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王都までの道のり(1日目)

いよいよ王都に向かいます。

 人選も終わり、名刺が出来上がったという報告が工房から入った。公爵だけでなく侯爵、子爵の分も既に作成したようだ。本当に偶然だったようだが、台紙も5種類あったらしい。1回渡したら暫く無くならないだろうし、在庫を気にする必要性は感じない。清水部長がライアン男爵に報告を上げた所、明日の朝、王都へ出発する事になった。約3日間の旅になるが、野営の予定は無いそうだ。王都までに3つの街があり、そこに泊まる事になる。


「おう、速水。向かう準備出来たんかいな?」


「ああ。特に準備と言ってもなぁ。俺達は歩くことになるから、動きやすい服装にしようかと思ってる」


「そやなぁ。ワイは体力に自信あれへんけど、馬車に乗って気分悪なるんは勘弁やしな」


「まぁ、とにかく街に到着するまでの我慢だからな。男爵と女性陣は馬での移動だから仕方ないさ」


 この世界では、馬車は荷物を運ぶ為にある。貴族によっては移動に使う事もあるようだが、動く度に振動が身体を襲い、とてもじゃないが乗っていられない様だ。人の移動は、徒歩か馬に乗るのが常識らしい。王都までの移動に馬をお借りするのだが、女性陣が乗る頭数しか残っていなかった。護衛の女性にうちの女性達を1人づつ乗せてもらう事にし、俺と田村は予定通り徒歩での移動になる。荷物もないし何とかなるはずだ。



◇◇◇




「千鶴、王都までの準備出来た?」


「静香、準備って言ってもねぇ。贈り物は準備出来ているし、私達の衣類ぐらいかしらね」


「そうなんだけど、やっぱりどうしてもこの世界の衣類は合わないのよ」


「まぁ、仕方ないわよね。貴族の女性みたいにドレスでも着てみる?」


「あれは、無理よ。腰のコルセットなんて苦しそうだもの。奇麗ではあるけどね」


「ふふふ、速水君に着飾った姿見せなくても良いの?」


「もう! 千鶴ったら/// これでも毎日頑張ってお手入れしてるんだからね」


「冗談よ、冗談。私だって身だしなみには気を使っているもの」


「ああー! 静香と千鶴発見した! 明日から居なくなるの寂しいよぉ-!」


「マリア、居なくなると言っても帰って来るわよ。寂しいって言われると嬉しいけど」


「そうよ、マリアさん。まだ王都での滞在日数がはっきりしてないけど、ちゃんと帰って来るわ」


「ぶーぶー、居ない間は誰に相手してもらったら良いのよ? 静香に千鶴、愛と美樹まで行っちゃうんでしょ?」


「そう言えばマリアって、私達以外はあまり喋って無かったわね。よしっ! 今から女子の所行くよ-!」


「「おおー!」」 (何なの? このテンション?……)



◇◇◇



 そして翌日の朝、会社の人間に見送られながら王都へ向け出発した。俺や田村等の徒歩チ-ムは、少し早めに出発していた。念の為、俺達にも護衛の人間が付いている。ライアン男爵やうちの女性達は馬に跨りゆったりとしたぺ-スで、シルバという街に向かっている。日頃から営業で歩いている俺はまだ大丈夫だったが、碌に運動していない田村はバテバテだった。歩けそうに無い時は馬車に乗せてもらったようだが、その揺れに耐えられず青い顔で外に出て来た。申し訳ないが、その顔を見て吹き出してしまったよ。1日目は特にトラブルも無く、シルバの街に到着した。ライアン男爵と仲の良いスコット準男爵が治めている街である為、宿泊場所も用意されていた。俺達はとても疲れていたが、食事の用意もして頂いたので頑張って最後まで参加した。スコット準男爵は、とても人当たりの良い方だった。ライアン男爵とは王都の学院で同期だったので、その頃からよく遊んだなんて話を楽しそうにされていたよ。何とか眠らずに用意された部屋に入った途端、意識を失うように寝た。


 翌朝は思ったより睡眠が取れていたのか、気持ちよく目が覚めた。隣を見ると田村が腹出して寝ていたよ。もうしばらく寝かしてやりたかったが、皆が起き始める時間だったので揺り起こした。


「おい! そろそろ起きないと朝飯も食べずに出発する事になるぞ!」


「速水、後生や! もうちょっとだけ寝さしてぇなぁ」


「はいはい。さっさと起きろ。まだ2日目なんだからさ」


 無理やり起こした田村と共に食堂へ入ると、女性陣は既に座っていた。


「皆さん、おはようございます」


「速水君、田村君、おはよう。良く寝れたのかしら? 田村君はまだ眠そうだね?」


「中村さん、田村の事は触れないで良いですよ。ただの運動不足ですから」


「ふふふ、そうなの? そういう速水君は大丈夫なのね」


「ええ、これでも体力には自信あるんですよ」


「あらあら、朝からイチャイチャしないでもらえるかしら?」


「ちょっと千鶴! 何言ってるのよ!」


「でもさっきの雰囲気は、そう見えなくもなかったですよ?」「同じくそう見えたかも?」


「もう! 愛と美樹まで何言ってるの? 速水君がビックリしてるじゃない!」


 ここはあえて触れない様にしなければ、自分の顔が熱い事は自覚している。話題を変えようとした時、空気の読めない男が覚醒した。


「速水は、中村さん一筋でんがな。いっつも盗み見しとりますよ! ははは!」


「ちょ、お前何言っちゃってくれてんの⁈」


 田村の腕を取りその場を離れた。こいつはたぶん、良かれと思ってやっているんだろう。だが、皆の前で言うなっての! 恥ずかしくて火を拭きそうだ。結局そのままうやむやにして、次の街に出発する時間になった。田村は、「まぁまぁ、ええ機会やないか」とか言ってたけど、俺は怒ってるんだからな。この旅の間に絶対やり返す事を誓った。次の街は、フィリップス。さてどんな街なんだろうか……。






馬車で楽ちんな旅など夢だったのだ-! 実際1日歩くと中々しんどいですよ。

王都まであと約2日。

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― 新着の感想 ―
[一言] 楽しい作品ですね。 レビューが多いのも頷けます。 勧めたくなる作品だもの。 こういうテイストの異世界ものも良いですね。 会社員ってすごいんだぞ、って思えますもの。
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