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この世界は衛生環境が悪い

衛生環境の問題は避けて通れない

 安田さんと教会に行った帰り道、風邪について話をしていたんだ。


「思うんだけどさぁ、この世界って手づかみで食事するのが普通だったじゃない? それも原因の1つだと思うの」


「まぁ確かに汚れた手で食事をすれば、菌が入ってしまうのも納得だな。健康ならまだしも、体調がすぐれない時なら更に確率も上がるよね」


 そんな事を話しながら露店を覗くと、販売するはずのマスクを皆が配っていた。


「田村、どうしたんだこれ?」


「ん? 速水かいな。実はな......」


 そこで聞いた内容はこうだ。売るつもりで持ってきたが、中々理解されない。そこでマリアさんを使って説明会を行ったらしい。そうしている間に、家で体調を崩している人や相談に訪れる人が出て来た。マスク自体は倉庫でかなりの在庫があるので、いっそのこと普及させようという話になったようだ。


「なるほどな。俺達は医者じゃないし、マスクならこの世界の衣料で代用できるしな」


「そういう事や。石鹸だけでも売れたらええやろ?」


「この街の中は埃も多いし、衛生環境を改善するには良い手だと思うよ」


「それな! 流石に下水は整備でけへんしなぁ」


「ああ、トイレも汲み取りだっけ? 俺達の会社でも問題にしているよな。社内は水洗でも処理に困る」


「その件もおいおい男爵を巻き込んで、整備する方向で話をしようか」


 田村と話した通り、この街中は臭い。もう慣れたが、最初は鼻がおかしくなるほどだったんだ。会社の方でも本来下水に繋がっていた部分を活用して、穴を掘るか別の方法をとるかで考えているらしい。ただこれにも問題がある。これから井戸の掘削を進めて行くので、飲料となる水が汚染されない様に考えなければならないんだ。職人の中に土木の経験者が何人かいる様なので、その辺りも任せる他ない。本当に工場のある会社で良かったよ。もし普通の会社だったらお手上げだもんなぁ。そんな話をしながらもそのまま露店を手伝った。石鹸はこの世界では高価な物として認識されていたので、かなり売れました。銅貨1枚は、高くも無く安価でもない丁度良い値段設定だった。



◇◇◇



 この日帰った俺達を待っていたのは、緊急の社内会議だった。内容は、馬車の件と例の下水の件だった。今日の議長は蓮見課長だ。


「皆、お疲れのところ済まない。前触れのあった通り、今日は2つ議題がある。先ずは馬車の件から」


 そこで皆に資料が配られた。馬車の改造に伴い出入りする人間が増える事。その人間には黄色いビジタ-札を着用させる事が書いてあった。


「見てわかる通り、敷地内に部外者が増える。それに伴うトラブルを避ける為周知して欲しい」


 続いて次の議題に移る。馬車の設計に関しては、素人が聞いても解らないからだ。


「続いて下水の件だが、本日2階のトイレが溢れたと報告を受けた。上階に食堂がある為、流れるものが下の階に集中しているのが原因と思われる」


「1つ聞いていいですか! それなら使用禁止になるんですか?」


「それについては、まず建屋の外に仮設のトイレを用意する。数は3つ。今は出入りが非常に多いので混雑が予想されるが、1Fのトイレを女性社員専用にしてくれ。男連中は外だ」


「という事は、上階のトイレは使用できないという認識で良いのでしょうか?」


「体調不良を除きそうして欲しい。今うちの職人と相談して、敷地外に穴を掘ってそちらに流そうと考えている」


 これについては、どうしようもない。排せつ物の処理は、全員で考えないといけない。この街では家畜の肥料に使うか、川に流しているなんて話も聞いた。流石に川に流すのは、衛生上大問題だ。上層部は提携する職人ギルドに問い合わせて、農家の方で汲み取ってもらうように頼んでいるらしい。この仕事も農家にとって収入源らしいので、大変心苦しいがお願いせざるを得ない。この世界で生活する以上、この様な問題にも対処する必要があったんだ。



◇◇◇



 会議が終わった後、田村と少し話した。


「俺らが話してた事が、すぐに現実になったな」


「まぁなぁ、正直なとこ浮かれ取ったもんなぁ。日本に居る感覚で生活してたらアカンって事やわな」


「そうだな。生活に直結する話は、その都度対処するしかないのかもな」


「それはそうと、速水は次の一手考えてへんのか?」


「そうだなぁ。今回の雇用で少しでも街に活気が出たら、売れる物も変わってくるだろ?」


「せやなぁ。今回で大体30人程か? 雇ったんは」


「大体それぐらいだな。それでも活性化するか? と言われると無理だな」


「じゃぁどないすんねや? 待つんか?」


「いや、攻めるよ。行商人のパルマって言う人と繋がりが出来たからさ。うちの商品を他の街に流す」


「成程な。でもそない多くの品物無理やろ?」


「すぐには無理だろうけど、うちの商品の評判を上げてもらえればいけるだろ? それに馬車が改造されれば範囲は飛躍的に広がるさ」


 その件は、高橋課長とも相談していたんだ。提携するギルドも協力してもらって物を動かす。流通網を整備できれば産業が発達するはずだから。動けるのはまだ先だが、準備は早くするに越したことは無い。


 次の日、朝からライアン男爵の使者が訪れたんだ。その内容とは......。



この世界には、ご都合主義は通じない。目の前の問題に苦労する一方で、何か動きがありそうです。

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