第14話 変わり始めた場所
私は、クラーナとラノアとともに、ガランのアジトに来ていた。
とりあえず、レイコさんの待ち人のことは伝えられた。
それで目的は、とりあえず終わったのだが、せっかく来たので、私達はアジトの様子を見ている。
「ここも、結構変わったね……」
「ええ、そうね……」
一応、最高責任者であることもあるが、単純にここの様子は気になっていた。
なぜなら、ここには私やクラーナに少し関係がある人達がいるからだ。
「獣人達が、普通に働けているのはすごいことだわ」
「うん……」
ここでは、獣人達が普通に働いている。
色々と事情があって、そういう風になったのだ。
「これも、お義父さんのおかげね」
「ガランのおかげというよりは、クラーナのおかげというか、クラーナが私と結ばれたおかげというか……」
「でも、お義父さんが張り切ったから、こうなったんじゃない」
私とクラーナが結ばれたことで、ガランは獣人達を自分の仕事に引き込むようになった。
なんでも、娘の嫁が獣人なんだから、そういう人達も積極的に採用していこうという気になったようだ。
という訳で、ここでは数多くの獣人達が働いている。獣人達は、差別されて働けないことも多いため、ここで働きたいという獣人は年々増えているらしい。
「張り切ったか……まあ、張り切ったんだろうね」
「ふふ……」
クラーナの存在もあって、ここにいる人間達は獣人に対する差別意識が消えていた。
そもそも、ここにいる人達は、色々と壮絶な過去の持ち主が多いので、そういう意識が元々薄かったこともあるかもしれない。
そういうこともあって、ここでは人間も獣人もほぼ関係なくなっている。そういう風にわかり合えることは、とてもいいことだろう。
「お義父さんには、感謝しないといけないわね」
「感謝……感謝するべきなのかな?」
「ええ、少なくとも、私は感謝しているわ」
クラーナは、ガランに対して感謝しているようだ。
確かに、こうなったのはガランのおかげでもあるので、感謝するべきなのかもしれない。
「アノン! クラーナ! 大変だよ!」
「え?」
「あら?」
そこで、アジトを探検していたはずのラノアが私達の元に来た。
その手には、何か色々と食べ物を持っている。大変という言葉も気になるが、まずはそちらの方に目が行ってしまう。
「ラノア? それ、どうしたの?」
「え? これは、皆がくれたの」
「皆が……」
「まあ、期待の三代目だものね」
ラノアが色々と持っているのは、アジトの皆が何かをあげたかららしい。
ラノアは、このアジトでは非常に可愛がられている。暫定三代目ということもあって、皆本当に優しくしているようなのだ。
そもそも、ラノアはそういう面を差し引いても、可愛い子である。そのため、皆ついつい物を上げたくなっても仕方ないのかもしれない。
「それより、どうかしたの? 何か慌てているみたいだけど」
「あ! あのね、レイコさんの探し人かもしれない人を見た人がいたんだ!」
「え?」
「あら……」
ラノアの言葉に、私とクラーナは驚いた。
どうやら、レイコさんの待ち人の情報があったようだ。
まさか、既にそういう情報があるとは思っていなかった。だが、これは嬉しい知らせである。
「とにかく、その人の所に行って、話を聞いてみよう?」
「そ、そうだね」
「そうしましょう」
興奮しているラノアの言葉に、私とクラーナはゆっくりと頷く。
こうして、私達は話を聞きに向かうのだった。




