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宰相の相談 前編

王都で宰相から相談を受ける速水。果たしてその内容は?

 広報部門の部門長としてアルメリア王国を廻っている速水は、スチュワ-ト宰相から相談を持ち掛けられていた。


「速水君、忙しいところすまないな」


「スチュワ-ト宰相殿、大丈夫ですよ。何か相談事とお聞きしましたが?」


「速水君、ブラウンで良い。よそよそしいではないか」


「そ、そうですか? ではブラウン様、何用ですか?」


「まぁ、良いか。実はな相談と言うのは......」


 宰相からの相談内容は、王都の衛生環境の事だった。グランベルクの情報を聞き、王都でも取り入れたいとの要請だったのだ。しかしそれには問題があった。


「手洗いとうがい。先ずこれを習慣化させるには、設備も必要ですよ。現状では難しいです」


「うむ。それについては君の商会とも連携して行いたいのだ」


「そうですねぇ。王都は優先してやりたいのですが、そこはご相談です。それとは別に問題もあります」


「別の問題とは何だね? 君の意見なら聞いてみたい」


「衛生環境の改善については、順次行えばよいでしょう。しかしスラム街はどうします?」


「スラムはなるべくしてなったのだよ。あそこはどうにもならん」


「何故ですか? 国民でしょ? 国が放置するのですか?」


「そうではない。窃盗や殺人などの犯罪も彼らが原因だ。犯罪人に手を差し伸べるなど」


「やはりそう言う考えですか。私も殺人などを平気で行う人は許せません。ですがその環境でしか生きれない人も、一緒に考えるのは違うと思いますよ」


「うーむ。そうは言ってもな、スラムの歴史も古いのだよ。国としても放置するしか......」


 そこで俺は自身の考えを伝えてみた。全てを救うなんておこがましい事は言えないが。


「本当に衛生環境を整えたいなら、改革は必要ですよ。犯罪人は取り締まる。でも低年齢の犯罪は理由を聞いてみたい」


「そうか。なら一度衛兵の詰所を案内させよう。そこに拘留された子供もいる」


 綺麗ごとばかり言って出来ない事は言いたくない。でも救える者も放置なんてできないんだよ。




◇◇◇



 王城の兵士に案内され、王都の詰所に向かった。宰相を伴っていたので驚かされたが、俺としては助かったよ。



「ここが窃盗などを犯した者を収容している牢になります」


 案内されたのは、地下にある収容場所だった。匂いもきついしホコリがひどい状態だ。トイレも無いので仕方ないのかも知れないが、こう言った場所も改善されるべきだろうな。俺と宰相は子供が入っている牢の前に立った。


「ちょっと君。少し話を聞かせてくれないかな?」


「何だよ! もう処刑か? 早く殺せよ!」


「一度落ち着いて。僕はこの国の人間では無いよ。君と話がしたいんだ」


「はぁ? 話ってなんだよ? そんな事より食い物くれよ?」


「わかった。君がちゃんと話してくれたら、食事もお願いしよう。それなら良いかい?」


「絶対だぞ? あんちゃん嘘つくなよな!」


 最初は噛みついてきた少年は、根気よく話す事で折れてくれた。彼の名前はビリ-。スラム生まれで兄弟は3人。母親は病に伏せっていて、生きる為、兄弟の為に露店の商品を盗んだそうだ。


「ありがとうビリ-。君の話は分かった。じゃあさ、君の家に案内してくれないか?」


「なんでだよ! 母ちゃんは何もしてないぞ! それに俺の弟や妹に手を出すな!」


「あはは。大丈夫だ、そんな事しないよ。俺が約束する」


 俺はそう言って頼んであったパンと水をビリ-に渡した。そして宰相に言う。


「宰相、勝手を言って申し訳ありませんが、この子を出す許可を。そしてスラムへ向かうのに兵士の方をお借りできませんか?」


「君が何をするか分からんが、何か考えがあるのだろう? 普段なら認めないが特例だ。後で説明は必ず頼む」


 良かった。断られるかと思っていたけど、これで現地調査が出来そうだな。ビリ-が食べ終わるのを待って、牢から出して貰った。勿論、逃亡の恐れもあるので、手は縄で縛ったままだが。


「すまないな。君を信用したいんだけど、とにかく君の家に行ってからだ」


「ふん! ちゃんと食べる物くれたしな! 案内してやらぁ!」


 威勢のいいビリ-に案内させ、スラムへ向かう俺と宰相。周りは10人の衛兵が隠すように守っている。スラムに入ると怯えて隠れる者や、攻撃的な目を向けて来る者もいた。まぁ流石に衛兵がいるのに、向かってくる者はいなかったけどね。スラムの中は想像以上にひどい。匂いは耐えられないほどだし、家などはボロボロで雨も避けれない状態だ。入り組んだ道端に座り込む者、死んだように倒れている者もいる。


「ビリ-、いつもこの状態なんだろうか?」


「え? そうだぜ! 別に珍しいもんじゃないし。見た事無いの?」


「ああ。初めて来たんだ。変な事聞いてすまない」


 改めて自身の目に映る光景に、俺は人々の絶望を感じた。誰もが生きる事を諦めている様にも見える。ダメだ! これを解決しない事には、衛生環境の改善など出来るはずがない。そんな思いを胸にしまい、一軒の家らしき建物の前に着いた。


 さてビリ-の家族はどんな状態なんだろうか―――

現実を突きつけられた速水が何を考えているのか? 後編をお楽しみに!

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