表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティを追放されたので、犬耳獣人少女と生きていく。  作者: 木山楽斗
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/280

第107話 あの人との再会

 私とクラーナは、私の父親であるガランの部下に連れられて、ある場所へと来ていた。

 そこは、大悪人ガランの隠れ家である。ここに、病魔に侵されたガランがいるらしい。


「それで、あの人はどこにいるの?」

「この奥です」


 案内してくれた人は、奥の方にある扉を指さした。

 そこに、あの人がいるようだ。


「それにしても、すごいわね……」

「うん?」

「周りの人達のことよ」


 クラーナは、周りを見渡しながら、そんなことを呟いた。

 ここには、ガランの部下がたくさんいる。その部下達は、全員私に向かって頭を下げているのだ。

 確かに、その光景はすごいだろう。ただ、全然嬉しいとも思わない。


「皆、あの人の娘だから、そうしているだけだよ」

「あの人ね……」


 そんなことを話している内に、扉が開け放たれた。

 その奥の方で、ベッドに一人の男が寝転がっている。


「来てくれたか……」


 寝ている男は、こちらを向いて、そう呟いた。

 その顔は、少しやつれて老けてはいるが、見覚えがある顔だ。


「ガラン……」

「……アノン」


 男の名は、ガラン。

 私の父親に当たる人物だ。


 私とクラーナは、ゆっくりとその近くまで歩いて行く。

 すると、後ろの方で扉が閉まる音が聞こえた。部屋には、ガランしかいない。よって、三人だけになったのだ。


「随分と、いい姿になったね」

「はっ! いい姿ときたか……」


 私の言葉に、ガランは笑う。

 この男が父親であるという事実が、本当に嫌で仕方ない。


「そっちは、例の獣人か……」

「……はい。クラーナといいます」

「そうか。アノンが、世話になっているみたいだな」

「いえ、私の方こそ、アノンにお世話になっています」


 そこでガランは、クラーナに話を振った。

 妙なことを言わないかと警戒したが、意外にも普通のことしか言わなかった。だが、警戒は解かない。この男は、何をしてくるかわからないのだ。


 クラーナは、何故か丁寧な物腰である。一応は、私の父親なので、気を遣っているのかもしれない。


「病気なんだってね?」

「ああ、もう長くないらしい」

「そうなんだ……」


 私の質問に、ガランは短く答えた。

 その顔には、諦めのような感情が見える。欲望のままに生きてきた割には、なんとも潔いことだ。


「あなたが死んだら、皆喜ぶだろうね」

「そうだろうな。この俺のような極悪人など、そういないだろうからな……」


 私の皮肉にも、ガランは淡々と答えてくる。

 本当に病気で、もう助からないのだろう。


「最も、一応今は足を洗っているんだかな……」

「それでも、今までしたことは変わらない」

「……まあ、そうだな」


 ガランは、一応今は足を洗っている。その話は、聞いたことがあることだ。

 ここにいる部下達も、今は犯罪に手を染めていないらしい。そのこと自体は、いいことだとは思う。


 ただ、それでも今までしてきたことは変わらない。

 ガランという男は、極悪人に変わりないのである。


「だが、誰も俺を裁けなかった。結果的に、俺の一団は大きくなり過ぎたからな」

「……」


 ガランの一味は、その規模の大きさから、誰も手が出せなくなっていた。

 しかも、今は足を洗っている。そのことから、誰も裁きをくだそうとしないのだ。結果的に、無罪となっているという歪な状況なのである。


 こうして、私は自身の父親ガランと会うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ