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社内会議その2

社内会議は続く

 社内会議は、過去の転移者の情報が入った事により様々な質問が交わされている。


「はい! 販売部の稲富(いなとみ)です。50年? という単位は何処から来ているんでしょうか?」


「その件は私、花崎からお答えします。中村、速水、田村、私の4名で文献を調査しその情報を照らし合わせた所、正確にではありませんが50年周期で転移者の情報が記載されておりました」


「俺からも良いだろうか? それでその転移者? と言われる人間は何をしたんだ?」


「岩本さん。詳細については纏めた物を今からお配りしますが、農業に関する物が多いです」


 そう言った花崎さんが、A4のコピー用紙を参加者に配る。昨日帰ってから作成したようだ。俺達が浮かれてみんなと騒いでいる間に、作成していたんだろう。頭が下がる思いだ。


「では皆さんも一度目を通してください。何か意見あればお願いします」


 しばらくの間皆が資料を確認していたが、ここで工房の来栖さんが手を挙げた。


「確認したがこの資料から見ると、現在はファリス歴400年で良いのか?」


「はい。それで間違いありません。私達で言う年号です」


「わかった。それで何だが、井戸の掘削や水車の作成、農機具まで作るとなるとある程度の知識人で無いと無理だろう。それも俺達に近い年代の人間じゃないのか?」


「その辺りの詳しい事が書かれていませんでした。この国であった事であれば、もっと詳細な情報を得ることが出来たと思うのですが......」


 皆思う事は同じだ。現代の知識があれば実現可能な範囲だからな。農法の切り替えも史実を知っていれば思いつくし、食品だってそうだ。であるならやはり気になるのは、直近の国の統一に手を貸した人物に興味が移る。手を挙げたのは、清水部長だ。


「農業や食品に関しては、想像の範囲で納得できる。気になるのは、このタオカ・ユキナリという人物だな。この人物に関しては如何なんだ?」


「それは私、中村からお話します。現在、サダラ-ク公爵様に情報を調べて貰っています。生存している可能性がありますし、50年前なら建物も残っていると思いますので」


「我々が調べると言うのは不可能なのか? 日本人である我々が見ればわかる事も多いと思うんだが」


「もし私達がハ-メリック帝国に赴くとなると、約2ヶ月の移動が必要になります。交通手段が、馬か徒歩になりますので」


 それを聞いた社員達は、唖然とした。2か月の距離とはどれ程なんだと。


「私からも補足します。この世界の交通手段はかなり遅れています。馬車もありますが、とても人を運ぶような構造ではありません。それに長距離の移動となれば、持っていく荷物も膨大になります。さらに言えば盗賊などが居ますので、生きて目的地に到着出来るかどうかも判断できません」


 まだこの世界についての情報が無かった社員達は、俺の発言で絶句した。しかしその中でも目を輝かせる人達も居るんだよ。うちの会社の社員には!


「何度もすまん。工房の来栖だ。それなら俺達で馬車の荷台を改造したらどうなんだ? こう言っては何だが、それぐらいならすぐにできるぞ? スプリングの構造だけ何とかすればな」


「それについては、今後の課題ですね。資材の調達も提携商会から入手可能ですし、今後行商人との繋がりも出来そうなので、人が乗れる馬車があればかなり売れると思います」


 一部が盛り上がる中、沢田専務が声を上げた。


「よし、その件については前向きに考えよう。我々も移動が速くなれば得るものは大きいだろう。情報は公爵様の返答を待つとして、まだ暫くはこの状態で頑張るしかないな」


「少し良いでしょうか。工場部門の蓮見です。全社員に聞いて欲しいのだが、実は水が不足しているんだ。

当たり前の事だが、給水タンクの水量がこのままではゼロになる」


「蓮見君。それは本当かね? 水を確保できないとなると生活に支障が出る」


「ええ。そこで何ですが、敷地内を掘削してみようかと思います。街の井戸が何箇所かある事を考えると、地下水脈が通っている可能性が高いと考えます。水源があるなら難しい作業でもありませんし」


 それを聞いた社員達から反論など出るはずもなく、全会一致で承認された。当たり前に水を使っていたが、水道など無い世界なんだ。そしてこの作業に、街の人間も雇う事が決まった。工房の人員も限られているし、何箇所も掘るとなると人手はいくらでも欲しい。明日の露店で街にチラシを配る事になった。一応面接をして人員の確保が出来次第工事は開始される。現状、後3日程で外壁のフェンスも取り付け完了するようなので、職人の方々には負担をかけてしまうが......。


 現状、転移者の件は時間がかかる。そこに新たな水の問題が出て来たが、生きる為の事なので最優先事項だろう。暫くの間は、水の購入(会社に運んでもらう)を依頼し社内での水の使用制限が決まった。


 この日の会議はここで終了し、翌日も同じ会議が行われたが現実的な意見は出なかった。公爵様からの情報が、待ち遠しい。

ここに来て水問題です。日本では水道が当たり前ですが、この世界の人々は井戸から汲み上げて運ぶのが普通。飲料水の確保もとても重要な事ですね。

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