繋がる国々と広がる技術
各国の動きも慌ただしくなって来た。
国との会議から数週間経った。未だハ-メリック帝国の動きは無いが、その間に同盟国との話し合いも行われていた。蓮見さんと来栖さんは、同盟国との会議に出席し対応策を説明している。
「ご説明頂いた補強については是非、我が国でも行いたい! だが技術者はどうすれば?」
「それについてはアルメリア王国から派遣いたします」
スレイブ王国の大使を含め各国の見解は一致。補強工事には反対の国は無かった。問題は工事を指揮する人間と職人なのだが。
「我が国ではここに居る信頼雑貨の方々より、職人の育成をして頂いてます」
「それは羨ましいですね。噂によればこの国の発展も目覚ましいと聞いていますよ」
「信頼雑貨といたしましては、製品は売りますが技術は広めるものと考えていますので」
この会議でアルメリア王国から工事の指揮を行う人間、そして職人を各国に派遣する事が決まった。そしてそれに付随して、職業訓練校に他国の職人も入学する事が認められたんだ。この事により多くの職人が育成され、この世界が新たに発展して行くのだが、それはもう少し後のお話で語られる事になる。
◇◇◇
その頃、開校した職業訓練校では―――
「では不純物を取り除いた状態で乾燥に入ります」
これは紙の製造の授業だ。洋半紙の大量製造に向けて、多くの職人育成と工場を建設中なのだが。
「この不純物を取り除く過程を疎かにすれば、製品の質は落ちてしまいます。各人慌てずに作業する事を忘れないでください」
「わかりました!」 「この花からは赤い色が出来るのね」 「これ良いにおい♪」
紙の製造や花から色素を抽出する授業は、男性よりも女性に人気があった。繊細な作業は女性向きなのかも知れない。一方で金型の作製や溶接などの技術を教える授業はと言うと......。
「この型を作る作業は、同じ部品を作るうえで一番肝心なんだ。ここを間違えると使えないからな!」
「わかりました!!」 「鉄ってこんなドロドロになるんだな」 「おっとここ曲がっちまった!」
授業を見学していた沢田は、草薙に尋ねた。
「なんだか授業によって色分けされてるんだな」
「そうですねぇ。紙とかの授業は女性用の製品にも使われるんですよ」
「なるほどな。それで女性が多いんだな」
「ええ。ですが皆が楽しそうに授業を受けてますから」
ここで授業を受けている者の表情は輝いている。将来、その技術を活かし様々な製品を作り出してくれる事だろう。
◇◇◇
こちらは新設された『ファリス国民学校』。ファリス教の司祭が授業を行っているのだが、何かおかしい?
「だ~か~ら! この字だって!」
「え、えっと、これで良いんでしょうか?」
「ここはこう書くんだよ? プンプン」
「ちょっとマリア! 授業の邪魔したらダメじゃない!」
「だって静香! ウイリィ-の授業つまらないんだもん!」
「つまらないって......真面目に授業してるじゃない! ほら、邪魔になるから!」
俺と中村さんは授業を見学に来ていたんだけど、ウイリアム神父の授業にマリアさんは納得いかないらしい。とても分かりやすく丁寧な授業なんだけどね。
「えっと、それでは続けますね。次にこの字なんですが......」
ウイリアム神父も苦笑いで授業を再開する。
「で? 何がつまらないの?」
「う~ん、だってみんな笑って無いよ? シ-ンとしてるもん!」
「は? 授業なんだから当たり前じゃないの」
「ええ⁈ だって私の授業の時、みんな笑ってたよ?」
どうやら盛大な勘違いをしている様だ。マリアさんの授業ってすぐ脱線するし、可愛らしくて笑ってたんだけどね。中村さんは頭を抱えていたよ。
「それは......あ、後で話しましょう。とにかく静かにね」
「わっかりました-! じゃあさ、お店行こうよ♪」
マリアさんは中村さんを引っ張って『J-Style』へ向かうようだ。新作の洋服も出ているらしく、街の女性の服装もかなり変わって来ていた。まだ繊維の関係で服の生地は麻が多いのだが、隣国と関係が深められれば綿の輸入も出来るようになる。同盟国との繋がりが深まれば、もっと色々な品物も流通していくだろう。
俺は中村さん達と別れ、流通管理組合へ向かった。
◇◇◇
流通管理組合本部~
「お疲れさま。ジュ-ンさん何か問題ない?」
「速水さん、お疲れ様です。問題と言えば、ここで雇って欲しいと言う人がかなり増えてます」
「学校で文字を覚えた人も多いからね。組合の行商人に繋いでも良いんじゃない?」
「それもやってるんですが、どうも速水さんがいるんで本部の人気が高いんですよ」
「あはは。例の事で勘違いされてるんだよなぁ」
「広告塔ですもの。仕事が増えて大変ですね」
「何? ちょっと棘があるんだけど? まぁ確かにやる事が増えたから忙しいけどね」
「うふふ。冗談ですよ。私は感謝してますよ。実家にも早く帰れるようになりましたしね」
レールが繋がった事で、この国の移動は飛躍的に便利になって来ていた。トロッコでの人の移動も、段々乗せられる人数が増えてるんだ。蒸気機関が開発されれば、1日で国中を移動する事も可能になるかも知れないな。多くの人々が学べ新たな知識を得る事で、この国は発展を続けていくだろう。そして多くの国と繋がれば、技術も広がって行く事になる。
多くの繋がりが生まれて来た。これにより発展は加速するだろう。
次話は補強工事と王都の変化。




