表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/200

贈答品とこの世界の生活事情

この世界の生活水準は高くない。

 翌日のお昼時、リチャ-ド隊長と共に領主の館を訪れた。今回、同行するのはまず沢田専務だ。俺達の代表者であり頼れる人。そして営業部から俺(速水)と中村さん。 販売部からは、同期の田村と安田さん(女性)。 そして工場部門で品質管理を任されている、岡田さんの6名がメンバ-だ。




◇◇◇


 グランベルク領主の屋敷――


「お初にお目にかかります。私、()()()()()()()()の沢田 智紀と申します。此度はお時間をとって頂き、誠にありがとうございます」


「ふむ。聞いていた印象通り、肝が据わっている連中の様だな。私がこの街を治めているライアン・グランベルクだ。堅苦しいのは嫌いなので、この場はライアンで良い」


 こうして始まった会談。聞いたところによると俺達が転移して来た時に、この大陸でも地面が揺れたらしい。滅多にない事なので大騒ぎだったんだと。 揺れが収まってから落ち着いて領内を見回ったところ、昨日の朝に俺達の会社を発見して飛んできたらしい。


「ところで、株式会社とは何だね? 聞きなれない言葉だが」


「それについては、私たちの世界で使われている言葉ですので、そういう名前の商会だと考えて下さい」


 会社という概念が無いので、商会として認識してもらう。 先ずこの世界で株式のシステムは無い。領主に納税するのも畜産物や貨幣が一般的らしいんだ。 貨幣については、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨の4種類が使われている。(レ-トについては、後述で記述する)


 色々とこの世界の常識を確認すると、俺達の世界の中世が一番近いだろう。昨日、田村と話していた内容と一致したので、準備した贈答品を渡すことにした。



「私は、営業部の速水と申します。お近づきの印にこの様な物を持参いたしました」


 そこで俺が差し出した物とは? そう小難しいものじゃない。木製の食器とスプ-ンやフォ-ク。それに名刺用の台紙だ。領主のライアンさんが、俺達の差し出した名刺にとても驚かれていた。 それもそのはず、この世界では羊皮紙が主流であり、名刺に使われているような紙は存在しない。なので台紙と一緒に鉛筆もプレゼントした。


 事前に工房のスタッフからの助言で、鉛筆なら作れるはずだと聞いている。 鉛筆の原材料になるのは、黒鉛・粘土・水そして木材。炉も1000℃から1200℃だから木炭でも代用できるらしいのだ。


 あとは鉱物の情報などもライアンさんから色々聞ききたいところだ。


「この台紙にライアン様の貴族位とお名前を書いて頂ければ、私たちの物と同様に作成する事が出来ます」


「なんと!! それはありがたい! これがあれば、他の貴族に自慢できるぞ!」


 話す事は出来るし、この世界の言語で書かれた文字も読める。しかし俺達はこの世界の文字を書けない。そこでライアンさんに頼んで文字を教えてもらう事になった。


 食べる為の商売をしなければならないし、文字を覚える事は必須項目だ。この後、鉱物の話や商売の許可等、まだまだ詰めないといけない事柄が非常に多い。


 そこで日を改めてもう一度集まる事になった。その時に出来上がった名刺を持ってくる約束もしたんだ。うちの技術スタッフなら何とかしてくれるはずだ。多分......。


 何故、木製の食器とスプ-ン・フォ-クだったかと言うと、この世界の食事は手で食べてるんだ。これも確認したから間違いない。これを教えてくれたのも田村なんだが。


「ラノベとかで、貴族の食事が豪華とか言うのは大間違いや! 中世ぐらいの生活水準なら手づかみのはずや!」


 って熱弁してたからさ。因みにこれも会談の後、皆で食事を振舞って貰ったんで実証されたよ。大皿で出て来た料理を手づかみで食べると仰ったので、試しに使い方を教えながら、贈答したスプ-ンとフォ-クで食べてもらったら、めちゃくちゃ喜ばれた。


 徐々にでもこの世界で流通出来れば良いんだが、それには時間が必要だ。ここは営業部と販売部の腕の見せ所。食事が終わった後、今日は解散になったので、帰りに街の中を散策する許可をもらった。 念の為、リチャード隊長の監視付きだけどね。




◇◇◇




「ひゃー。あの服見てみいな、繊維も貴重品なんやろか?」


「田村、声デカいよ。めっちゃ見られてるぞ!」


「おお、すまんすまん。しかしホンマに異世界来とんねんなぁ、俺達。魔法やなんや便利な世界やと思ってたらエライ目に遭うとこやった」


「うーん。そうだなぁ、生活水準は、お世辞にも良さそうに見えないな」


「速水君、ちょっとあの服屋さん見てもいい? 安田さんも見てみたいって」


「中村さん、良いですよ。それじゃあ、リチャードさんに二人の護衛を頼みます」


「リチャードさん。申し訳ないですが、お願いします」


「ああ、わかった。君たちは、どうするんだね?」


「すぐ近くの、金物売っているお店関係を見てます。見たらそちらに行きますんで」


 そう言って、俺達は分かれて散策する事になった。岡田さんが、製品を見たくてうずうずしてたんだよ。作るにしてもどの程度の品質か確認したかったんだって。3時間ほど街の中を廻ってから会社に戻った。


 名刺に関しては、2日で100枚作られた。恐るべし工房の職人たちだった―――

貨幣レ-トは、

鉄貨⇒100円

銅貨⇒1000円

銀貨⇒10000円

金貨⇒100000円

日本円で大体こんな感じです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] だんだん思い出してきました。 生活様式の違いに着目して状況を打開していこうとするところがとても面白いです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ