動くアナマリアと謎の人物 前編
宰相との話はいったん中断し教会へ向かう速水。
宰相とは一度別れ、教会本部へ向かった。教会本部に着くと俺の姿を見たファリス教徒が集まって来る。
「これは『神の御使い』殿ではございませんか!」
「こんにちは。今日はアナマリア様は居られますでしょうか?」
「はい! すぐにご連絡いたします」
この扱いも馴れて来たんだが、俺は普通の人間なんだけどなぁ。そんな事を思いながら教徒の様子を眺めていたら、目の前にアナマリア様が居た。
「ア、アナマリア様! お久しぶりです!」
「どうかいたしましたか? 何か考え事をされていたようですが」
う、うん。いきなり目の前に美女が居たらビックリするよね?
「い、いえ。何でもありません! 今日はご相談がございまして」
「うふふ。おかしな速水様ですね。相談ですか? ではこちらへ」
アナマリア様に案内され一緒に部屋へ入った。いつもの部屋だ。そこで今回来た理由と、お願いしたい内容を伝えたんだが。
「そうですか。スラム地区がそんな事に」
「ええ。私も初めて行ったんですが、あまりにひどいので」
「私の育った街も裕福ではありませんでしたが、皆精一杯生きておりました」
そうだった、アナマリア様も孤児だったんだよな。目の前の聖女にそんなイメ-ジは無いが。
「わかりました。私にできる事は協力致します。それで何をすれば?」
「ええ。それでは......」
◇◇◇
話の後、一旦ビリ-達のいる教会へ向かった。勿論、アナマリア様も一緒だ。
「こ、これはアナマリア様! どうなされましたか!」
「ジョイ司祭、『神の御使い』様のお願いを聞いて差し上げたようね。それでその女性はどちらに?」
「す、すぐに案内いたします!」
ファリス教徒のアナマリア様に対する絶対服従感は何なんだ? チラリと横を見るとアナマリア様は俺を見て微笑んでいた。あ-これはあれだ、私やりました! って感じだろうか?
「う、うほん。流石はアナマリア様ですね」
「うふふ。良いですよ、気を使わなくても」
うーん。顔に出ていたかな? そんなやり取りをしながら神父に着いて行き、リザさんの元へ。リザさんのベットの周りにはビリ-と兄弟たちが集まっていたよ。良かった、逃げ出してないな。
「こちらでございます! アナマリア様」
「ありがとう。少し席を外してもらえるかしら」
「わかりました。何かあればお声かけ下さい」
ジョイ神父は一度部屋から出て行った。それを見届けたアナマリア様は、リザさんが眠るベットへ近寄る。生意気なビリ-もアナマリア様は知っているようで、固まっているよ。
「ごめんなさいね。ちょっとお母様の様子が見たいの。良いかしら?」
「は、はい!」 「ねぇねぇなんでアナマリア様がいるの?」
「ちょっとミリヤ! ダメだって!」 「アナマリア様きれいねぇ♪」
「うふふ。ありがとうね」
子供は好きなのかな? ちょっと意外だった。俺はアナマリア様と一緒にリザさんを見たが、少し顔色も良くなったように見える。見つけた時は真っ青な顔をしていたんだが、落ち着いたようだ。
「あなたたちの事知らなくてごめんなさい。早く良くなってくださいね」
アナマリア様は、眠っているリザの手を取りそう言った。他の教徒が見たら発狂するだろう。お世辞にも奇麗とは言えないこの家族。顔は汚れ服もボロボロなんだ。それを気にする様子もなく、手を握る姿はまさに聖女だった。
「何とか大丈夫すですね。後は何日か静養すれば体力も回復できるはずです」
「そうですか。では子供たち含めて少し奇麗になって貰いましょうか」
アナマリア様は神父とシスタ-を呼び、子供達は神父に連れられ身体を洗いに行った。リザさんは様子を見ながらシスタ-が身体を拭いて着替えてもらう事になった。
「この家族は教会で保護いたします。くれぐれも頼みますね」
「かしこまりました。アナマリア様」
この後、アナマリア様はそのままスラムに行きたいと言ったのだが、流石に護衛も無く行くわけにはいかない。そこで教徒の方に王城へ連絡に走って貰った。それから30分程経った頃、慌てた様子の宰相と大勢の衛兵がやって来た。
「お、お待たせいたしました! 本当に行かれるのですか?」
「ええ。直ぐに参りましょう」
宰相は俺の顔を見て、何やら考えている。きっとこんなに早く話が進むとは思っていなかったんだろう。俺だってそうなんだよ? アナマリア様の行動力にびっくりだよ!
◇◇◇
そのまま俺達を包む様に衛兵が守りながら、再びスラムへやって来た。そしてスラムの住民にアナマリア様が来たことを伝える。
「驚かせてすまない! 今日はこちらにアナマリア様が来られた。これからする話を聞いてくれ!」
宰相は普段からは想像できない優しい声で、周囲に声を掛けた。その言葉に周りのスラムの住人もざわつき出す。
「皆さん、私は第15代『聖女アナマリア』です。突然の訪問ごめんなさいね。代表の方は居られませんか?」
アナマリア様の問いかけに1人の年配男性が出て来た。そのままその場でひざを折る。
「アナマリア様。こんな所に足をお運び頂き、光栄です」
その彼の振る舞いに宰相を含め、衛兵たちも驚いた。まさかそんな作法を行う者が居るとは思わなかったからだ。このスラムの代表者はいったい何者なのか? そしてアナマリアの話にどの様な反応を見せるのだろうか?
アナマリアの行動力に驚いた。スラムで出会った家族は無事に保護されるのだが、速水はまだ宰相に伝えていない。まぁ大丈夫だろう......。
スラム街の代表者と思われる男は何者か? 後編で明らかになります。




