第19話 近しい人
私とクラーナとラノアは、キーラさんとサトラさんとともに、ローレリムさんの元に訪れていた。
訪れたキーラさんの実家で、キーラさんのお母さんとローレリムさんは、私の顔を見て、とても驚いていた。私に対して、何かを感じているようだ。
「えっと……私に、何かあるんでしょうか?」
「……」
私の質問に、ローレリムさんはゆっくりと目を瞑った。
それは、何かを決意しているかのように見える。
数秒の沈黙の後、ローレリムさんはゆっくりと目を開けた。
その顔に、先程まであった驚きはない。しっかりと、冷静な面持ちに戻っている。
「アルレム」
「えっ……」
ローレリムさんの口から出た名前に、私は驚くことになった。
その名前は、私がよく知っている名前だ。それが、ローレリムさんの口から出てくるということの意味がわからない。
ただ、一つだけわかることがある。ローレリムさんが私を見て反応したのは、お母さんのことを知っていたからなのだ。
「……」
「……」
私は、ローレリムさんに視線を合わせた。
よく見てみると、ローレリムさんは私のお母さんに似ている。いや、お母さんだけではない。私にも、ローレリムさんは似ているのだ。
しかし、このような表現をするのは本来正しくないのだろう。ローレリムさんが私がお母さんに似ているのではなく、私やお母さんがローレリムさんに似ている。そう表現する方が正しいはずだ。
「理解したようだね」
「はい……」
私は、ローレリムさんが何者か理解していた。
恐らく、ローレリムさんは私にとってとても近しい人だ。
この人が、私とそのような関係の人とはまったく思っていなかった。これは、とても驚くべきことである。
運命とは、かなり数奇なものだ。私が、クラーナと出会い、レイコさんと出会わなければ、私はここに辿り着くことはなかった。この人と巡り合うこともなかったのである。
「さて、とりあえず、中に入ってもらおうか。あんた達からも、色々と話があるのかもしれないが、私の方かも話さないといけないようだからね……」
「あ、お母さん……」
それだけ言って、ローレリムさんは家の中に入っていった。
とりあえず、中に入るということで良いみたいだ。
「アノン、あの人、まさか……」
「うん。多分、そうなんだと思う」
そこで、クラーナが私に話しかけてきた。
クラーナは、私とローレリムさんのやり取りで、全てを察してくれたようだ。流石は、クラーナだ。私のことをよくわかっている。
「そ、それじゃあ、とりあえず入ってもらっていいかしら……」
キーラさんのお母さんは、困惑しながらも私達を中に招いてくれた。
こうして、私達は家の中に入っていくのだった。




