疑問と情報
田村が何やら気がついたようだ。
アルメリア王国が騒がしくなる中、田村が今回の件で疑問があると言い出した。その内容に俺は驚くと同時に、自身の注意力の無さに呆れたんだ。
「なぁ、速水。ちょっと疑問があるんやけどな」
「ん? 何の事?」
「俺らがこの世界に来てもう1年と数か月や。その間に分かった事ってなんや?」
「そうだなぁ。この世界に来た転移者がいる事、でその周期が50年だという事だな」
「おいおい、忘れたらあかんのは、サヨコさんの事やで。サヨコさんは夢を見てたって言うとったやんか」
「日記にはそう書かれてたな。御主人の亡くなる姿も見えたってな」
「だ・か・ら! 何で気がつかんのや! 俺らはそんな夢見てへんやろ?」
「ああ。うちの人間で夢を見たなんて話は聞かないな」
「速水......お前アナマリアさんに何聞いたんや?」
「え? あ......そ、そういえば夢に女神様が出て来たんだった!」
「やっとわかったか? まぁ俺も最近気がついたんやけどなぁ」
俺は完全に見落としていた。謎を解明する上で夢の話は重要だ。忙しさにかまけて肝心な情報が頭に来なかった。
「それはジュ-ンさんとアナマリアさんに聞かなあかんな。それと帝国の転移者やけどな」
「後でジュ-ンさんともう一度話すよ。で? 帝国の転移者がどうしたって?」
「その転移者、案外ど素人ちゃうか? 備えは必要やろうけど、俺はそないにびびってないねん」
「でも爆弾だぞ? ある程度知識無いと無理だろ?」
「あんなもん、今時ネットでも成分出てくんねんで? 初めの爆発かて偶然の可能性もあるわ」
「偶然? 爆弾ってそんな簡単にできる物か?」
「俺の見立てでは、爆弾っていうより火薬を集めたんちゃうか? 袋に火薬詰めて土の中に埋めたもんが、騎馬隊の振動でドカァ-ンってな」
「そんな事あるのか? 俺はそっち方面知識無いから」
「ちょっとちゃうけど、不発弾みたいなもんや。ダイナマイトかて振動で爆発するんやで?」
田村の知識は何処からくるんだろうか? 確かにそんな話はニュースで聞いたことあるな。
「なんでそんなに詳しいんだ? 普通の人間はそう言う事調べないだろ?」
「映画でもそう言う描写は出てくるで。それに花火かて火薬使うんやさかい」
「その話、専務達にも聞いてもらった方が良くないか?」
「いや、その程度は考えてはると思う。最悪を想定して動くんも大事やから、情報待った方がええやろ」
「それもそうか。俺も何か情報ないか組合に行って来るよ」
田村の話に目からうろこだった。俺よりもよっぽど冷静に考えてたんだな。とにかくジュ-ンさんに聞いてみようと心に決め、管理組合へ急いだ。
◇◇◇
流通管理組合本部~
「お疲れ様。ここも忙しいみたいですね」
「速水さん! 忙しいなんてもんじゃないですよ! 工事の資材やらなんやら発注が凄いです!」
「あれ? 工事の資材もここで受けてるの?」
「そうなんですよ。資材と言っても職人さん用の細かいものなんですが」
俺は発注リストを確認した。ああ、ハンマ-とか安全靴? そんなものまで作ってたっけ?
「金物はここの商会からの分です。安全靴は『J-Style』の方で作ってるみたいですよ?」
「へぇ、知らない間にそんなものまで。そう言えば靴は作るって言ってたような」
「速水さんも飛び回ってますからね。信頼雑貨の方はご存知だと思いますよ」
「一度、取扱商品も調べないとな。ジュ-ンさん、落ち着いたら時間取れるかな?」
「はい、大丈夫ですよ。あと3件発注済ませたら空きますから」
しばらく管理組合の仕事を手伝い、ジュ-ンさんが落ち着くのを待った。
◇◇◇
ちょうど昼間だったので『ごはん屋』に場所を移し、食事を取りながら話を聞く事にした。この店も常連客が多いから、遅くなると座る席がなくなるんだよね。今日は時間が早かったので、無事に席は取れた。
「お待たせしました。どうしたんですか?」
「サヨコさんの事で分かれば教えて欲しいんだけど、サヨコさんは亡くなるまで夢を見ていたのかな」
「あれ? お伝えしてませんでしたか? 曾祖母はある年齢から夢は見てなかったそうですよ」
「それは聞いてないです! 俺はてっきり最後まで見ていたのかと」
「詳しくは知らないんですが、母はそう言っていました」
ここに来て重要な情報だよ。ジュ-ンさんも詳しくは知らないらしい。日記をもう一度調べて、分からなければルコモンドに行かないとダメだな。
◇◇◇
同じ頃、王城~
「そうか。各国とも補強工事は進んでいるのだな。門扉の輸送はどうするのだ?」
「宰相殿、何でも部品をわけて送るそうです。現地で組み立てるのだとか」
「うむ。想像が出来ぬな。彼らの発想は、我々ではまだ理解できぬか。それで? 帝国について情報があったと聞いたが?」
「密偵の情報が確かならば、転移者ユキナリ・タオカは幽閉されているとの事です」
「なんと! その情報が誠なら真意がわからぬな。何故、その様な扱いを受けているのか。今は確実な情報が欲しい、心して調べよ!」
「はっ! かしこまりました!」
驚くべきことに転移者が幽閉されている様だ。一体、帝国で何が起きているのか? この情報は国王に報告され関係各位には、暫く伏せる事になった。情報の攪乱が目的の場合、防備に隙が出る可能性があるからだ。果たして帝国の真意とは―――
新たな発見と転移者の情報。抜けているピ-スが集まれば、転移の謎が解けるのだろうか?
次話は速水再びルコモンドへ!




