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会社ごと異世界に転移してしまったが、うちの社員は商売上手だった件  作者: 早寝早起き
変化する国々編(ハーメリック~ファインブル・グ-テモルゲン)
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開発の為の会合 後編

頼りないハ-メリック帝国の代表の代わりに、速水は動く。

 ハ-メリック帝国で行われている6ヶ国の会合。各国共に一癖も二癖もある代表者が集まっており、その誰もが自国の利益を取りに来ている。俺はそんな妖怪たちの様子を見ながら、様子を伺っていた。


「列車については私からご説明させて頂きます。技術の提供は、我々が行いましたので」


 ちょうど列車についての話が出たので、参加させてもらう。しかしここにもハ-メリック帝国政府の人間が参加して来ないんだよなぁ。


 ちょっとスチュワ-ト宰相やム-ラン宰相が嫌そうな顔してるけど、俺も仲良しさんだけが得する様には出来ないからね!


「メロ-宰相殿やデネブ宰相殿は、現物をご存じないとの事。お時間がおありなら、一度見物に行かれる事をお勧めいたします。先程話に出ていたように、列車の最大の利点は移動速度です」


「うむ。先程10日かかる距離が、2日に短縮できるという話だったな」


「メロ-宰相殿、あくまでも一例ですよ。確実に早く移動できますが、条件により変わる事は理解しておいてくださいね」


「分かっておる。それで他に利点はあるんだろうか?」


「はい。先ずは国内での流通が飛躍的に上がり、経済活動が活発になります。そして国の新たな収入源としても期待できます」


「速水殿、新たな収入源とは何だろうか?」


「ルロイ宰相殿、既にスチュワ-ト宰相殿はご存じなんですが、国が列車運行を管理するので、移動の際に支払われる運賃収入が発生するんですよ。このお金で投資したお金の回収が見込めます」


 国営で運行するんだから、理用する国民や業者はお金を支払う義務が発生する。これまでに投資した金額を回収した後は、維持費を抜いた金額が毎日入って来る事になる。


 長期的に見て損は絶対しないんだよ。現状、列車に変わる移動手段は無いしね。


「という事は先行投資は必要だが、それを上回る魅力もあるという事だな」


 既にレ-ル工事が終わっているサリファスとスレイブの担当者たちも、この話はしっかりと聞いている様だ。


「少し話は脱線しますが、これまでに行った環境整備についても同じですよ。下水道整備を行った事で確実に病気になる人が減ります。これだけでも国にとっては目に見える利益になります」


 本来であれば水道料金も徴収できるし、今後電気が送電されれば電気料金も発生するだろう。


 ただあまり派手に税金が増えれば、反感も出るので難しい所だと思うが。


「成程な。国内についてはもっと聞きたいところだが、それは個別に聞かせて欲しい」


 今の発言はデネブ宰相だ。ハ-メリック帝国の後に訪問する予定の国だから、色々と聞きたい事も多いだろうね。


「では国外に向けてなのですが、これまで各国の特産品はその距離に応じて、値段が上がっていたと思います。そして移動できる量もごくわずかでしたよね? それが一度に多く運べますし、日数も短縮できます」


 想像した方が分かり易いだろう。アルメリアから一番遠いファインブル王国まで、徒歩なら3ヶ月近くかかるんだ。それでいて移動できる荷物は少なく、値段も相応に高くなる。


 それが大幅に短縮できて、量も纏まって送れるなら双方にメリットがあるのは当たり前だ。


 各国の代表者はヒソヒソと話をしている。今の話から大体の計算が始まっているのだろう。


「正確な日数はレ-ルが繋がってからになりますけどね。これは提案ですが、税率を考えてみては如何でしょうか? 各国の特産品は安くして、競合する品は高くするとか」


 俺達のいた世界でも自国の利益を優先すれば関税は高くなる。本来はそれで競争も生まれるので良いんだろうけど、今は帝国が弱っているのでこういう発言をしたんだよ。


「速水殿、それはかなり踏み込んだ発言では無いか? まぁ今の立場的に分からなくもないが」


「スチュワ-ト宰相殿、あはは、やっぱり分かりますよね。今の話は現在の帝国の状況も踏まえた発言です。国内が安定していない状況では、高額な関税は国を疲弊させてしまいますので」


 俺のこの発言には皆、苦笑いだ。俺も半ば投げやりなんだけどね。


「速水殿、勘違いしないで聞いて欲しいんだが、正直ここに集まった人間は帝国に旨味を感じていないんだよ。ただし鉄工関係や鉱物資源には期待しているんだがな」


 あれ? そうなの? てっきり色々な物を安く買叩こうとか考えてるんじゃ無かったの?


「今回、アルメリア・スレイブ・サリファスの3国は、帝国の工事に関わる人材も無償で派遣する。これにはもちろん打算もある。帝国を経由してファインブルとグ-テモルゲンとの交易も発展できるからだ」


「その話はこの席に集まる前に、私とデネブも聞いているんだよ。国としてメリットしかないからな」


 スチュワ-ト宰相の発言に対し、ファインブル王国のメロ-宰相が続けた。


 なんだ。俺が気負い過ぎてただけなんだろうか。そう言えば帝国の皇帝の一件で、5ヶ国で話し合ってたんだっけか? 


 会議はこの後、穏やかな雰囲気で進んだ。勿論、ハ-メリックの人間もちゃんと話に参加したよ。


「ではこれにて初めての6か国会合は終了と致します。個別の話については、別室にてお伺いします」


 今回の会合で決まった事は、大まかに下記のようになる。


・関税率については品目別に設定する。

・列車の料金は、新たに料金表を作成し共有する。

・ハ-メリック帝国を除く5ヶ国は、帝国内の工事に人材を派遣する。

 (グ-テモルゲンとファインブルは先んじて人材の育成の為)

・入国審査を行う建物を隣接した国と協力して建設する。

 (密入国・密輸出入を防ぐため)

・パスポ-トの必要性について今後も協議する事

 (身分証明だけでは、犯罪者の入国・出国を防げない可能性もある為)


 思ったより中身の濃い会合になった。妖怪に見えた各国の代表者も、蓋を開けてみれば良い人だった。


 とは言え国益に関わる事は、甘い話だけではないのだが。今回は俺の顔も立ててくれたんだろう。


 この会合の後、ハ-メリック帝国の開発は飛躍的に加速する―――


駆け引きもあったが、会合は成功と言えるだろう。


開発の加速するハ-メリック帝国では、遂に選挙が開始される。

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