武器は作らない。
日本人としてここは譲れない
遺物の確認と街を見た俺達は、グランベルクへ向けて街を発った。男爵も合流しルコムンドの街へ向かうのだが、ジュ-ンさんも同行する事になった。日本人の血が流れる彼女は、俺達の作り出す物に興味をもったらしい。
「沢田殿は私の馬車で、今回の件を聞かせて貰えるだろうか?」
「はい。大丈夫です。今後のご相談もさせて下さい」
ライアン男爵は直接見聞きしていないので、帰路の馬車で報告して欲しい様だった。男爵自身とても興味はあったが、プリべ-ト辺境伯が放してくれなかったらしい。俺達の乗る馬車にはジュ-ンさんが乗り、うちの女性達と仲良さそうに談笑している。華やかで良いものだなんて思って見ていたら......。
「なんや速水、鼻の下伸ばしてからに」
「なんだよ? 田村だって嬉しそうじゃないか!」
「女性が増えると華やかで良いじゃないか」
俺と田村の話に珍しく蓮見課長が噛んできた。
「蓮見さんもそう思います?」
「俺も男だからな。普段は男連中に囲まれてるしな」
そう言って笑う蓮見課長を新鮮な感じで見ていたんだが、そこに花崎さんが一言。
「蓮見さん、そんな事言ってると奥様に怒られますよ?」
「花崎、そう言うんじゃないんだが......」
きっと場を和ませようとしたんだろうが、女性陣は怖い。俺と田村は苦笑いだった。
そんなコムンドまでの道程も特にトラブルも無く到着。俺達の視界には、相変わらず立派な要塞が目に入った。
「思ったより早かったじゃないか。では私も話を聞かせてくれ」
「ルコムンド卿。お出迎えありがとうございます」
ルコムンド辺境伯とライアン男爵、それに沢田専務と蓮見課長は、報告の為に連れられて行った。残った俺達は、中村さん、花崎さん、ジュ-ンさんの3人が夫人とお茶会に。俺と田村はパルマさん達と、この街に卸す物を相談だ。
◇◇◇
「それで知りたい情報は手に入ったのか?」
「ええそれなんですが......」
沢田からルコモンド辺境伯に、今回得られた情報を話す。内容を聞き、難しい顔をしたその場の面々。
「まぁ君達の役割は、この世界にとっての希望となる物なんだろうさ。変に塞ぎこむ事も無いだろう」
「ええまぁ。沈んでいても解決策すら分からないですからね」
「話は変わるが、例の馬車作って貰えるのだろう?」
「はい。馬車に関しては製作させていただきます。しかし武器は作りません」
蓮見と辺境伯は、メルボンヌの街に向かう前に話をしていた。そこで俺達の様な馬車を作る事、そして武器の製作について打診されていたんだ。
「やはり武器はダメか。何故か理由を聞いても良いか?」
「私達の住んでいた国は、過去に戦争を経験しております。そしてその教訓から、人を殺める為の物は持たないと言う考えがあるのです」
「では、もし侵略されたらどうするのかね?」
「対話による解決を目指したいと思います。この世界では、甘いと思われるかも知れませんが」
「確かに甘いと言わざるを得ないな。しかし君達の考えも分からなくもない」
実際、住んでいた日本でも自衛隊の存在もあった。全く武器を持たないと言う選択肢もあったはずだが。
「本音を言うと、対話だけで解決は難しいと思います。ですが諦めてしまっては、世界から争いが無くなりません」
「それを分かった上での考えなら、それを尊重しよう。何、我々が君達を守るさ」
「私も君達を保護するよ。これはこの国の総意であるからな」
辺境伯と男爵は、蓮見の話す言葉に何かを感じたようだ。武器の件は同行したメンバ-と話し合い、作らない事は決めてあった。この件は他の貴族とも、話し合わなければいけないだろう。
◇◇◇
一方、その頃速水達は......。
「それでこの街には何を卸すんです?」
「それなんですが、ルコモンド夫人が女性の化粧品が欲しいと言われてるようで」
「なんやそんな事言うとったな。化粧水やら風呂のセットやったっけ?」
女性用の化粧品関係は、品質管理部門で試験的に作っているらしい。インクの研究と合わせて、石鹸に香り付けや何かも考えている様だ。この街までの距離もあるので、多くの物は輸送が難しい。
「現状、多くの商品は持って来られないだろうな。大量に運べる手段も考えてはいるらしいんだけど」
「職人が何か考えてるって言うてたで」
この世界の流通を、もっと便利にする方法も考えられている。さてどんな案なのか......。
◇◇◇
女性達はと言うと......。
「あら、これはいい香りがするのね」
「これは香草を利用した物です。汗をかいた時なんかに良いですよ」
静香が夫人に渡したのは、匂い袋だ。これも品管に作って貰ったらしい。
「後は香水も研究していますし、石鹸も匂いの良い物を考えています」
「このお菓子は何と言うの? 美味しいわね」
「これはクッキーです。私の街では良く食べられてます」
お茶会の席にジュ-ンが持参したのは、クッキ-。これもサヨコが広めた物らしい。甘すぎず素朴な仕上がりだ。
「これは懐かしい味ね。これなら直ぐに作れそうね」
「あら、千鶴って料理できたっけ?」
「静香! 私だってクッキーぐらい作れるわよ!」
「まぁまぁ2人とも、それぐらいで」
静香と千鶴に割って入るジュ-ン。それを微笑ましそうに夫人が見ていた。
◇◇◇
ルコモンドでの1日はあっという間に過ぎて行く。夕食にはこちらのお米も堪能した。例のアルメリア米だ。次はアリストの街だが、流石に公爵達は帰っているだろう。......多分。
武器を持つことに関しては賛否両論だろう。しかし異世界だからと言って人の命の重みは変わらない。
次話からは少し帰るスピ-ドが上がります。




