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交渉は腹の探り合いなのだ

今回は資材の仕入れ方などのお話。

 この世界に俺達が来てから、既に1か月が経とうとしている。様々な出来事があったが、何とか生活環境の改善と本業である商売も軌道に乗って来た。提携した商会との関係も順調で、こちらが欲しい資材なども徐々に取引が出来るようになった。まず木材についてなのだが、この世界の木はいわゆるオ-クと呼ばれる木が1番多い。日本人になじみの深い名前にすると樫の木だ。硬質な木なので、馬車や船の原材料として使用されている。しかし流通はあまりよくない。取引する金額も鉄等の鉱石と比べても遜色ない程だった。幸いうちではそれほど多くの量を求めていなかったので、必要量は確保する事は出来た。取引相手は、鉱石も取り扱っているキュ-ズ商会だ。


「毎度ありがとうございます。ご注文頂いたオ-クの方は、必要量手配済みです」


「キュ-ズさん、ありがとうございます。うちでは寝具と馬車に使う木材が必要だったので助かります」


「いえいえ、こちらも良い商売ができて助かります。国か貴族様相手だと足元を見られますから」


「木材はオ-ク以外には、何を取り扱っているのですか?」


「オークは育つのにかなりの年数が掛かりますからな、針葉樹の取り扱いが増えていますよ」


「成程、ではまた必要のある時にお願いしますね。それと鉱石なんですが......」


 発注は営業部門が行っているんだ。今の所、担当は俺と中村さんだ。工場部門から必要な物のリストが上がってきて、見積書をもらった上で経理に了解をもらう。それから値段交渉して発注という流れなんだ。しかしこの世界の商会も結構シビヤなんで、値引きしてもらうのも一苦労なんだよね。キュ-ズさんも中々やり手だから俺も負けられない。


「鉱石は今の所、鉄と黒鉛、銀を少量で良いので手配お願いします。出来るだけ純度の高い物が欲しいですね」


「わかりました。しかし純度の高い物はそれなりに値段が張りますよ? 聞けば高炉があるんじゃないですか?」


「ええ。高炉は有りますが、大型の物ではありませんので。手間を惜しみたいのも本音でして」


「それでは、板型の方も必要で? こちらも値段はそれなりですが」


「勿論、それもお願いします。裁断などはこちらで出来ますので。それはナダル商会からの仕入れですか?」


「そうか、それならナダルの所で直接話した方が良いですかね。失念しておりましたな」


「いえいえ、お気遣いありがとうございます。金型なんかもナダル商会と話をしていますので」


 キュ-ズさんとはこんな風に話をするんだが、相手も商売だからさ。俺も取引相手がどの商会と付き合いがあるか? 知っておかないと損する可能性もあるんだ。俺がキュ-ズさんと話している隣では、中村さんがナタリ-さんと話していた。



「じゃあナタリ-の所では、繊維として麻と絹がメインなのね?」


「ええ、素材としてはそうなるわね。下着や服も一般的には麻の物が多いわね。貴族の方が絹をつかっているわ」


「綿花は無いのかしら? 麻は肌に擦れると痛いのよね。絹は流通量が少ないでしょ?」


「そうね。綿花はこの国ではあまり流通していないのよ。他国では綿と麻が主流であったりするわ」


「そうか。それじゃあ仕方ないわね。麻を多めにして絹も頼むわ。それと裁縫の方は人手を借りれるのかしら?」


「ええ、その辺りの手配もうちでやっているから。でもここで作るの?」


「そのつもり。この会社は男性の比率が多いからね。デザイン出来る子がいるから、いっそのこと自社で作っちゃおうかと」


「へぇ。じゃあ出来栄えを見て、うちでも売らせてもらいたいわね」


「そうね。商品化出来れば、こちらとしても有難いわ」


「下着や肌着は、これまで通り入れさせてもらって良いの?」


「ここで作れるようになるまでは、お願いするわ。女性としては数が欲しいからさ」


「わかった。男性用と女性用の服関係は、これまで通り承ります」




◇◇◇



 その頃工房では、ナダル商会の職人と王都から来たロキ商会の職人が目を輝かせていた。


「何なんだこの機械は! こんな物で鉄がくっつくのかね?」


「おい! あれを見ろ! 鉄板に穴を開けているぞ!」


「おいおい! あれはどう使うんだ?」


「ハイハイ。説明するからついて来い。ナダルさんとロキさん。それにメイヤさんは、各職人を黙らせてくれ」


「来栖君。これは先が思いやられるな」


「蓮見さん。まぁ俺らも似たようなもんじゃないですか」


 色々な物に興味津々な所は、職人なら皆同じようだ。俺も新人の頃は......と来栖は思う。若い頃、蓮見さんにもかなり怒られたなと苦笑いをしていた。


「それじゃぁ、まずこの機械は、溶接機と言ってな......」


 そう言って説明を始める来栖を見て、蓮見は昔を思い出す。不器用だった男が一端になったものだと。


 この後一通りの説明を行い、使い方の講義を行った。職人たちは、一言一句聞き逃さない真面目さを見せていた。来栖が職人たちから『兄貴』と呼ばれる様になるのは、この時が原因だったようだ......。

各商会との付き合いで、商売が発展していく。次話はグランベルクの街が変化していく事になるお話です。

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