王都到着~公爵との会談 後編
公爵との会談の始まりです。
そして始まった公爵との会談。まずは、俺から1つ目の案を話す。
「まず、公爵閣下にお願いしたいのは、時間という概念を植え付けて頂きたいのです。これまでこの国では、太陽の位置や教会が毎日鳴らす鐘の音で大雑把な時間を計っていたはずです」
「うむ。確かにその通りだ。それで? どういう風に時間を把握するのだ?」
「ここに時計という物を用意致しました。1日を24時間で区切り表す事に用います」
「ふむ、この表面に書いてある数字が時間を表すのか。これを周知させる事で何が生まれるのだ?」
「時間という物の有用性は言葉だけでは表せません。今までは大体これぐらいの時という曖昧な範囲でしか決められなかったものを、これからは決まった時間単位で出来るのです。無駄を省く事で新たな可能性が生まれてきます」
時間という単位が生まれる事で、規律が生まれ様々な分野に影響を与える事が出来る。まずは此処から始めたい。その説明を終えると、次は田村にバトンタッチだ。
「次は、私から説明致しますね。1つの例としてこの時計ちゅうのは、部品が多く使われてますのや。そこでこの部品を作る過程で、多くの職人を必要としてきます。必然的に雇用が生まれますのや」
「ふむ。産業を興すという事だな。確かに複雑な構造物を作る為には、優秀な人材が必要になるな」
「まぁ時計の部品だけやなく働く人が多くなれば、それだけ消費される物も多くなりますのや」
「活性化とは、そういう事かね?」
ここで、安田さんに交代した。
「それだけではありませんよ閣下。そこに閣下達のお力添えがあればもっと広がって行きます」
「力添えとはどういう事だね?」
「そうですね。民衆の考え方を変える為に、力を貸して頂きたいです。そして私が提案するのは、女性の力です」
「女性の力? どういったものだね?」
「女性が働く環境を整える事から始めて頂きたいです。女性だから輝ける職業もあるのですよ」
「女性が輝く? そう言った話は、フロ-ラが喜びそうだな」
そこから女性をタ-ゲットにした職業を説明していく。そこに係わる産業によってどれ程の利益が生まれて来るのか? そして俺達の会社の保有する様々な商品を国内で販売し、新たな商品開発を行う事などを話した。次々に出て来るアイデアに公爵も興味津々だった。一息ついた時に相手が公爵閣下だからこそ、俺が聞いておきたいことを伺った。
「私達はこちらの世界の住民ではありませんので、意見を言う立場では無いと思っていますが、公爵閣下にお伺いしたい事があります」
「何だね。なんでも聞いてもらって構わないよ」
「貴族の立場からみた一般市民の生活についてどう思いますか? ご自身が裕福であればそれで構わないとお考えでしょうか?」
この言葉に部屋の空気が変わる。田村や中村さん達でさえ頭を抱えていた。
「ふむ。それを私に聞くとは面白いな君は。速水君と言ったか、私は公爵家に生まれたから特別であった。だからと言って、民がどうなっても良いとは思っていない。彼らがちゃんと生きて税を払ってくれなければ、私達は生活できないんだよ」
「失礼な発言をお詫びいたします。それを聞いておかないと、これから私達が行う商売に対して賛同いただけないと思いまして」
「君の考える商売とは何なんだね?」
「皆が潤う形を作る事ですね。勿論、領地の整備にお金も掛かります。ですが納める側が搾取されるだけでは、決して領地は豊かになりません。人も財産なのです。そこを理解して頂ければ、私達の案から生まれる国の活性化が見えてくるはずです」
別にカッコいい事を言うつもりは無い。この世界に来てグランベルクの街で見た多くの人の目は、とても幸せそうには見えなかった。日々生きる事だけに追われ何も感じない。そんな生活が楽しいはずがない。だから俺は思ったんだ。大きな事は出来ないしそんな力は無いけど、1人では到底変える事の出来ない事柄でも皆で力を合わせれば変える事は出来る。それを始める為の道筋なら作れるんじゃないかと。
「君の事が気に入ったよ。正直に話が出来る事は素晴らしいな。私の近くにいる人間は、私の顔色を窺いお世辞で塗り固めた言葉しか言わない。いつしかそれに慣れてしまっていたようだ」
「いえ、公爵閣下に対して失礼な発言をしましたので、実は冷や冷やしておりました」
「ハハハハ。良いのだ。もっとその計画を聞かせてくれ」
そして終わらない会談に様子を見に来た公爵夫人達も参加して、その後も色々な話が繰り返された。特に女性の産業についての話は、フロ-ラ夫人が熱心に聞き入っていたよ。かなりの長時間話をしていたので、夕食までご馳走になってしまった。そのまま泊まって行くように言われたのだが、王都で調べ物もしたいので丁重にお断りして男爵の屋敷に帰った。男爵も心配していたようで、屋敷に帰ると色々と聞かれたよ。夜も更けてきたので解散したけどね。明日は王立図書館へ行く予定にしているんだが、どうもすぐには王都から帰れそうもないな。
すぐに受け入れられる物も少ない。新しい事を始めるには戸惑いもある。貴族の賛同を得る所から商売は始まっているのです。次話は、過去の転移者達? でございます。




