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聞いてないよ!

急ぐ理由ができました(汗

 翌日、ルコモンド辺境伯達に見送られながら出発。馬車は完成次第、取りに来てもらえるようだ。行きは眠ってしまった道中だが、アリストの街までは1本道。さして何もなく風景を楽しんだ。そして日が傾く前には、アリストの街に到着した。すると街の門で、伝令の方が待っていたんだ。


「ご苦労様です。アリスト様からグランベルク卿に親書を預かっております」


 伝令から渡された親書の中身は、グランベルクで行われている下水工事の完了が後4日から5日。そこで各貴族が、終了式典に招かれているという内容だった。そしてアリスト伯爵も公爵達と一緒に、グランベルクへ向かったらしい。


「これは我々も急がなければならないな。しかし領主である私が後で知るとは......」


「ライアン男爵、こればかりは仕方ありませんよ。工期も早くなったのでしょうし」


 本当にうちの職人は、仕事が早いな。男爵の話では、公爵様が向かわれたという事は、国王陛下が来られる可能性もあるという事だった。我々も今のぺ-スで帰れば、ギリギリ間に合いそうだ。


「今日は急いでも仕方ない。ゆっくり休んで明日、早めに出発しよう」


 宿泊施設の方は、我々の為に開けてくれていたので助かった。俺達も夕食を手早く済ませ、就寝する事に。そして翌日の日が昇る頃に、出発した。ゼットバ-グまでの道のりも1本道なので、いつもより速度を上げたんだ。そして休憩を取らず昼過ぎに街へ到着。ここで昼食と休憩を取り、今日はこのままクランケの街に向かう。


「いやぁ、さすがにバタバタやなぁ」


「まぁ、男爵が急ぐ気持ちもわかるよ。貴族の面子もあるしな」


「がんばった馬達に、ちゃんと休憩してもらわないとね」


 中村さん優しいなぁ。餌を与えている姿が、可愛らしい。


「ちょっと速水君? 鼻の下が伸びてるわよ?」


「は、花崎さん。そ、そんな事ないっす」


「もう! まぁ良いわ。そんな事より、これから出て次の街に着けるのかしら?」


「男爵の計算では、門が閉まる前には到着出来るはずですよ」


「なら良いんだけど。野営するなら色々と準備がいるからね。女の子は」


 そんな事を喋っていると、男爵と沢田専務、蓮見課長がやって来た。どうやらもう出発するようだ。


「少し天気の心配があるから、早めに出発しよう」


 蓮見さんが空を見て、雨が降る可能性に気付いたようなんだ。キャンプが趣味で山に通っている間に、雲の流れで何となく天気が分かるらしい。この人何気に凄い。それからすぐに出発したんだが、流石に馬の疲労を考えて1度休憩は取った。


「ああ、これは降って来るな。皆、雨の準備しといてくれ」


「蓮見君、街までは持ちそうにないか?」


「専務、間違いなく降りますよ」


 護衛の人達に合羽(かっぱ)を配り、俺達も馬車に雨が入らない様に、窓などは閉めた。再度出発してから2時間程経った時、空模様が怪しくなった。それから雨が降り出すまでは一瞬。猛烈な勢いで前が見えないほどだった。一度馬車を止め、護衛達も雨を避けられる場所に避難。幸いな事に1時間程で雨脚も落ち着いた。


「蓮見さん、凄すぎだよ」


「ほんと! 雨降るのわかるなんて凄いよ!」


 ジュ-ンさんに褒められ、満更でもない顔の蓮見課長。また花崎さんに怒られるかも? 


「雨脚も落ち着いたし、出発しよう!」


 その時男爵から出発の号令があった。ナイスタイミングです! 男爵! 

 

 そこからクランケの街に到着するまでに、雨は止んでくれた。俺達も街の門が閉まる直前に、何とか到着出来た。俺達は馬車に揺られていただけだが、護衛の方やパルマさん達は疲労困憊だった。


「皆、ご苦労だった。今日は出来るだけ早く休んで、身体の疲れを抜いてくれ」


「「「お疲れさまでした!」」」


 勿論、クランケ子爵も不在なのだが、この街は子爵が居ない方が活気がある。行きでも思ったが、街の人も不満が溜まっているのかもしれない。それが肌で感じられたので、少し残念な気持ちになった。

 翌朝、出発前に馬車の足回りにチェ-ンを装着。昨日の雨で()()()()()いるはずなんだ。行きの道中もスコ-ルからこの街に来る時に、経験しているからさ。


「皆、疲れていると思うが、次の街に着けばグランベルクは近い。頑張ってくれ」


 そして出発したんだが、やはり街道は雨の影響を受けていた。馬車の進む速度もいつもに比べて遅い。嵌ってしまうと時間を取られてしまうので、慎重に進む一行。かなり時間は掛ったが、夕刻にはスコ-ルの街に到着した。街の門では、サルネッティ男爵が迎えてくれたよ。


「やぁ、ライアン。かなり急いだようだね」


「エリオット。お前はまだ向かって無かったのか?」


「あはは。まぁとりあえず、うちの屋敷へ行こう」



◇◇◇



 俺達もライアン男爵とサルネッティ男爵に続いて屋敷に向かったんだが―――


「成程。追いついたのか」


 男爵がそう言ったので、意味が分かった。先に出発していた公爵達に、追いついたのだ。屋敷に入ると公爵2人とアリスト伯爵、そしてゼットバ-グ子爵とクランケ子爵が待っていた。


「おや、早いじゃないか。流石は”幸運の君(ラッキ-ロ-ド)”。馬車の性能が良いと違うな」


 サダラ-ク公爵が冗談交じりにそう言うと、場の雰囲気も柔らかくなった。それから俺達も参加して夕食を取ったんだが、馬車の話で大いに盛り上がった。タイヤにも興味が出たようで、各公爵、伯爵達の馬車にも取り付ける事を約束した。話を聞くと完成式典は2日後。明日グランベルクに到着すれば、間に合うようだ。強行の日程だったが、何とか男爵の面子も保たれるだろう。


 その夜は色々な話で、遅くまで語り合った......。

何とか明日には街に帰れます。駆け足で疲れたが、きっちり間に合うのはご愛敬。


次話は完成式典。

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