レジャーランド
計画から更に4ヶ月が経過した頃、とうとうファインブル王国に複合レジャー施設が誕生した。
その名も〝ジュノ-の楽園〟。
何故この名前に? と思うのは俺を含めてほぼ全員が思う事だろう。
「しかしこの名前で決まってしもうたんやなぁ」
「ああ。まさか国王まで賛成するとは思って無かったよ」
そうこの名前の許可は、ファインブル王国の国王であるミゼロ・ファインブルの一声で決まった。
まぁマリアさんを推すエルミナ教のミ-ガン様がごり押したと言われているが。
「ジュノ-教の布教の一貫としてやったっけ?」
「そうそう。俺は女神の楽園とかで良かったんじゃ無いかと思うけどな」
今俺と田村は中央プ-ルの一角で話をしている。こんな会話をしながら女性陣待ちなんだよ。
施設の開放前にプ-ルで遊ばせて貰えるんだ! それも楽しみだが静香さんの水着姿が見れる!
「速水。お前気持ち悪い顔してんで?」
「ぐっ! お、お前も顔がにやけてるだろうが!」
アハハハ♪
そんな俺達に華やかな声が聞こえて来た。あの笑い声はマリアさんだな。
そして現れる女神たち! 何と言う事でしょう! まさしく女神たちだ!
「ちょっと。速水さんも田村さんも目が怖い!」
安田さんの鋭い突っ込みが入るが、俺の目は静香さんに釘付けだった。
静香さんはピンクのビキニタイプの水着で、めちゃくちゃスタイルが際立っている。
「は、速水君。ど、どうかしら?」
「さ、最高です! もう女神としか言いようがありません!」
そんな俺の言葉に真っ赤な顔して下を向く静香さん。あはは。直球過ぎました?
「はいはい。直ぐにイチャイチャしないでください!」
安田さんはミドリのビキニに下はパレオを撒いている。健康的な感じだな。
俺と静香さんも正気を取り戻し、とりあえずプ-ルを楽しむ事にした。
田村と倉木さんはいち早く、プ-ル中央にある大型スライダ-へ一直線だったよ。
このプ-ルは中央にスライダ-(滑り台)。その周囲に流れるプ-ルだ。その他にも人工的に波が起こるプ-ルや子供専用プ-ルもある。
「こうしてみると日本にあったプ-ルと変わりありませんね」
「そうね。でも木製って腐ったりしないのかしら?」
「木材に木質タ-ルが塗ってあって、その点は大丈夫みたいですよ。それに構造物は鉄筋ですから」
この施設に使われている遊具は、鉄の上に木材が使ってあるんだ。その為倒壊は心配ない。
まぁ年数が経てば建て替えなんかも必要になるだろうけど。プ-ルはコンクリ-トだ。
危険防止の為に徹底的に角部分は研磨されてるし、危険な場所には緩衝材も使っているらしい。
「速水君。詳しいじゃない。蓮見さんに聞いたの?」
「花崎さん。そ、そうです!」
俺と静香さんの会話に入って来た花崎さん。黒のビキニが似合いすぎて、目のやり場に困る。
そんな俺の様子に何故かニンマリしてる花崎さん。ちょっと静香さんの視線が痛い。
そして辿り着いた大型スライダ-。まだ名称は募集中だそうだ。
◇◇◇
「お? ようやくお出ましか」「遅い!」「あんまり待たせんなよな」
「あれ? 蓮見さんに来栖さん。それに安藤さんまで」
俺達を待っていたのは工場部門の3人だった。来ているのは知っていたが、とっくに遊んでいると思っていた。
「せっかくだから、この施設の説明をしようと思ってな」
「ありがとうございます。それにしてもかなり大きな施設になりましたね」
「ああ。はっきりいってやり過ぎた。俺も含めこだわりだしたらキリが無いんだ」
ちょと申し訳なさそうに言う蓮見さん。その隣では来栖さんと安藤さんも苦笑いだ。
蓮見さんがこう言うのには訳があって、本来の工期をひと月伸ばしたんだよね。
「まぁ手を抜いた箇所はないからな。安全面も楽しめる場所も多い」
「ははは。このスライダ-も難しかったんじゃないですか?」
「ああ。繋ぎも難しいが、一番気を使ったのは肌が触れる場所だな」
この世界でこのグルグル回るスライダ-は難しいだろう。流石はうちの職人ってところだな。
しかし滑り台の肌が触れる部分にどう手を加えたんだろう? 確かに普通の木材なら火傷しそうだけど。
「ここでも活躍したのはゴムなんだ。表面をゴムで加工してある。水が流れてるから火傷の心配も無いし、クッション代わりにもなってるしな」
「ああ成程! という事は全面ゴム張りですか?」
「これが苦労したんだ。組み立てる前に貼ったら繋ぎ目が出来るしな」
蓮見さんに代わってそう言うのは来栖さんだった。確かにこのスライダ-全部となると......
今となっては当たり前の様に使っているゴムだけど、あの時の発見が今も活かされてるよね。
「それにこの大型スライダ-は秘密がある。と言ってもこの施設の将来を見据えたんだけどな」
得意げに言うのは安藤兄さんだ。滑り台に秘密って何だろう?
「兄さん! はよ言うてぇな! もう待ちきれへんわ!」
「に、兄さんって言うな! と言うか子供か!」
「安藤。まぁ遊びたい気持ちも分からんでもない。実はな......」
そこから蓮見さんがこの施設の秘密を話してくれた。思い出して欲しいんだけど、うちの会社の建物で水力発電を使っただろ? あれと同じことをこの施設でやってるんだって。
水流の動きで電気を生みだす仕組みを取り入れたんだよ! 当面は夜間の照明ぐらいにしか使えないようだけど。
このスライダの-上まで水を運ぶ事を考えた時、うちの経験が役に立たんだってさ!
「とまぁこんな感じだ。将来電気を使った遊具なんかも作れるだろうしな。それにこれが無いとプ-ルの水質問題もある」
「水質問題ですか?......ってそうか! この世界に消毒剤って無いですもんね!」
「そう。まぁ次亜塩素酸は作れなくもないみたいなんだがな」
「専門的な名前は分かりませんが、それって岡田さんが?」
「ああ。岡田と間宮が何とかするって息巻いてたよ」
流石はうちの品質管理部。困った時はとりあえず相談すれば何とかなりそうなんだよなぁ。
そう言えば岡田さんや間宮さんは来てないんだろうか?
「その岡田さん達は来られて無いんですか?」
「いや遅れて来るんじゃないか? ほかの人間も今日明日で遊びに来るらしいからな」
「そうですか。皆も楽しみにしてるでしょうしね。きっとこの世界の人も待ちきれないと思います」
ザッパァアアアアアン!!!
俺達が喋っている時、大きな波しぶきが立った......ああ待ちきれない人物を忘れていた。
「キャハハハ♪ なにこれ! 楽しい!」
早速滑って来たマリアさんが勢いよく滑って来たんだ。勢い付きすぎて最後一回転してなかったか?
楽しそうに静香さんの手を引っ張りながら上に上がって行ったけど!
「ちょ、ちょっと! 俺も行きますって!」
この後、いっぱい遊んだよ。最後は歩くのも嫌なぐらいね。
蓮見さん達に呆れられたけど。スライダ-の他で気に入ったのは、人工の波が起こるプ-ルだった。
サーフィンは出来ないけど、ボディーボ-ド風な板を使った波乗りは楽しかった!
男も女性もみんなで楽しめる施設。きっと色々な国で出来るんじゃないかな?