納得できる答えである。
「なるほど、そういう事情があった訳か……」
「え?」
「あら?」
そんな私達の会話に、レクリアさんも入ってきた。
二人が微妙な空気なため、大声で話せる環境ではない。そのため、私達の側に回って来たようだ。
ラノア達は、お互いに夢中になっているため、密かに話している私達のことがあまり気になっていないみたいだ。
「これからが、正念場ということか……レフィにも、友達ができてくれたら、母親の私は嬉しいんだけどな」
「きっと、大丈夫だと思うわ。あの子、根本的には嫌がっていないし、それをラノアも理解しているもの」
「あ、やっぱり、そうだよね……」
クラーナの言葉に、私は同意した。
嫌がっているように見えて、レフィリーナちゃんは実は嫌がっていない。それは、私もそう思っていたことである。
もちろん、ラノアがそれに気づいていることもわかっていた。まったく心が折れないのは、きっとそれがあるからだろう。
「ああいうのは、とてもわかるわ。数年前の自分を見ているみたいだもの」
「確かに、クラーナと少し似ているかもね」
「ええ、本当は寂しいけど、拒絶してしまう。私程深刻ではないとは思うけど、そういう感じね」
レフィリーナちゃんの現状は、出会った時のクラーナと似ていた。
あの時のクラーナも、心の奥では寂しがっていたが、それを表面に出そうとしていなかった。
そうなる事情は、大いに違うと思うが、レフィリーナちゃんも同じような感じである。




