貴族関係に変化の兆し
国の方でも何やら動きが......
グランベルクの街の開発が始まった中、王都では王城に貴族が集められていた。ジョ-ジ国王がサダラ-ク公爵の話に、興味を持ったようだ。会議室に集まったのは、国王、宰相、将軍、伯爵位以上の貴族達だ。会議の議長を務めるのは、宰相であるブラウン・スチュワ-ト。実質的にこの国を回している頭脳である。
「では今回の議題は、『幸運の君』が現れた事についてだ」
ここでジョージ国王が、サダラーク公爵に確認を取る。
「この中で彼らと接触したのは、サダラーク公爵だったな」
「はい。彼らが現れたのが、懇意にしているグランベルク卿の街だったので」
「ではサダラーク卿から見て、彼らは何をもたらすと思われる?」
「ブラウン殿、あくまでも私の意見ですが、彼らの持つ商品・技術はこの国を変えると思います」
「ふむ。変えるとは? 具体的にどう言ったものなのだね」
「此処に持参したのは、名刺と言われる物と、時計です。まずは見て頂きたい」
サダラ-ク公爵が差し出した、名刺と時計を見て驚愕する一同。
「なんだこの上質の紙と時計という物の精巧さは! 彼らがこれを作り出したのかね?」
「国王様。その通りでございます。名刺に関しては、既に私を含め複数の貴族が所持しています」
「それでこの時計という物は、どの様に使うのだ」
「ブラウン殿。これは1日を24時間で表す物です。正確に時間がわかる事で、その有用性は計り知れません。しかも彼らは、これ以外の商品も多数所持しています」
サダラ-ク公爵の説明する内容に、少なくない貴族から質問が入る。その説明を聞きながら苦虫を嚙み潰したような顔をする、ハ-モニック公爵派の貴族達。煌々とした表情で手に取り、魅入る国王と宰相。何か不穏な空気が流れ出したのだが、国王の一言で場の雰囲気が変わった。
「国王として宣言する。彼らを国で保護するんだ。何人たりとも危害を与える事はならん」
「国王様! 彼らはまだどの様な人物かも分かりません。それを確かめてからでも宜しいのでは?」
「ハーモニック卿よ。余はサダラ-ク卿から、彼らと会った際の印象も考え方も聞いておる。それに武力は持っておらんようだ。何やら王都までの道程で襲われた事も聞いているが?」
「そ、それについては私は聞いておりませんが......」
襲われたと聞いて騒ぎ出す周囲に対し、ブラウンが声を掛ける。
「静まってくれ。私も国王と同意見だ。過去の事例を見ても、現れた彼らはこの国に幸運をもたらすだろう。その証拠になる物もここにある。それに現在、グランベルクの街に新たな動きがあるのだ」
そこで声を出したのは、エルモンド侯爵。貴族の中で中立の立場をとる男だ。
「ほお、新たな動きと申しますと何やら職人たちが集まっているとか?」
「情報が早いな。流石はエルモンド卿と言ったところか。今は街の下水道工事の申請が来ている。これについては、国として補助金も出す事になった」
「下水道の工事ですか。それはどの様な物なのでしょう?」
そこで信頼雑貨株式会社から出された、工事の計画書が皆に見せられた。ライアンがサダラ-ク公爵に話を通す際に渡した物だ。それを見ながら感心する一同。そこでクラ-ク伯爵が質問をした。
「ブラウン殿、グランベルクの街が工事を完了させた後、うちの街にもお願いする事は出来るんでしょうか?」
「うむ。その辺りは如何なんだね? サダラ-ク卿を経由するのか?」
「今の所は私が窓口になっておりますが、国で保護するとなれば宰相殿とご相談でよろしいかと」
「ブラウン。では宰相として彼らと話をする必要があるな」
「国王様がそう仰るのであれば、一度グランベルクの街に行きましょう」
こうして信頼雑貨株式会社は、国の保護を受ける事になった。ハ-モニック公爵は気分を害していたが、国王に逆らう事は出来ず了承した。この会議の後ハ-モニック公爵とサダラ-ク公爵が、極秘に会談をする事になった。敵対する二人ではあったが、いつまでも対立している訳にはいかない事情もあった。
◇◇◇
ジョルジュ・サダラ-クとリアン・ハ-モニックは、幼少時は共に遊び勉学を学んだ仲である。しかしお互いの親の確執もあり、いつの頃からか今の様な関係性になっていた。
「こうして2人で話をするのは何年ぶりかな」
「ジョルジュ。何か言いたそうな顔だな」
「リアン。それは君が一番分かっているだろう?」
「ああ、やりにくいな。それにしても上手くやったじゃないか」
「今回はたまたまだよ。彼らがグランベルク卿の街に現れたんだから」
「それもお前の運だろう? 結局、こちらは何もできなかった」
「良いじゃないか。これからは、国が彼らと交渉するだろうし」
「俺にもその名刺作ってもらえるかな」
「なんだ。そんな事を根に持っていたのか? それぐらい融通してもらうよ」
「そんな事とはなんだ! 下級貴族に先を越されたんだぞ? 気分の良い事じゃない」
「あはは。変わってないな君は。いつもそうしていたら、私達の関係も壊れなかったのに」
「俺にだって立場があるんだ。特に父と母がうるさいんだよ」
「うちも似たような物だよ。でもそろそろ良いんじゃないか? 昔の様に仲良くしてもさ」
こうしてジョルジュとリアンは話を続けた。歩み寄るジョルジュとリアン。この二人の関係が改善されれば、貴族のしがらみも薄れて来るだろう。新しい歴史の一歩は、ここにもあったんだ。
国から保護される事になった信頼雑貨株式会社の面々。まだその事実は知らされていないが......。
次話は、製作中の物に進展があるようです。




