流通の管理と『J-Style』
正式に決まった工事。そして何やらJ-Styleでも何か......。
国中をレ-ルで繋ぐ計画が、公爵の主導により国の事業として正式に決まった。この事で国家予算も使われる事になる。技術提供という名目で、信頼雑貨にも予算分配される事も通達があった。
「蓮見君。職人の育成も頼んだよ」
「専務。今回の計画で、国中の鉄工職人が派遣されてくるみたいです」
「そうか。他の仕事もあるし忙しくなるな」
「そうですね。将来を考えて技術者の育成は必須ですよ」
現状、工場の方は下水道工事の資材の製作がメイン。馬車の方も貴族分が終われば、他の依頼にも取り掛かる必要がある。今は1人でも多くの職人が必要だ。そしてレールを敷く工事には、職人から1名ずつ各地に向かう事も決まっていた。
「来栖君。人選は進んでいるのか?」
「ええ、この国の職人からも選びますが、うちの社員からも工期が決まり次第出しますよ」
「そうか。国中に散らばる事になるな。社員から不満は出てないのか?」
「逆に喜んでるんですよ。中の仕事ばっかりでしたからね」
「そうなのか。確かにこれまでは、一部の人間だけが出ていたからなぁ」
信頼雑貨の社員達もこの世界に慣れた事で、外の世界を見てみたい者は多い。安全面で心配な所はあるが、その部分は国の政策に期待したい。
◇◇◇
一方、速水達はと言うと、ジュ-ンさんを含め行商人達と話し合いを行っていた。
「今回の計画が進めば、国中とホットラインが繋がりますよ」
「ええ。これは凄い事になりましたね」
「速水さん。我々が今するべき事は何なのでしょう?」
「そうですねぇ。これから数多くの物資を流通させるに当たって、各街の商業ギルドと新たな提携を結んでは如何でしょうか?」
「提携ですか? それはどう言ったものなのでしょう?」
「商業ギルド自体、色々な職業の組合です。しかし各街で特色も違いますよね? ですから行商人も組合を作って各街の情報の懸け橋になれば良いと考えます」
速水が考えるのは、物の流れを把握するシステムを作る事。どの街に何が必要か分かれば、物資の流通もスム-ズになる。各街がバラバラだと、流通自体が偏る可能性もあるのだ。この話し合いの結果、早急に各地の行商人を集める事になった。その後、信頼雑貨を含めた新たなギルドが発足する事になるのだが、その話はまた語る事にしよう。
◇◇◇
グランベルク1号店には、女性客が増えていた。お目当ては『J-Style』だ。
「きゃあ! この服可愛い!」 「こっちも良いわよ!」 「この下着どうなってるの?」
「分からない事は何でも質問してくださいね。こちらに試着室も御座いますよ」
そう声を掛けるのは、J-Style店長の倉木 愛。今はデザイナ-兼任だ。
「じゃーん♪ ここの服は可愛いんだよ?」
モデルとしてシスタ-マリアが女性客に服を見せている。もう教会の仕事してないよ?
「ちょっとマリア! その服逆だよ!」
「ん? 静香? ボタンは背中じゃないの?」
「違うわよ! どうやって着たのよ!」
マリアはワンピ-スを着ているのだが、服の向きが逆だったらしい。ある意味ひと味違うファッションだった。
「はいはい。静香さん、マリアの事頼みますね。それじゃ他の社員は、フロア-に散らばって接客お願いします」
騒がしくなる店内にどよめきが起きた。入り口が急に騒がしくなっていたのだが......。
「ちょっとあれって......」
「ごめんなさいね。気になったものですから」
立っていたのは、騎士に守られたクリステラ王妃と王妃に似た容姿の奇麗な女性だった。後ろにはマリアンヌ男爵夫人も居る。
「ご来店ありがとうございます!」
1号店、店長の安田 美樹と従業員が一斉に入り口に立つ。
「あら、可愛らしいお嬢さんね。お邪魔して宜しいですか?」
「勿論でございます。ごゆっくり見て行ってください」
「お母様! あちらのお店が素敵ですわ♪」
「あら? セラフィア様も気になりますの?」
マリアンヌ夫人が王妃とセラフィア王女を連れ立って、J-stileにやって来る。
「いらっしゃいませ。どうぞ手に取って見てください」
倉木が3人を店内へ案内する。J-Styleには服の他にも匂い袋や化粧品、簡単なアクセサリ-も置いてある。売っている商品は庶民価格の物だが、質は貴族相手でも問題ないレベルだ。
「これすごくいい匂いがしますわ♪」
「試供品が御座いますので、ご自由にお試しください」
「あれだけ調子が悪かったのに、元気になって良かったわ」
後で聞いたのだが、式典に参加する為にやって来た王女が体調を崩したらしい。それで休養の為に王妃と王女は男爵邸に留まり、国王は先に王都へ帰られたんだ。徐々に回復した王女が街を見たいと言い出したので、マリアンヌ夫人の案内で1号店に来たと言う経緯だった。
「あの子の着ている服が気になります......」
「試着されますか? 王女様」
「は、はい」
王女はマリアの着ているワンピ-スに興味を持った。微笑ましい顔でその様子を見守る王妃と男爵夫人。暫くして着替えた王女が出て来ると、周囲から歓声が上がる。
「きゃあ! 美しいわ!」 「お綺麗ね」 「気品が漂ってますわ」
「あれ? 何か私と反応が違うよ?」
「ちょっとマリア、静かにしてよね」
「よくお似合いでございます。如何でしょうか?」
「ええ。とても軽い服ですわ。お母様どう?」
「うふふ。よく似あってるわよ」
結果、王女様は他の服も含め色々と購入された。この事が噂になり『J-Style』は名声を得る事になる。王族も認めるブランドがここに誕生したのだ。
更に忙しくなる信頼雑貨。新たに誕生したJ-Styleも名声を得た。今後さらに発展するだろう。
次話は進む工事と新たなギルド。




