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貴族達の思惑

貴族達の本音……

 バーンの街に着いた後は、この街を治めるル-イック士爵の屋敷に案内された。極度の緊張状態から解放された俺達は、暫しの休憩を挟み食事の席に着いた。そこには士爵とその関係者が集められていた。本来ならクラ-ク伯爵もこの場に来る予定だったらしいが、目立つことを恐れ断念したと説明があった。


「商会の皆にまず、謝らねばならぬ。此度の襲撃は、私達の争いが発端なのだ。生命の危険を感じさせてしまい申し訳ない」


「待ってくださいライアン殿、男爵位の貴族がそう軽々頭を下げるものではありません」


「いや良いのだ、ル-イック殿。彼らは、私達の国の事は理解できないだろう。巻き込んだのは間違いないのだ」


 そう言って深く頭を下げるライアン男爵に、俺が代表して声を掛けた。


「頭をお上げになって下さい。確かに私達は何も知らされていない状態でしたが、ライアン男爵より他の貴族の横やりが入るかも知れない、と言う注意も受け取っていました。少し私達の認識が甘かった部分もあります」


「そう言ってくれるとありがたい。だがそれだけでは無いのだ。此度の件、貴族の争い以外に1つの要因があるのだよ」


「要因でございますか? それは私達に関係があるのでしょうか?」


「うむ。察しが良い様だな。如何にもそなた達の存在が、この争いを大きくしている」


「という事は、私達が異世界の人間だという理由ですね。もしかして私達と同じような存在が、過去に居たのでしょうか?」


「そう考えてもらって間違いない。この国では別の世界から突然現れる人々を幸運の君(ラッキ-ロ-ド)と呼んでいる。何故なら過去色々な国に現れた異邦人達は、その国に豊かな財を生みだしたと言われているからだ」


「その辺りの話は、知りませんでした。ライアン男爵はそれを知っていて、我々に黙っていたという事でしょうか?」


「すまない。当初は、眉唾な話だと思っていたのだ。あの建物や君達から贈ってもらった品を見るまでは。私は、君達の存在についてクラ-ク伯爵に相談した。クラ-ク伯爵自身も当初は信用していなかったんだ。だがあの名刺を見て、噂を信じるようになったのだ」


「なるほど。それでクラ-ク伯爵は、派閥の長であるサダラ-ク公爵に進言したのですね。我々の力を利用する為に」


「君達の力を私達が取り込む事で、国での立場を優位にしておきたかったのだ。しかし君達の生命を危険に晒す気は無かった、という事だけは信用して欲しい」


「わかりました。力を貸すことは、お世話になったライアン男爵の為なら問題ありません。但し私達はあくまでも商売人であり、武力も特別な力も持ち合わせていません。その事はこれからお会いするサダラ-ク公爵様にもお話はするつもりです」


「うむ。それは理解しているつもりだ。君達には武力ではない特別な力を感じているんだ。他の勢力も君達を調べ始めているはずだしな。今回の様に力ずくで奪おうとする勢力も出て来たぐらいだ」


「そういう事なら、街に残っている商会の仲間も心配ですね。何もなければ良いんですが」


「街の方の警備は、増員してある。マリアンヌも君達を気に入ったようだしな。上手くやるはずだ」




◇◇◇




 速水たちが出発した次の日、会社の門で騒ぎが起こっていた。


「ですから要件を確認しなければ、建物内に入る事を許可できません」


「何だと! だからレオナルド男爵の使者だと申しておるだろうが! 貴様ではらちが明かぬ! そこをどけ!」


「おっと、武力を行使されるのなら、街の衛兵も黙っておりませんよ。こちらの警備には、ライアン男爵のご指示も御座いますので」


「ええーい! 通さぬか!」 「なりませぬ!」 


「はいは-い! そこまでですよ! ここは、私達、ファリス教グランベルク教会と契約しております。ファリス教と争うおつもりなんでしょうか? レオナルド男爵は?」


「喧嘩売ってるんか-いでござるよ!」


「な、なんだと⁈ ファリス教? 何故ファリス教のシスタ-と神父が……。これは指示を仰がねば!」


 そう言って騒ぎを起こした男は帰って行った。仁王立ちで満面の笑みを浮かべるマリアさんと得意げな顔のトミ-神父。意外な人物が役に立った瞬間である。



「留守は、任されたのよ! 静香達が帰ってきたら自慢するんだから!」


「何だかわからないけど、早くご飯行こうよ! マリア!」




◇◇◇




 貴族たちの思惑としては、富を呼ぶと言われる異世界人を囲い込んで自身の影響力を上げたい。その為には手段も選ばないと言ったところか。武力に対しては無力な俺達だが、何も武力だけが力じゃない。ここで俺達の商売の力を見せる時だね。皆の顔を見ると俺と同じことを考えているんだろう。襲撃に怯えていた時とは違い、これからの行動を頭に描きシュミレ-ションしているみたいだ。やられっぱなしは性に合わない。こうなったら国と貴族を巻き込んで、みんなが笑顔になれるように策を練ろう。その前に王都で過去に現れた異世界人の事を調べないといけないな。帰るヒントもあるかもしれないし。明日は、公爵との会談がある。まずは、そこで営業だ!

過去に異世界人が来ているとなると帰るヒントも見つかるのだろうか?


貴族に対して速水たちの出す策とは?

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