1号店の開店と今後の予定
はい! 開店で-す!
水道工事が始まって、街の中も人で溢れていた。グランベルク1号店の開店も準備を急ぎ、無事にその日を迎えたんだ。
「皆さん! いよいよ開店です! 気合入れて接客お願いしますね!」
この1号店の店長は、安田 美樹。販売部の女性では、安田が成績的に抜きん出ていたんだ。
「安田さん気合入ってるな。田村も気合入れろよ?」
「速水......。俺かてやる時はやるで! 今日は、1番売ってやるさかいに!」
「私も負けないよ-! 売って売って売りまくるのだ-!」
「なぬ? マリアには負けないでござるよ!」
何故か当たり前のように参加している2人。手伝ってくれるんだから、文句は無いんだけど。
「速水君も店に立つの? なんか珍しいね」
「中村さん。俺は店前でチラシ配りですよ。中は皆さんに任せます」
「そうなのね。(たまには一緒に働きたかった)」
「静香フラれちゃったね。気を確かに持ちなさいよ?」
「ちょっと千鶴! 何か言った?」
「おお怖い怖い。何でもありませ-ん」
開店から人が途切れないほど盛況だ。各商品毎に整頓された店内は、買い物客でごった返している。今日は開店セ-ルで、全品定価の半額。この日を含めて3日間は、このセ-ルを続ける。
「そこのお姉さん! 本日全品半額で-す! 商品が無くなり次第、閉店ですよ!」
俺を含め店内で売り子をする人以外は、街中に散らばってチラシを撒いている。これを機会に、今まで知らなかった人にも認知してもらうんだ。必死にチラシ配りしていると、向こうから見知った顔がやって来た。教会のクリスタさんと子供達だ。
「クリスタさん。お久しぶりです。今日はみんなで来られたんですね」
「あら、速水さん。マリアとトミ-もお店に出ていると聞いたのでね」
「いつも手伝って頂いてすみません。とても助かっていますよ」
「邪魔になって無ければ良いんですけど」「お母さん! 早く!」「早く行こうよ!」
「おっと、邪魔しましたね。どうぞ入って下さい♪」
「申し訳ありません。あなた達、迷子にならない様に!」
クリスタさんも大変そうだな。2人の様子見とお目当てがあるはずだ。倉木さんや絵の得意な社員達が、絵本を描いたんだよ。その事を知ったマリアさん達が、子供たちに自慢したようだからさ。本が貴重品だから、安価で手に入る絵本は売れるはずだ。
こうしてグランベルク1号店が賑わっていた頃、会社には男爵が訪れていた。
◇◇◇
男爵の応対に出たのは、沢田と清水だ。
「それで本日はどの様なご用件でしょうか?」
「忙しいところすまないな。実は例の転移者の遺物の件なんだが」
「と言いますと、ハ-メリック帝国の件ですか?」
「いや、メルボンヌの街のほうだ。君達も向かうと聞いているが?」
「はい。メルボンヌの街には、私と何名かの社員で向かおうと考えています」
「その為に馬車を作ってるんだったな。完成は近いのだろうか?」
「清水君、予定は聞いているか?」
「はい。馬車の本体は完成しております。現在、調整と検査が進められています」
「そうか。その旅に私も同行させて欲しいのだよ」
「それは私共としても有難いですが、何かあるんですか?」
「場所が他国との境なのでな、王から君達に同行するように厳命があったんだ」
「そうですか。何かあった場合の為なんですね。申し訳ございません」
「気にするな。私も興味があるのでな」
この国で保護を受けている事を改めて認識した。確かに他国で何かトラブルがあれば、対処できない可能性もある。その点貴族が一緒であれば、外交上頼りになるだろう。馬車が出来上がり次第、男爵に報告し日程を決める事になった。
◇◇◇
工場では連日新しい物が生まれていた。現在は壁掛け時計の実験中だ。
「蓮見さん。この電池が一番良いんじゃないですか?」
「そうだな。岡田からは組み合わせによって違うと聞いていたが」
「水時計と重り時計もあまり変わりませんねぇ」
「構造的に秒針を付けてないから、誤差が分かりずらいからな」
「そうですね。秒針まで付けるとなると、複雑になりますからね」
「電池式はまだまだ改良だな。水時計と重り時計をメインにしようか」
「了解。皆に伝えておきますね」
細かい部品を作る関係で、複雑すぎる構造物は作れない。先ずは時計という物を認知させるのが先だ。出来上がった水時計と重り時計は、順次王都へ送られている。試験的に王都中の店舗へ、設置する計画らしい。
「馬車の方は、順調か?」
「ええ。でも専務達ビックリするんじゃないですか?」
「何、これも皆の為だ。より安全で快適な物を作っただけだろ?」
「ははは。お披露目が楽しみですわ」
ちょっと黒い顔で笑っている2人。周りの職人達は、恐ろしい物を見た様な顔をしていた。この二人は見た目が怖いのだ。果たしてどの様な馬車が、出来上がったのだろうか......。
馬車が気になる。それは次のお話で明らかに!




