表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティを追放されたので、犬耳獣人少女と生きていく。  作者: 木山楽斗
afterafter

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

143/280

第11話 幽霊の事情

 私は、クラーナとラノアとともに幽霊のレイコさんと話していた。

 レイコさんは、ラノアにも存在に気づかれたため、私達の前に出てくることにしたようだ。


「アノンさんには、怖い思いをさせてしまうと思いますが、私にはここに留まらなければならない理由があるんです」

「理由ですか?」


 私に対して、レイコさんはそのようなことを言ってきた。

 レイコさんは、何か理由があってここに留まっているようだ。

 ただ、考えてみれば、それも当然のことである。何も理由がないのなら、成仏しているはずだろう。


「一体、どのような理由なんですか?」

「実は、人を待っているんです」

「人を待っている?」


 私が聞いてみると、レイコさんはそのように言ってきた。

 どうやら、レイコさんは人を待っているようだ。


「一体、誰を待っているんですか?」

「その……私の大切な人です。家族のような人でした」

「家族……」


 レイコさんが待っているのは、家族のような人であるらしい。

 その人を待つために、レイコさんは現世に留まっているのだ。その気持ちは、かなり強いのだろう。


「その人は、どのような人なんですか?」

「えっと……中々いい家の人だったと思います。ただ、私と会う時はこの家だったので、詳しいことはわかりません」


 私の質問に、レイコさんはそのように答えてくれた。

 レイコさんが待っている人は、いい家の人であるようだ。

 この家は、その人がレイコさんと会うためのものであるらしい。

 獣人に対する差別は強い。そのため、この人里離れた家でレイコさんを住まわせ、会っていたということだろうか。


「その人は、ずっとここに来ていないんですか?」

「はい。その人は、私がここにいることなんて理解していませんから……」

「あ、なるほど……」


 その人がここに来ないのは、レイコさんがいるとわかっていないからのようだ。

 わかっているなら、きっとすぐにここに来たのだろう。レイコさんの口振りからして、そのように感じる。

 だが、その人はレイコさんがここにいるなど思いもしていないだろう。むしろ、レイコさんのことを思い出して辛いため、ここに来ることを避けているのかもしれない。


「……それなら、私達でその人を連れてきましょうか?」

「え?」

「来ないなら、私達がその人に来てくださいと言えばいいだけだと思うんです」


 そこで、私はそのような提案をした。

 レイコさんが待っている人が来ないなら、私達が連れて来ればいいのだ。


「その気持ちは、嬉しいです。でも、それは難しいことなんです……」

「難しいこと? どうしてですか?」


 しかし、私の言葉にレイコさんは少し渋い顔をした。

 そこまで難しいことではないと思うのだが、何か事情があるのだろうか。


「実は、私は最も大切なことを忘れているんです。私は、その人の名前を憶えていないんです」

「え?」

「幽霊になって、その記憶が抜け落ちてしまったんです。こちらに留まるための代償とでもいうのでしょうか……」


 レイコさんの言葉に、私は驚いた。

 どうやら、レイコさんは待ち人の名前を覚えていないらしい。

 それなら、レイコさんの言葉も理解できる。名前もわからない人を探すのは、とても難しいことだ。


「だから、探すのは無理なんです。アノンさんのお気持ちだけ頂きます」

「レイコさん……」


 私に対して、レイコさんはそのように言ってきた。

 だが、それだけで諦める必要などないだろう。


「……レイコさん、少し私に任せてくれませんか?」

「え?」

「私に、少しだけいい考えがあるんです」


 私は、名前がわからなくても探せる方法を知っていた。

 そのため、まだ諦めるには早いのである。


「いい考え?」

「ええ、とある方法を使えば、レイコさんが探している人を見つけることができるかもしれないんです」

「そ、そうなんですか……?」

「そうなんです」


 私の言葉に、レイコさんは少し驚いていた。

 だが、ゆっくりとその表情は変わる。少し期待するような表情になったのだ。


「そ、それなら、お願いします。私も、あの人に会いたいですから」

「ええ、任せてください」


 こうして、私はレイコさんの待ち人を探すことになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ