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第15話 朝起きて

 私は、昨日クラーナと一緒に眠っていた。

 夜中、何かあった気がするが、それはよく覚えていない。


 とりあえず、朝が来たので、隣を見てみる。


「すー」


 隣のクラーナは、まだ眠っているようだ。


「あっ……」


 そこで私は、あることに気づいた。


「手が……」


 私の怪我をした手から、痛みが消えていた。

 クラーナの塗ってくれた薬が、よく効いたようだ。


「うん……」

「あ、クラーナ。起きたみたいだね、おはよう」

「……ええ、おはよう」


 私が治療の効果に喜んでいると、隣のクラーナが目を覚ました。

 クラーナは、寝ぼけ眼を擦りながら、私を見つめる。


「なんだか嬉しそうね……」

「えへへ、わかる?」


 寝起きのクラーナにもわかるくらい、私は喜んでいるようだ。


「手が治ったみたいなんだ」

「……手が? それは……よかったわね」


 私の言葉に、クラーナは笑顔を見せてくれる。

 そして、私の手をとってきた。


「うん? どうしたの?」

「ちょっと、包帯をとってみるわね」


 そう言って、クラーナは私の包帯を解いていく。

 それにより、私の手があらわになる。


「……あーあ」

「……もう少し、様子をみる必要がありそうね……」


 私の手は、多少は治っていたが、傷はまだあった。

 どうやら、痛みが引いただけで、完治している訳ではないようだ。


「いいタイミングだし、薬を塗って、包帯を変えましょうか。ちょっとだけ待っていて」

「あ、うん」


 クラーナは、すぐに薬と包帯を持って来てくれる。


「さあ、薬を塗るわよ」

「うん……あっ!」


 そこで私は、危機感を抱いた。

 クラーナは、前の治療で私の傷を舐めていたが、今回は大丈夫だろうか。


「クラーナ、今回は舐めたりしないの?」

「……ちょっと待ってくれるかしら?」


 クラーナは言いながら、私の手に鼻を近づけてきた。


「……これは少しまずいわね」

「まずい?」

「ええ、少し薬の匂いが残っているわ。口にするのは、少し危険ね」


 どうやら、匂いによって舐めていいかを確かめていたようだ。


「す、すごいね。そんなことまでわかるんだ……」

「ええ、鼻が効くというのは便利よ。匂いによって、危険かどうかも判断できるし……」


 確かに、便利な鼻である。

 まあ、色々と問題もあった気はするが、それは言わないでおこう。


 というか、薬の成分が残っていなかったら舐めていたのかな。


「それじゃあ、薬を塗るわね」

「うん、お願い」


 クラーナは、手際よく薬を塗って、包帯を巻いてくれる。

 痛みはなく、この調子なら明日くらいには回復するかもしれない。


「よし、これでいいわ」

「ありがとう、クラーナ」


 私とクラーナの一日は、そんな風に始まるのだった。

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