公共工事が決まった!
街に公共事業が決まったんだよ。
うちの商品を露店で売るようになり、日本製品も徐々に浸透してきた。スプ-ンやホ-クを使う習慣も付いてきて、飲食店でも使い始めたらしい。手を汚さないという意識が生まれた結果だろう。衛生環境を意識し始めた事がわかったので、男爵に働きかけて公衆便所の設置も決まったんだ。それに伴って下水道の工事計画も進める事になった。町全体を工事するには時間が掛かる。鉄製のパイプの製作は、それなりの技術も必要だ。予算は街の税収とギルドに登録している商会から費用負担する。衛生環境を整備すれば病人も減るし、公共事業なので雇用も増える。更に国からも補助金を出して貰えることになった。サダラ-ク公爵様にお願いして、国にも働きかけてもらったようだ。外壁工事以外で、これだけ大がかりな公共事業を行うのは初めてらしい。
「やっと決まりましたね」
「男爵も衛生環境については、改善したかったんだろうさ。これによって労働人口も増えるし、街の整備も出来るからな」
「高橋課長が沢田専務に話をされたんですか?」
「ああ。社内会議で排せつ物の処理の話を聞いただろ? あの時からやるべきだと思っていたからな」
「俺も男爵の屋敷には行ってたんですけど、後回しにしてましたから」
「沢田専務と俺で男爵に話を持っていって、その流れでギルドも巻き込めた。蓮見も賛成だったしな」
「工場部門もかなり忙しいでしょ? 今は色々と案件抱えてますから」
「職人がいる間にやってしまおうと言う事らしい。街の発展になるなら鉄工関係の人間も喜んで手を貸すさ」
「新たに国中から職人を呼ぶみたいですね」
「そうだな。国としてもモデルケ-スとして期待している様だ」
「そうなれば、この街にも活気が出ますね。人とお金が動けば」
「ああ。商売時だな。速水の案件はどうなってるんだ?」
「俺の提案している行商人との連携ですが、商品のピックアップは終わっています」
「なら話は進んでいるのか?」
「はい。先ずは小物関係から取引します。文房具から始めて徐々にアイテム数を増やそうかと」
「そうか。纏まったら俺にも資料を回してくれ」
「はい。そのつもりで資料を揃えています」
◇◇◇
その頃工場では、職人たちが集まっていた。
「兄貴、それで馬車の改造は図面通り進めて良いんですかい?」
「ああ。そっちにとりあえず5名。時計の製作は、資材が揃ってからだな。細かい部品は、ここにある物を参考にしてくれ」
「このナットとかボルト? ってやつですね。こんなの見た事無いっす」
「これが無いと固定できないからな。それとパイプラインを新たに作る事になったから、各自リ-ダ-を決めてくれ。4つほどのグル-プに分かれて製作する物を決めるからな」
『兄貴』という呼び名が定着した来栖。まんざらでもない様子だった。
「来栖さん。今いいかな?」
「おう! 珍しいなナダルとロキがお揃いなんて」
「職人同士は、話せば分かり合えるんですよ。ねぇロキさん」
「そうですね。ここに来たら新しい技術が沢山ありますから」
「で? 何か用だったか?」
「ロキさんと話をしていたんですが、何やら井戸にポンプなる物を付けるとか?」
「私も興味がありましてね。是非ともそのポンプの製作にも協力したいんですよ」
「ナダル商会は、初めからそのつもりだ。だがロキ商会は、良いのか? 時計製作が優先だろ?」
「それについては問題ありません。王都からもすぐには出来ないだろうと言われてますし」
「念の為、公爵様の方にも確認とっておいてくれよ。後で問題になっても困る」
「わかりました。それでそのポンプは、下水道にも関係するとか? 一体どう言う事なんでしょう?」
「水圧を利用して水を汲み上げるんだが、それを利用して水洗便所を作りたいんだよ」
それを聞いて頭にハテナマ-クを浮かべる2人に、また図を描いて説明する来栖。口で説明するより図解の方が頭に入りやすいらしい。将来的には街に水道が作れれば良いが、そこまでは求められない。先ずは井戸を使いやすくする事と、排せつ物を流す方法として使う事。社内には電動ポンプもあるが、電力を抑えるために風力を使った水の循環方法も考えている。来栖は水道工事の経験こそ無いが、原理がわかっていれば作る事が出来る。実際の工事には、職人の中の水道工事経験者が行うらしいが......。
信頼雑貨株式会社の工場部門は、そんな人材の集まりなんだ。色々な工場から人を雇い入れた事が、こんな形で役に立つなんて。これもこの世界に呼ばれた意味なのであろうか?
◇◇◇
夕食時、食堂は戦場になる。外部の人間がこぞって食べに来るようになり、キッチンでは岩さんの檄が飛ぶ!
「おい! そっちを早く終われせてくれ! 次、それ炒めといて!」
「了解! はいAランチね!」「はいよ!」「スープが足りねぇ!」
「誰だよ担当は!」 「すみません! すぐ作ります!」 「急げ!」
水運びのちびっこから穴掘りの大人まで、喰い盛りが集まるんだ。この戦場が終われば、次は社員の食事時間になる。『毎日が戦場だぜ!』と言うのが、キッチンの合言葉だった。皆の食事が終わる頃には、全員が立てなくなるらしい。食べ物を提供するってこんなにも恐ろしいんですね。
異世界ならポンプという訳では無く、更に先を考えてるんです。ここで問題は、ゴムの木があるのか? パッキンどうするんだ? と言う事でその辺りも次話で出てきます。必要な物を1つ揃えるにも時間が掛かる世界。石油製品が無いのでパイプも鉄製を準備しなければいけません。工作技術も日本の誇り。ちなみに作者は、学生時代工場で3年ほどアルバイトをしていました。職人の技術って本当にすごいです。




