俺達の知識と新たな商売
今回の事件を報告したんだけど......
今回起こった俺の事を会社の仲間に報告したら、それはもう怒られた。
例え個人の事であっても仲間なんだからと。しかも命の危険があった事は許せないぞと。
エイシャさんに止められたんだが、やはり皆には伝えるべきだったかもしれないな。
最終的には俺が無事だった事もあり、許してはもらえたんだけどね。
それからの俺達は身辺を注意しつつ、活発に活動したんだ。変に暗くなるのは俺達らしく無いってね。
「速水、あれから管理組合の様子はどうだ?」
「蓮見さん、お疲れ様です。職員が捕まったんでちょっと元気ないですけど、だれの責任でもありませんから大丈夫です」
「そうか。時間が経てば元通りになるさ。それでな。少し話は変わるんだが、俺と一緒に王都へ行ってほしんだ」
「王都ですか? 俺を連れて行く理由って何でしょう?」
「今俺と来栖で電力設備の開発を進めてるんだが、他にも王国からお願いされている事があるんだ」
詳しく内容を聞いてみると、ファインブル王国の資源を有効に活用したいんだってさ。物の流通の話なら、俺が適任だろうってね。
王都までは今は5日程度かかる。まだ道路整備もレ-ル工事もそこまで進んでないしね。
それでもうちの馬車なら安全に移動はできるので、問題はない。
「わかりました。出発は明日で良いんですか?」
「ああ。明日の朝出発する予定にしているよ。急で悪いがよろしく頼む」
◇◇◇
翌日王都へ向かう馬車には、蓮見さんと来栖さん。そして......何故かマリアさんと静香さんが乗っていた。
「当然の様に乗ってるが、マリアちゃんと中村は王都へ何の用事だ?」
「ちっちっちっ。はすみんは女心が分かってなぁ-い!」
腰に手を当てて指を振りながらそう答えるマリアさん。何故彼女が得意気なのか分からないんだが?
それに蓮見さんの事何時から、はすみんって呼び始めたんだろう?
「は、はすみん? って俺の事か? 女心はまぁわからないが」
「ちょっとマリア! 何言ってるのよ? 私達はミ-ガン様に呼ばれてるんじゃないの!」
困惑する蓮見さんとちょっと赤い顔の静香さん。王都へ一緒に行けて俺は嬉しいです!
静香さんに王都へ向かう話をした時に、マリアさんも用事があると聞いたんだ。それなら一緒に行きましょうって俺が声を掛けたんだよ。蓮見さんには言うの忘れてたけど......
「すみません。俺は昨日聞いてたんですよ。馬車の定員も問題ないと思って伝え忘れてました」
「そ、そうか。い、いや別に問題があるとは言って無いからな。そこは誤解のないように」
珍しく慌てている蓮見さんはレアだな。
王都までの馬車の旅はとても順調だった。予定通りに宿泊予定の街に到着出来たし、道中も穏やかな物だったよ。
ちょうど4日目の夕方、俺達は王都へ到着した。
◇◇◇
王都へ着いた俺達はエルミナ教の本部へ向かった。マリアさんと中村さんが本部に宿泊するので、挨拶もかねて俺達も訪問する事にしたんだ。
「遠路はるばるご苦労様だな。速水君も皆さんも久しぶり」
ミーガン様は軽い感じで挨拶してくれたんだが、そこからが彼女らしい行動だった。俺達男にとっては嬉しいんだけど、熱烈なハグは心に悪い。主に後ろからの冷たい視線が。
「ちょうど良い。速水君達もここに泊まると便利なんじゃ無いかい?」
「え? 俺達までよろしいんですか?」
ミーガン様の一声で、俺達もエルミナ教本部で宿泊する事が決まった。経費節約できるしありがたい。
そしてその晩、歓迎の意味で少し良い夕食を振舞ってくれた。エルミナ教では食事は質素なんだよ。
特別な日を除いて教徒達の食事は贅沢をしない戒律があるんだって。俺達の世界でも同じような宗教があった気がする。
「今回マリアちゃんを呼んだのは、例の女神像の設置の件なんだよ。それと速水君の彼女さんは別に聞きたい事があってね」
食事の席でそう説明をしてくれたミーガン様。例の女神像はジュノ-教絡みとして、静香さんに聞きたい事って何だろう?」
「えっと私に聞きたい事って何でしょうか?」
「えっとちょっと私も恥ずかしいんだが......」
俺達は聞かない方が良いかもしれない。何やらミーガン様が静香さんに耳打ちしに行った。
それにうんうんと頷いている静香さん。美女が二人並ぶと目の保養ですよ!
席に戻ったミーガン様が、今度は俺達に話しかけた。
「えっと私が聞きたい事は他にもある。それは医療の事なんだが」
「医療と言いましても、俺達の中に医学の知識を持った人間は居ませんよ?」
「それは聞いているよ。だが今の私より君達の方が詳しいだろう? それを聞かせてもらって、研究をしたいんだよ」
そう言う事か。まぁ確かにこの世界の医療は進んでいない。アルメリアではバクテリアの存在もしらなかったし、下水処理場建設の時に大変だった。
今はその為の研究も進んでいるんだよね。あの後に開発した国もアルメリアと協力しているみたいだし。
医療に関して言うと、先ず清潔にする事でどういった病気が防げるのか? そしてかかる病気の治療法なんかもこれから研究が必要だろうね。
メ-ガン様の話では風邪でさえ亡くなる人が多いんだってさ。レイドの街から推進している手洗い・うがい等の習慣も、教会が率先して広めたいと言っていた。
後は食中毒の問題。保存技術が発展していないこの世界では、生ものは駄目だ。生水も水質を確認してからじゃないと飲めない。川の水なんて論外だ。
まだ下水設備や水道設備が開発されていないこの国では、洗濯水や汚水を川に流しているしね。
ミーガン様は俺達の話をメモを取りながら聞いていた。余程興味深かったのか、話は結構遅くまで続いたんだ。
「いやぁ。実に興味深い話が沢山聞けたよ。まだまだ聞き足りないけど、そろそろ寝ないといけないなぁ」
名残惜しそうなミーガン様だったが、流石に朝まで話をする訳にもいかない。それに何日か王都に滞在するんだし、今日話を続けなくても良いよね?
この後お開きになったので、用意して貰った部屋で就寝した。勿論、男女別であります。
◇◇◇
翌日、蓮見さんと来栖さんと俺で王城へ向かった。今日会うのはメロ-宰相と文官の方々だ。
「よく来てくれました。蓮見殿と来栖殿には何度も来て頂いて申し訳ない」
「メロ-殿、こちらも仕事ですのでお気遣い無いようにお願いします」
「速水殿もすまないな。あんな件があった後だから、迷ったんだがなぁ」
「いえ。もう切り替えてますので大丈夫ですよ? 本日はどう言ったご用件でしょうか?」
「速水殿も既に調べているだろうが、我が国の資源の事なんだ。今回の国内の開発を機に、他国への輸出を増大したい」
「そうですか。勿論私にできる事は全てさせて頂きます。流通はレ-ル工事と道路整備が終われば、飛躍的にアップしますしね」
ファインブル王国の資源は、食品関係を除いて鉄・金・銅・鉛などの鉱石。そして硝石や硫黄等も取れる。後は土瀝青だ。土瀝青はアスファルトの事です。
土瀝青が取れるこの国には、石油がある可能性がある。現在その地域を重点的に調べているんだよね。
もし見つかれば今の何倍も技術が発展するだろう。俺達も石油があればかなり助かる。
この件はファインブル王国も全面的に協力してくれると言っているんだ。
「大まかな資源はこれぐらいですよね。後はメロ-殿、提案があります」
「ん? 速水殿、どの様な提案だろうか?」
「氷を流通させませんか?」
「氷とな? だがあれは溶けてしまうであろう」
俺がこの国を調べていた時、特に気になったのが北部の気温だ。作物には期待できないけど、一部の地域では池が凍るんだよ。なら氷も作れそうじゃないか?
「ええ。勿論溶けるんですが、そこは考えます。氷って食材の鮮度を保つ事も出来ますし、飲料などにも使えるんですよ」
「ほう。中々面白そうな話だな。もう少し詳しく聞かせて貰えるだろうか?」
原価は人件費を除けばほぼゼロだ。上手い事行けば儲かるんじゃない?
俺はこの後、氷の活用法について話をした。夏に食べたいあの食品も作れるかも知れない―――
開発が加速するファインブル国内。この国が欲するのは新しい知識と技術。その中で興味深い資源も確認されつつある。
実際に石油何かのボ-リングは地下の奥深く掘る必要があります。もし見つかる様なら少しファンタジ-要素が必要だなぁ。