表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/200

ファリス教の影響力

先ずは人員確保です。

 会議の翌日、ギルドを通し露店でのチラシ撒きを行った。水を運んでもらう人員と井戸の掘削工事の人手確保のためだ。多くの人に参加して欲しいので、水の運搬は1日で銀貨1枚。掘削作業は、1日銀貨2枚で募集をかけた。これには男性のみならず女性の応募も多数来た。この街の人の平均日当は、銅貨3枚から5枚と言うのをギルド情報で得ていたので、間違いなかったのだろう。


「すごい数の応募が来ましたね」


「そうですね。速水君の言う通り賃金設定を高めにした甲斐がありました」


 俺と大塚係長は、笑顔で会話していた。募集についての議題の最中に、一般より多めの賃金設定を訴えた。何故なら多くの商品が出回っても、収入が増えないと街の活性化はあり得ないからだ。そこで大塚係長と共にギルドへ出向き、賃金の平均を調べた上で上記の金額に決めたんだ。面接は門の横にテントを建てて、総務部門と経理部門が担当している。掘削の方は技術を持っている職人がいれば良いのだが、そう都合よく集まる保証も無いので、力自慢や手先の器用な人も採用対象にした。この街の仕事と大きく変わる点は2つある。それは高い賃金と食事が付く事なんだ。これによりうちの商会の評判は、さらに良い物になる。警備の人間が忙しくなるが、その辺りも考えている。ブラウン率いる傭兵ギルドに同業者を紹介してもらい、護衛の人数も順次増やして行く事で話は進んでいるんだ。


「これで面接は、終了致します」


「ふぅ。それにしてもかなりの人数だったな。子供が来た時は、びっくりしたよ」


「沢田専務もびっくりしましたか。私もどう対処するか悩みましたよ」


「真面目な大塚君ならそうだろうな。私は即採用にしたよ。きっと家の為だろうからな」


「この街では、子供も充分な労働者なのですよね。現実を知ると考えさせられます」


 子供たちは、水を運ぶ人員として10名ほど雇用した。家族構成を確認すると母親が病弱であったり、父親を亡くした家庭が多かった。兄弟で来た子もいたが、その子たちは日替わりで参加するように諭した。家を守らないといけないからな。勿論、継続雇用も考えたが、いつ日本へ帰る事になるかわからない。急に俺達が居なくなると、困るのは目に見えているので保留だ。


 こうして街の人を雇う事になった俺達の元へ、ライアン男爵から連絡が入った。午後に屋敷に来て欲しいとの内容であった為、清水部長と俺の二人が向かう事になった。集金もあるから護衛の人数も多めに来てもらう事になる。



◇◇◇



「すまんな。急に呼び出す形になって」


「いえ、私達は大丈夫です。何かございましたでしょうか?」


「ああ。先ずはサダラ-ク公爵様の名刺の代金が準備出来た事。それに例の件について話がある」


「代金につきましては、帰りに頂きます。例の件というと?」


「うむ。2人は解っていると思うが、我々の争いで君達の身を危険に晒してしまった件だ」


「その事ですか。速水から王都へ向かう際の襲撃については聞いております」


「そうか。なら話は早い。私に入った情報では、ハ-モニック公爵派の動きは沈静化された」


「と言いますと、何かあったのでしょうか? 男爵を巻き込んでの襲撃までしておいて」


「それについては、心当たりがあるんじゃないか? 我々が居ない間に、そちらで何かあっただろう」


「と言いますと......そうか! もしやとは思いましたが、教会ですかな?」


「その通りだ。ハ-モニック公爵派は、ファリス教との確執を恐れたんだよ。私もそうだが教会と争う事は、国民や王家まで敵に回す可能性があるのでな」


「まさかそこまで影響力があるとは。日頃からこの街の教会とは、仲良くさせて頂いておりますが」


「それほどファリス教は影響力がある。今の関係を続ければ、君たちの身は保障されるだろうな」


「わかりました。今のお話、肝に銘じます」


 その話を聞き、俺は本当に驚いていた。直接聞いた訳では無かったが、マリアさんが中村さんに武勇伝の様に話していた事がそこまでの事だったとは。国内のファリス教の影響力を再認識したよ。普段のマリアさんとトミ-神父を見ていたら想像もできないけど、お土産をもって教会へ行かないとな。クリスタさんと子供達にも久しぶりに会いたい。男爵の話はそれ以上なかったので、代金を頂いて帰る事になった。その際、またまた名刺の発注を頂いた。すでに名刺の話は貴族中に伝わっているらしい。リストを見ると準男爵から士爵の方達まで幅広く注文を頂いている。関係が改善されれば、ハ-モニック公爵の派閥の方からも注文が入るかもしれないな。そうなれば名刺交換が貴族の常識になる日も近い。



◇◇◇



 その頃露店では......。


「くしゅん! 誰かが私の噂をしています!」


「ちょっとマリア! 鼻水垂らしてどうしたの? 風邪ひいたのかしら」


「違うよ? 私風邪なんてひいた事無いもの!」


「バカは風邪ひかないでごじゃる!」


「トミ-!!! 何か言いましたか?」


「な、なんでもありましぇん!!!」


 自身の影響力を微塵も感じさせない2人だった。今日もマイぺ-スな2人を、静香達は生暖かく見守っていたんだ。因みに露店では今、折り紙の販売をしている。カラフルな紙を使った折り紙は、子供達を中心に大変人気が出ている。作られる折り鶴等を実演販売しているんだ。徐々に浸透していく日本文化の次の一手は何になるのか? 来週の販売は......。

思わぬ形でファリス教の影響力知った。暫く何も無ければ良いんだけどなぁ。

事態が動くまでは、とにかく楽しく過ごそう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ