王都到着~公爵との会談 前編
やっと王都に到着。さて公爵はどの様な人物なのか?
翌日、早めに街を出発した俺達は、お昼前に王都に到着した。貴族専用門から入った為、長い行列に並ぶ事は無かった。こういう時は、特権の有難みを感じますな。
「速水、やっと着いたで。3日程度の距離を完全に舐めてたわいな」
「そうだな。歩いてみないと分からないもんだなぁ。これからは、運動もしないと」
「運動は堪忍や! 遠出はもう堪忍してほしい」
「速水君。お疲れさまでした。身体大丈夫?」
「中村さん。何とか大丈夫ですよ。そちらも大丈夫ですか? 慣れない馬に乗っての旅でしたが?」
「ええ、私は大丈夫。愛と美樹がちょっと酔ったぐらいかしらね」
「あら、静香。私を忘れてませんか?」
「千鶴。 忘れてないわよ。何か棘のある言い方ね?」
「ふふふ、イチャイチャを邪魔したい訳じゃないから安心しなさいな」
「もう! またそんな事言って」 「でも見えますもんねぇ」「そうだ! そうだ!」
「あら、愛と美樹は大丈夫なの? だいぶ酔ってたみたいだけど?」
「私は、大丈夫です。馬酔い? なんて初めてでしたが、さすがにもう慣れました」
「倉木さん! 大丈夫なんでっか?」「ありがとう。田村君こそ大丈夫そうで良かったわ」
「なんか、私だけ出遅れ感が……。誰か心配してください!」
「ははは。美樹ってあんまり目立たないもんね。販売部なのに……」
ここまで目立つ事の無かった販売部の安田 美樹。ここから出番を増やさないと! と闘志を燃やした。 王都に到着してすぐに公爵邸へと向かうのかと思っていたが、会談は明日になるそうだ。今日はライアン男爵の王都にある屋敷で疲れを取って、明日のお昼に公爵の屋敷に向かう予定となった。俺達も疲れていたし、落ち着いて休憩できれば身体も休まるだろう。男爵の屋敷に到着した後は、与えられた部屋で少し休憩し、昼食を食べてから会社の仲間達と集まった。明日の会談の為の打ち合わせだ。
「とりあえず明日の会談時の贈り物は、当初の予定通りよね」
「ええ。中村さん達は、夫人用に用意されてるんですよね?」
「そうよ、静香だけじゃなく私達で考えたからね」
「花崎さん、何か怒ってませんか?」
「そんな事ないわよ。速水君……」
ちょっと怖い雰囲気も感じながらも、明日の打ち合わせは続いた。女性ならではのアイデアや田村が場を和ませる事で、楽しい時間はあっという間に過ぎて行った。さぁ、準備完了です。
◇◇◇
翌日、護衛の方に案内されながら公爵邸へ向かった俺達は、目の前の大きな屋敷にため息をつく。
「なんやこのデカい屋敷は! どっかのお城ちゃうんか?」
「……ま、まぁ確かにデカいな。日本でもここまでの屋敷は見た事ないかも」
門の守衛にクラ-ク伯爵からの手紙を渡し暫く待っていると、執事と思われる人がやって来た。
「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
後に続き屋敷内に入ると応接室に通された。そこで10分程待っていた所、部屋がノックされた。
コンコン。「失礼します。サダラ-ク公爵閣下のご準備が出来ましたのでご案内します」
◇◇◇
執務室と思われる場所に案内された俺達は、相手の合図を待って入室した。
「失礼致します。私、信頼雑貨株式会社の速水 慎一と申します」
「同じく、信頼雑貨株式会社の中村 静香です」
「同じく、田村 篤です」「安田 美樹です」「花崎 千鶴です」「倉木 愛です」
「私が、ジョルジュ・サダラ-クだ。君達の事は、クラ-ク卿やグランベルク卿から聞いておる」
温和な感じを受けるその男性は口ひげを蓄え、やわかな微笑を浮かべながら俺達を迎えた。既にソファ-には夫人と思われる女性と少年、少女が1人づつ座っていた。俺達はそちらに行き、もう一度挨拶をした。夫人は、フロ-ラ様で、少年がご子息のジョ-ジ様。少女がご息女のアリシア様。想像していた厳格な感じではなく、見た目の印象通りの方々に思えた。俺達の差し出した名刺に興味津々なご様子だったので、早速贈答の品を手渡した。
「こちらは、公爵閣下の名刺になります。品質的にも最上級の品物になります」
「おお! これがクラ-クの奴が言っておった名刺なのだな。この上質な紙、それに豪華な箱。これは、貴族の品格を表すものとして有用だな」
「そう言って頂けると、安心致しました。本日はお名刺以外にも、数点の贈り物をご用意致しております。どうぞ手に取ってお確かめ下さい」
俺と田村が公爵に品物を渡している間に、中村さん達が夫人に贈り物を渡していた。しばらくの時間贈り物に対する質問等で盛り上がっていたが、落ち着いたところで真面目な話をする。
「そろそろ、こちらの話もしようか?」
「はい。そうですね。私達もこれからの事がありますので、きちんとお話したいと思います」
それを合図に夫人とご子息たちは一旦別室に移動された。送った品物は執事の方が持って行かれたので、別室の方で楽しまれるのであろう。
「まずは色々とこちらの思惑とは違い、危険な目に合わせてしまった事を謝罪しよう」
「いえ、その件はグランベルク卿からも謝罪を受けていますので」
「うむ。色々と知った上でこちらと協力できるのか?」
「はい。出来れば公爵閣下のお力もお借りして、国全体を活性化したいと思っています」
「活性化? それはどういう意味だね。それだけの力があると言っているのか?」
「ええ。私達にはこの国を活性化させるだけの知恵があります。ただしそれには、皆さんのお力を借りなければなりません」
「知恵とな、面白い! 興味が出て来たな。是非ともその知恵とやらを聞きたい」
「勿論、そのつもりでこちらに参っております」
こうして公爵との話が始まった。貴族を巻き込み国を活性化する案とは何か……。
この後、夕食時まで続く長い話になるとは、思ってもいなかったよ。
速水たちの考える案とは何か? 次話へ続きます。




