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第14話 夜中に感じたもの

 私は、クラーナと一緒にベッドで眠りについていた。

 しかし、夜中に奇妙な感覚がして、目が覚める。


「う……」


 何か、頬に生温かく湿ったものが這っている気がするのだ。

 目を瞑ったまま、私はあることを思い出していた。


 それは、この家が事故物件であったこと。

 つまり、私はこれを心霊現象であると予想したのだ。


「クラーナ……」


 私は、小声でクラーナの名前を呼び、その身を引き寄せる。

 正直、とても怖いので、クラーナを抱きしめ、気を紛らわせたかった。

 ちなみに、目なんて開けたいとすら、思わない。


「あっ……」

「えっ……?」


 すると、クラーナが驚いたように声をあげた。

 それと同時に、生温かいものが停止したのがわかる。


「……起こしちゃったかしら」

「え? クラーナ?」


 顔のすぐ近くに、クラーナの顔があった。


 そこで、私は生温かいもののことを思い出す。

 それは、治療の時にも受けた感触である。


「もしかして……私の顔を?」

「……ごめんなさい。舐めていました……」


 どうやら、クラーナは私の顔を舐めていたようだ。


「ええ……どうして、そんなことを……」

「し、仕方ないじゃない。舐めたくなったんだから!」


 それは仕方ないのだろうか。

 まあ、これも獣人の本能的な部分もあるのかもしれない。


 というか、これって間接キスどうのこうのよりも、余程恥ずかしいことなのではないだろうか。


「別に……舐められるのが嫌って訳じゃないけど、恥ずかしいし、それに寝ている時はやめてね」

「……わかったわ」


 クラーナは名残惜しそうな顔で、そう言った。

 確かにこれは、獣人の性質的な問題なので、クラーナの言う通り仕方ない部分もある。


「時々日中になら、許してあげるから……それで我慢してくれないかな?」

「……ええ、ありがとう、アノン」


 私の一言で、クラーナの表情が明るくなった。

 とりあえず、これでいいのだろう。


「じゃあ、寝直すとしようか……」

「本当に、起こしてしまってごめんなさい……」

「いいよ、すぐ眠れそうだし……」

「お休みなさい、アノン……」

「うん、お休み、クラーナ……」


 お互いに、名前を呼んで再び眠りにつく。

 とにかく、怪奇現象の類じゃなくてよかったと思おう。


 この時の私は、その程度のことしか頭になかった。

 正直、眠たかったため、クラーナの行為をそんなに気にしていなかったのだ。


 よく考えてみれば、すごいことをされており、すごい約束をしている。

 だけど、そのことに私が気づくのは、今から少し後のことだった。

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