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男爵からのお願いとガ-ルズト-ク

果たして男爵達は何を考えてるのか?

 男爵の話は続く。俺達は不安を感じながらも、恩のあるライアン男爵には協力したかったんだ。


「侯爵と子爵の分を作る前に、サダラ-ク公爵の名刺を作って届けて欲しいのだ」


「と言いますと、我々が直接お届けするのですか?」


「そういう事になるな」


「私共はまだ、この街での活動しかしておりません。土地勘もないので厳しいかと」


「まぁ最後まで話を聞いてくれ。サダラ-ク公爵の屋敷は王都にあってな、この街から王都までは3日程の距離だ。そこまでの案内は私の方で付けるし、安全は保障しよう」


 ここで、今まで話していた清水部長に代わり高橋課長が質問をする。


「ライアン男爵、質問よろしいでしょうか?」


「ああ、どんどんしてくれていい」


「男爵は先日、レオナルド男爵からの横やりが入る様な事を仰っていましたが、それについては大丈夫なのでしょうか?」


「うむ。そこは情報が洩れぬように王都へ向かう際は、私も同行するつもりだ」


「それならば安心です。ライアン男爵も行かれるのであれば、男爵自身でお届けなさらないのですか?」


「質問の意味は解るが、それはできない。クラ-ク伯爵の立場もあるのでな」


 貴族って色々めんどくさいんだな。ただ、男爵が同行するなら安全面は心配ないか。


「それと王都へ向かう際は、男女のペアの方が好ましい。社交的な意味でもな」


「なるほど。それについては社内に持ち帰り協議致します。何分、貴族の慣習的な物は、存じ上げませんので」


「名刺が出来上がり次第、連絡が欲しい。すでにクラ-ク伯爵に紹介状を書いて頂いているのでな」


「ああ、それと別件なんだが、例のスプ-ン等のセットも用意してくれないか? 実はクラ-ク伯爵に私が貰った分を持って行ったんだ」


「それならすぐに用意いたします。貴族の方用のセットも御座いますので、そちらをお持ちします」


「丁度、本日お持ちした品の中にもございますので、速水君、説明よろしく」


「こちらは、ワイングラスのセットと、ステンレス製のスプ-ン等を詰め合わせております」


「おお! 素晴らしいな。ガラスのグラスなど高価な物を頂いて良いのか? それにこのスプ-ンの輝きは!」


「どちらも私共の世界で使用されている物でございますので、お気になさらないで下さい」



◇◇◇



 速水たちが男爵と話している頃、マリアンヌ夫人と花崎、倉木は3人でお茶会の真っ最中だった。


「マリアンヌ様の髪ってとても綺麗ですね」


「何を言っているの、2人の髪も艶があって素敵じゃないの!」


 因みにこの3人、年齢が近いのだ。男爵夫人として10年程経った今でも充分若い。この世界の成人年齢は15歳。貴族は特に結婚が早いらしい。


「うちの男性社員は、気が利かないから女性用の贈答品をお持ちしました。良かったら使ってくださいね」


「えっと、これは何かしら? このいい匂いがするのはソ-プなのね♪」


「はい。こっちがソ-プで、これが髪の毛を洗うシャンプ-とコンデショナー。それに化粧水です」


「使い方は、紙に書いてきました。絵でも書いてますので参考にして使ってみてください」


「倉木さんは絵も描けるのよねぇ。うらやましいわ」


「私なんて。花崎さんは美人で有名なんですよ!」


「私から見たら二人とも奇麗だわ。私は子供を産んでから少し肌が荒れちゃって」


「それならこの化粧水を使えば潤いを保てるわ」


 このお茶会は、とても盛り上がっていた。花崎は1つ年齢が下の倉木を可愛がっていて、自分には無い小動物の様な倉木がうらやましかったのだ。花崎本人は気が付いていないが、倉木が言うように人気が高いのだが……。表情が乏しいので冷たいイメ-ジを持たれてしまうのである。この後もガ-ルズト-クで盛り上がったが、会談が終わった事を伝えに来たのでお開きになった。マリアンヌ夫人も2人を気に入ったので、この後も交流が続くのだろう。



◇◇◇



 帰り道、露店の近くを通ったら丁度閉店だったようだ。手を振る田村に合図しながら撤収を手伝った。

今日は中村さんが露店に居たので挨拶したら、何故か機嫌が悪い。俺、何かしたんだろうか? 田村も同じように思った様で、「速水、何かしたんか? 中村さん、機嫌悪いがな」 と言われたんだが。その中村さんは、今は花崎さんや倉木さんと話している。俺の時とは違い笑っているので、本気で何かしたか思い出さねばならない。自分の事はホントにわからないんだよ。



◇◇◇



「なによ静香。速水君に当たったの?」


「え? 何の事?」


「静香って本当に気持ちを出すのが下手だわ」


「え? 千鶴? だから何のことよ?」


 千鶴は思った。いずれ静香は、速水君に嫌われるかも? チャンスかしらこれは……。


「花崎さん! 速水さんがどうかしたんですか?」


「ん? 何でも無いのよ」


「そうそう、なんでもありませ-ん」


「ちょっと、仲間はずれにしないでくださいよ-」


 静香自身は、なんで速水君に当たっちゃたんだろう。別に速水君は悪くないのに……と考えていた。


 男女の色恋は難しいのである。しかも大人になると自身のメンツが邪魔をする。異世界に来たことで、そのあたりが緩んできたのであろうか。今後この恋が実るのか否かは、いずれ語られるであろう。

社内恋愛は特に難しい。貴族との付き合いは難しい。これからどうなるのか?

次話は、王都へ向かう前の話。

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― 新着の感想 ―
[一言] 貴族とのやり取りでも、女性ならではの気づきや気遣いが功を奏しますね。男たちの堅いやり取りとのギャップが良いです。
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