第16話 その名を知る者
私とクラーナとラノアは、一度町に戻って来ていた。
ガランのアジトから、待ち人の元に向かおうと思っていたのだが、少し事情があって帰ってくることにしたのである。
帰って来ることのメリットは、色々とあった。一つは、レイコさんに確認することができることだ。名前を聞いて、思い出す可能性もない訳ではないだろう。
それで思い出せれば、確証を持ってその人の元に行ける。その方が、色々と都合もいいはずだろう。
「それで、どうですか?」
「……」
という訳で、私達は早速、レイコさんに聞いてみていた。
ローレリムさんという名前を言った後、レイコさんは黙っていた。頭に手を当てながら、何かを考えているようだ。
「確かに、そのような名前だったと思います。あまり確証はありませんが、そうだったと思います……」
「そうですか……」
レイコさんは、ゆっくりと私達にそう言ってきた。
正確には思い出せてはいないようだが、覚えはあるようだ。
「とりあえず、私達はその人の元に行ってみようと思っています。話しを聞いてみれば、事実ははっきりしますから」
「はい、よろしくお願いします」
レイコさんからの言葉で、改めて可能性が高いことはわかった。
やはり、ローレリムさんには期待してもよさそうである。
こうして、私達はレイコさんに話を通したのだった。
◇◇◇
私とクラーナとラノアは、家である人達と会っていた。
ローレリムさんと会う前に、その人達に話を通しておいた方がいいと判断したのだ。
「まさか、アノンからその名前を聞くとは思っていませんでしたわ」
「あ、はい。私も、その名前を聞いた時は、とても驚きました」
「世の中って、案外狭いんだね?」
「まあ、たまたまそうなっただけよ」
私達の家に来ていたのは、キーラさんとサトラさんの二人である。
ローレリムさんの名前を聞いた時、私はキーラさんに話を通していた方がいいと判断した。
なぜなら、ローレリムさんはキーラさんのお祖母さんの名前であるからだ。
「お祖母様に会いたいということで、構いませんのね?」
「そうなんです。キーラさんから紹介してもらいたいかと思いまして……」
「そういうことなら、問題ありませんわ。私に任せてください」
私の言葉に、キーラさんは頷いてくれた。
これで、ローレリムさんとスムーズに会うことができそうである。
「あなた達は、同じ人間と獣人の家族……協力することは、惜しみませんわ」
「ありがとうございます」
キーラさんは、私とクラーナにはとてもよくしてくれていた。
サトラさんと再会するまでは、リュウカさんのパーティメンバーというだけで、それ程交流がなかったが、最近はリュウカさんより会っているくらいだ。
それは、同じように獣人を愛しているからなのだろう。私も少なからず、キーラさんには共感を覚えている。そういう面があるから、私達は親しくしているのだ。
こうして、私達はキーラさんに協力してもらえることになったのである。




