ファインブル王国へ!
ハ-メリック帝国の開発が終わり、次に向かうのは......
ハ-メリック帝国での活動が終わり、俺達が次に向かうのはファインブル王国だ。
ここでこれから向かうファインブル王国の情報を語ろう。
ファインブル王国は、ミゼロ・ファインブルが治める国だ。この国で盛んなのは、学問。
これにはこの国で信仰されているエルミナ教と関りがある。女神エルミナの権能は才能なんだ。
この為、学問を学ぶ事を国が推奨している。但し一般国民は、裕福な家以外は他の国と変わりない。
とまぁ、会議の際にメロ-宰相が教えてくれたのはこの程度なのだが。
「なぁ速水。今誰と喋ってたんや?」
「ん? それは中の人? まぁ良いじゃないか」
「あら? 突いたらアカンかったか。それより今後の予定どうなるんや?」
「そうだな。これから向かうのは、ファインブル王国の国境の街レイドだな。だいたい3日ぐらいかかる」
「3日? 蒸気機関車やったらもっと早いんちゃうんか?」
「あれは1日に1本だし、まだファインブル王国には繋がってないだろ? 国内の移動どうするつもりだよ」
「あっそうかそうか。足の事考えてなかったわ。ほんなら馬車でって事やな」
そんな会話をしながら出発の準備を進めた。出来るだけ少ない荷物が理想なんだけど、ファインブル国内の生活水準がわからない。必然的に小物類とかが増えてしまうんだよねぇ。
それからファインブル王国に向かうメンバ-なんだけど、アルメリアから何名か増える予定だ。その事は事前に連絡を貰っている。
誰が来るかは今の所はっきりしていないんだが、俺達は先にレイドの街へ出発だ。
◇◇◇
馬車が出発して1日目の野営地で、護衛の人が俺達に注意を促した。
「どうしたんだろう? まさか野盗か?」
「速水君! どうしよう!」「ちょっといきなりなんなの?」
「静香さん、花崎さんも少し落ち着いてください。大抵の事は、この馬車の中に居れば安心ですから」
馬は大丈夫じゃないけど、車体はとっても頑丈な仕様だ。今のうちに窓もシャッタ-閉めておこう。
「田村! 窓のシャッター閉めといて! 他の人達もとりあえず落ち着いて!」
実は出発前にハ-メリック帝国の人から聞いていたんだ。国境の街までの道程は少し治安が悪いって。
田村や他の男性陣には伝えてあったはずなんだけどな。
コンコン。
「はい。外はどうですか?」
「速水殿。もう大丈夫です。詳しくは後程話しますが、馬車を進めますね」
今の合図は御者の人だ。一応御者席も防御出来る使用なんだが、外なので心配だった。
「ご無事な様で安心しました。お願いします」
「はぁ。速水は何でそんなに冷静なんや? 俺はアカンわ。ビビってもうた」
「ん? 帝都へ向かう時もこんな感じの出来事があったからさ。まぁその時も大丈夫だったんだけどね」
帝都へ向かったあの夜、相手が衛兵じゃ無かったら俺もここに居ないだろう。
それから3時間程走って、今日野営する場所についた。野営と言っても小さな村の中なんだけどね。
◇◇◇
到着して直ぐ確認したのは、後続の馬車の事だ。今回は2台と岩本さんの『キッチンカー』で来ている。
「良かった。全員無事な様ですね」
「おお速水。さっきはちょっと危険だったな。速水からは事前に聞いていたけど、実際に止まると焦っちまうよ」
「来栖さん、そう言ってもすぐにシャッタ-閉めてたじゃないっすか」
来栖さんと安藤さんが笑顔で降りて来た。他の職人さん達も無事なようだ。
「おっちゃん! お腹空いた!」
「お嬢ちゃん無事だったか。じゃあ晩飯の用意始めるな」
マリアさんは凄い元気なんだが、さっきまで寝てたしな。あれだけ騒いでも爆睡だったし。
「速水様。先程のご報告よろしいですか?」
「はい。ではあちらで聞きましょうか」
今話しかけて来たのは、ミネルバ教の暗部の人だ。今回の護衛としてロザヴィア様が派遣してくれたんだよ。
皆と少し離れた場所に移動して先程何があったのか聞いた。
「先ず襲ってきたのは旧勢力の残党でした。全てこちらで対処いたしましたが」
「旧勢力と言うと前皇帝ですか? 対処されたという事は......」
「はい。正確に言うと廃爵になった者の関係者でした。見つければ粛清の対象者なのでお気になさらずに」
「そ、そうですか。皆様お怪我は無かったのですか?」
「私共は全員無事ですよ。それでは警備に戻りますね」
俺達も旧勢力に恨まれてるのか。確かに全くの無関係とは行かないんだろうな。
こうして襲われる事は未だに恐怖だ。慣れる物じゃないしね。
「速水君。どうしたの? 怖い顔してるよ?」「ほんと。顔色が悪いわ」
「静香さん。花崎さん。大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていました」
心配かけてしまったみたいだな。俺は少し迷ったんだけど、夕食の時に皆にも襲撃の話をする事にした。
国境を越えてファインブル王国に入国しても、襲われない保証が無いと思ったんだ。
逃げた旧勢力の人間がファインブル王国に潜伏していても、対処しない訳には行かないしな。
今回の護衛である暗部の人達はこのまま、ファインブル王国とグ-テモルゲン王国でも警備をお願いしている。
やはり初めて入国する国では、安全の確保が最重要だからさ。
「そうか。そう言う勢力も残ってたんだな。俺は工事一辺倒で気が付いていなかったよ」
「ハ-メリック帝国の国内では、衛兵の皆さんが守ってくれてましたから。それに今いる暗部の方達も、俺達の知らない所で警備してくれてたんですよ」
来栖さん達の警備も実は暗部の方々がやってくれていたんだよ。ロザヴィア様に聞いて、お礼と差し入れしといた!
「ほんまかいな! 全然気付かへんもんやなぁ」
「篤さんはちょっとボケっとしすぎだからね」
「はいはい。アンタらほっといたらすぐにイチャイチャするよねぇ」
田村と倉木さんのやり取りに、安田さんが突っ込む。まるで俺と静香さんに花崎さんが......。
こんな感じで襲撃の恐怖は薄らいでいった。皆でいるから少し安心できるんだよね。
ただ気を抜きすぎるのも駄目だ。この世界には常に命の危険があると思っておかないとな。
幸いこの日は何事も無く過ぎ、翌日も無事に過ぎて行った。
そして3日目、目的のレイドの街に到着したんだ―――
ハ-メリック帝国を出発しまさかの1日目で襲撃。速水達も少し気が引き締まっただろう。
さてファインブル王国の国境の街レイドはどんな街なんだろうか?