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会社ごと異世界に転移してしまったが、うちの社員は商売上手だった件  作者: 早寝早起き
変化する国々編(ハーメリック~ファインブル・グ-テモルゲン)
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ある日の出来事

結婚式も終わったんだけど。

 無事に? 結婚式を終えた俺と静香さん。だがこれと言って変わった事は無い。


 未だ続くファインブル王国の改革もあるし、まだグ-テモルゲン王国も残っている。


 仲間達は新婚旅行に行って来いと言ってくれたんだが、俺達は辞退した。


 そりゃあ俺だって甘い時間も考えたけどさ。旅行なんかは元の世界に帰ってからでも良いし、それよりも早く帰りたい社員も多いからさ。


「ほんまによかったんか?」


「ああ。静香さんも納得済みだよ」


「それならええけどな。外国に旅行してるんと変わらへんとは思うしな」


「だろ? どの国に行っても知らない国だしさ。もっと言えば言葉が通じる外国なんて無いし」


 田村に気を使われるとは思わなかったが、こいつなりに慰めてくれてるんだろう。


 肝心の改革や工事の進捗の方は、レジャーランドの建設はあったものの遅れは出ていない。


 ここ数ヶ月中にはファインブル全土の道路工事も終わる予定だ。


 この国ならではの出来事と言えば、新たに医学の研究室が出来た事だろうか。


 俺達の知りうる知識を参考に細菌研究もされるようになったし、これまでに治らないと言われた病気についてもかなり調べられている。


 そして一般の国民からも、その新たな機関へ人員の登用がなされる予定なんだよ。


 今まで訪問した国もそうだったが、この件でも一部の貴族たちの反発はあった。


 しかしエルミナ教の後押しもあり、その声も抑えられたんだ。


 これには女神エルミナの権能が関係している。『才能』を探し出す意味でも多くの国民に機会が与えられるべきだからだ。


「国民学校と職業訓練校の他に専門学校が出来た様なもんやな!」


「あはは。まぁそう言って間違いは無いだろうな。病についてはどの国でも原因を調べたいだろうし」


「『風邪』でさえ人は亡くなるもんなぁ。その原因が『ウィルス』とか想像もでけへんやろうし」


「俺達はそれが当たり前の世界で育って来たからな。誰かがその原因を研究したからなんだけど」


「物事を調べるならこの国が一番なんやろ?」


「そうだなぁ。この国は色々な事に研究熱心なのは間違いない。それでも一般国民はこれからだけどな」


「その中に一握りの天才が眠ってるかも知れんなぁ。俺には無理やけど」


「ああ。その可能性はあるよ。きっと何年かしたら医学が発展するんじゃないかな」


 そんな話をしながらこの世界の何十年後かを想像する。


 きっと出て来た一握りの天才が明るい未来を築いてくれるだろう。


 その為の仕組み作りのお手伝いが俺達の役割だと思っているしね。






◇◇◇






 速水達がそんな会話をしている頃、静香とマリアは国民学校にいた。


 マリアのお願いに静香が付き添っていたんだが......


「こらぁああ! 授業中の飲食は禁止ぃ-!」


「ふぁ、ふぁい。すみまふぇん」


「ちょっとマリア。貴女が怒られてどうするのよ」


 何故か住民と一緒に授業を受けている二人。見学するより授業を受けてみようとマリアが言い出したのだ。


 しかしそこはマイぺ-スなマリア。街で買った屋台の串肉を豪快に食べていた。


 アハハハ!


 このやり取りの間、教室中で笑いを堪えていた生徒達。教師が注意した瞬間、それは決壊した。


「はぁ。もう恥ずかしいやらなんやら」


「え? どうしたの? 静香もお腹空いた?」


 教師役の教会関係者もそんなマリアを見て、笑ってしまっていた。


 しかしこの事で教室内の空気は柔らかい物になり、いつも以上に授業がはかどったのだった。


 狙ってやったわけではないが、マリアの謎効果である。


 そんな授業の後、マリアと静香は教師からお礼を言われた。


「本日はありがとうございました。私もあのような雰囲気を作れるように頑張ります!」


「え? まぁ頑張って!」


「ちょっとマリアったら! すみません。ご迷惑をお掛けしました!」


 少し恥ずかしくなった静香はマリアの腕を引っ張り学校を後にする。


 マリアは訳も分からずドナドナされて行ったとさ。







◇◇◇






 所変わってここは職業訓練校。ここには品質管理部門の岡田と間宮が教師として来ていた。


「岡田先生! このインクの色はどうやって作ってるんですか?」


「ああ。その色は紫陽花の花からだなぁ......」


「間宮先生! この電池について質問が!」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 先生と言う響きは二人をやる気にさせているんだが、如何せん生徒がとても多い。


 お国柄と言うか、何と言うか。この国の国民は勤勉なんだ。


 授業では紙の製造や色素の抽出、はたまた電池作成等教える内容も幅広い。


 その為、同時に何種類かの授業を受け持っているのだ。


「はぁ。岡田さん、応援っていつ来るんでしたっけ?」


「間宮、間もなくだ。アルメリアからの応援が明日ぐらいには」


「教えるって大変ですね」


「そ、そうだな。俺の想像以上に人数が多かったからな」


 今回の開発に協力的なアルメリア王国から、職業訓練校の卒業生を講師として呼んだんだ。


 ここの卒業生も将来講師として他国へ行く者が出て来るのかも知れない。


 そんな姿を想像しながら、忙しく授業をこなす二人だった。


 



 そんな岡田や間宮の居る建物の別棟では、鉄や硫黄の製錬や加工についても授業が行われている。


 鉄関係はうちの工場部門の職人たちが教えているんだ。


「安藤さん。火入れ完了しました!」


「おう。そしたら次の行程に移ろうか」


 安藤が教えているのは製錬だ。鉱石から金属を取り出す工程を教えている。


 質の良いものを作る為にこの作業は欠かせない。特にこの国で取れる硫黄は溶融による不純物の除去が必要なため、この技術を習得する者が多い。


 ここで技術を習得した後に、鉱山にある製錬所への職業斡旋も既に決まっているのだった。


 また貴金属などもこの技術によって、より高品質な品物が登場する事になる―――



 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 尚、製錬にはいくつかの種類があり、この学校では主に乾式製錬を教えている。


 簡単に説明すると、炉を用いて鉱石を融解し目的の金属を得る方法だ。


 鉱石自体を熱して、液状にして取り出す溶融製錬、ガス状になった金属を冷却して液化・昇華させる蒸留製錬も含まれる。



ファインブル王国での活動も間もなく終わる。


そしてこの物語を終盤に向かいます。

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