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清潔にする事は病気の予防になるんだよ!

この世界は、病気の知識がない。

 次の日から水の運搬を頼んだ人達が沢山来たんだが、子供達を見ると鼻水を垂らした子が多い。それを見た女性社員から1つの提案があった。社員の感染を防ぐためにもマスクの着用と手洗いの徹底だ。


クチュン! ズズズ...


「ちょっとマリア! 本格的に風邪ひいたんじゃないの?」


「ええっ⁈ 静香は昨日から風邪? って言うけどそれなんの事?」


「何で驚いてるのよ? 風邪って言うのは今みたいに鼻水が出て来たり、熱が出て来る病気の事よ」


「大丈夫だよ! 孤児院の子達もみんなこんな感じだよ? ほっといたら治るから!」


「はぁ?! ダメじゃない! ちょっと来なさい!」


 静香はすぐにマリアの熱を測った。幸い平熱程度だったので、まずは石鹸で手洗いをさせマスクを着用させた。トミ-神父の方は症状は出ていなかった為、マスクの着用だけに留め食事の前には必ず手洗いをお願いした。


「速水君、おはよう。ちょっと聞いて欲しいのだけれど......」


 俺は中村さんから孤児院の状況を聞き、会社の許可をもらってすぐに向かう事にした。放っておいて風邪が流行すると怖い。常備薬も多くの人に準備出来ないし、風邪を(あなど)っていたら後が怖い。会社の方でもこの事態は重く受け止め、急遽朝礼でマスクの着用を呼び掛けた。孤児院には護衛の方と安田さんが同行する。一度教会にも挨拶したいんだとか。そして露店でも石鹸とマスクの販売をする事になったようだ。街の人間に理解をしてもらうのは、すぐには難しいかもしれないが......。




◇◇◇



 

 手早く朝食を済ませた後、安田さんと護衛1名で教会へ向かった。到着した時に確認したら5名ほどの子供が鼻水を垂らしていた。それを見てすぐにクリスタさんを呼んだんだ。


「クリスタさん。おはようございます!」


「あら速水さん、お久しぶりですね。そちらの女性は初めましてですわね」


「はじめまして。私、安田 美樹と申します。お噂は聞いております」


「あらあらご丁寧にありがとうございます。私、クリスタと申します。よろしくお願いしますね」


 挨拶を済ませ今回訪問した訳を話した。それを聞いたクリスタさんは俺達の話に驚いたが、感染の怖さは理解してくれた。


「それでは、子供たちにその()()()なる物を付けさせましょう。それと石鹸ですか。高価な物ではありませんか?」


「いえ、いつもお世話になっておりますので。それとマスクについてなのですが、出来ればこちらに礼拝に来る街の方にもお話して頂けないでしょうか?」


「わかりました。礼拝に来られた人達にも手洗いとマスクをお教えします」


 影響力の大きい教会から話を広めてもらえれば、2次感染を出来るだけ防げるだろうと俺は思ったんだ。その後持参したお菓子を皆で食べて、暫く子供達と遊んだ。安田さんは子供が好きで、学生時代は保母さんになりたかったらしい。確かに子供の扱いはうまかったよ。帰る時に、「また来て欲しい!」とせがまれていたしね。




◇◇◇



 

 速水達が教会に訪問している頃、沢田・高橋・蓮見の3人でライアン男爵の屋敷に赴いていた。


「突然お伺いして申し訳ありません」


「いや、大丈夫だよ。何か急用かね?」


「ええ、実は街の人々に風邪という病が流行りそうなので......」


 ここで沢田が風邪という病について説明をする。予防で防げるものだという事、加えてマスクを着用する意味を。それを聞いた男爵は、過去の事を思いだしたようだ。


「雨が降ったり急に寒くなった時に、体調を崩す者が居るのはそれが原因かもしれないな」


「全てがそうとは言い切れませんが、軽い症状であれば可能性は高いと思います」


「わかった。この事は衛兵も通じて話を広めよう。手洗いの重要性もな」


「ありがとうございます。それと今日訪問させて頂いたのは、別件も御座います」


「ん? 何だね。また何か新しい案件でもあるのか?」


「ええ、実はですね......」


 今日ここに来た本題は、馬車の改造についてだった。


「それはとても興味深いな。わかった、私の馬車で試してくれ。もしも馬車が乗り物として使えるなら移動が苦でなくなる」


「技術的な話は、此処に居る蓮見からご説明致します」


 そこで蓮見から馬車の振動を抑える構造について説明が始まった。簡単な図解も用意していた為、質問を受けながら丁寧に解説していく。又、それに関わる資材について、この街の商会の協力を得る事も合わせて了承を得た。


「それでは、一定の成果を得た時点でご報告に伺います」


「ああ、わかった。上手くいけば他の貴族にも話をしよう。これは技術の革命だな」


 これが成功すれば移動が大幅に改善される。王都へも多人数が向かえる様になれば、元の世界へ帰る方法を調べる範囲も広くなる。ここは工場の職人の腕の見せ所だ。


 こうして信頼雑貨株式会社として次の一手は始まった。この事で流通の革命が起きる事は、まだ誰も知らないのであった......。






日本でも風邪は万病の元だと言われています。手洗いは必須ですね。

馬車が乗り物として活用されるまで今しばらくかかりそうです。

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