開発の為の会合 前編
ゆったりぺ-スの開発に物申す?
非常にゆったりとしたぺ-スで、帝国の開発は続いていた。しかしこの開発ぺ-スに物申す国があったんだ。
ファインブル王国とグ-テモルゲン王国である。この2国も周辺国と同じく静観していたのだが、他の国の発展具合を知り黙って居られなくなったようだ。
これにはハ-メリック帝国の暫定政府も大きな拒否も出来なかった。何故なら前皇帝による鎖国に近い政治が、問題でもあったからだ。だがこの2国の人間だけ入国させる訳にはいかない。他の3国との関係も無下に出来ないからだ。
「という訳で、速水殿に相談なのです。内政に干渉させずに良い関係を築きたいのですが......」
速水は現在、帝都の城に呼び出されていた。そこで言われたのが前述である。
「まぁこうなる事は分かっていましたが。いずれにせよ今後の周辺国家との関係もあります。受けるべき援助は受けて、早急に新しい政府を作り上げるしかないですね。私達としても資材などが多く入れば、ライフラインの確立も早くできますし、経済の活性化も促進されます」
「仰ることは分かるのですが、今の暫定政府では意思決定に時間が掛かるのです。皇帝選挙へ立候補する陣営も、自陣の影響力を保とうと牽制しておりますし」
暫定政府の思惑も理解はしている。国によっては時期皇帝に取り入ろうとする動きもあるだろうし。
あまり俺達が政治に関わる事は避けたいのだが、一度各国の代表者を呼ぶしかないだろうな。
「仕方ありません。とりあえず各国の代表者を呼びましょう。各国の思惑を知っておくのも良いかもしれませんしね。私も同席しますので」
俺の言葉にホッとした様だが、正直言うと面倒くさいのだけど。政治家のドロドロとした駆け引きは、見ていて良い気分になれないからさ。
◇◇◇
それから半月後、各国の代表団がハ-メリック帝国へ派遣された。
暫定政府としてもこれからの帝国にとって重要な集まりになるので、警備はかなり厳重な物になった。そして帝城の会議室にて、6ヶ国が集い会合が始まる。
「本日はお忙しい中お集まり頂き、誠にありがとうございます。暫定政府の意向により、この会合の司会進行は私、速水が行います。皆様よろしくお願い致します」
ふぅ。弱腰の暫定政府に丸投げされた俺は、各国の代表者を見る。実務者の会合になるので、国王は来ていないようだな。
「速水殿、お久しぶりですな」
「お久しぶりです。スチュワ-ト宰相殿。それにサダラ-ク様も」
アルメリア代表団は宰相と公爵が来ていた。かなり本気じゃないか!
「速水殿、暫くであるな。お元気ですかな?」
「これはム-ラン宰相殿。おかげさまで元気にしていますよ」
サリファス王国は宰相と文官達だ。どなたも一癖ありそうな人達だな。
「速水殿。初めまして。スレイブ王国宰相のキアナ・ルロイだ」「同じくスレイブ王国のロイスです」
「初めまして。えっとルロイ宰相殿とロイス様はもしかして......」
「はい。私は第1王子です。今日は勉強の為に同行を願いましてね」
スレイブ王国は宰相と、まさかの王子様だった。かなり本気だよ! 王族が出て来ると緊張するよねぇ。
「お初にお目にかかる! 私はファインブル王国宰相、アナハイム・メロ-と申す。噂に名高い『神の御使い』殿にお会いできて光栄だ」
「これは初めまして。信頼雑貨の速水 慎一と申します。こちらこそお会いできて光栄です」
綺麗に整えられた口髭が特徴のメロ-宰相。この国も情報が無いだけに、色々と話を聞きたいところだ。
「おやおやメロ-殿。抜け駆けはいけませんなぁ」
「ん? なんだデネブではないか。抜け駆けとは心外だ」
メロ-宰相とやり合っているのは、多分グーテモルゲンの宰相? だろうな。
「速水殿。お噂は兼ねがね。私はグ-テモルゲン王国宰相のリカルド・デネブと申します。是非とも会合の後にでもお話をお伺いしたい」
「初めまして。デネブ宰相殿ですね。お時間の方は取れるか分かりませんが、私としてもお話をお伺いしたいと思っていますよ」
うわぁ、こう言うやり取りが一番苦手なんだけど。顔が引きつってないか心配だよ。とにかく早く会合始めたいんだけど! 皆が俺の周りに集まって来るけど、暫定政府の人間何やってんだよ!
完全に話の中心みたいになっている俺は、とにかく会合を始める為に席に着いてもらった。さて今回どの様に各国の支援を得られるんだろうか?
「それではお集まり頂いた皆様に、現在行われている国内の状況をお伝えします。先ず道路整備については、国内の3分の1程度まで完了しております。それに伴い下水工事も順次進めており、ここ帝都まで約1年の計画であります。そして国内の流通を活性化させる為、サリファス王国・スレイブ王国からレ-ルを延ばす工事も計画。この件は後程ご説明願いますね。そして教育改革の......」
この様に現在の進捗状況とこの後の工事計画について話していく。今回の話で一番重要なのは、全ての国が列車で繋がる事だろう。その為には国境を越える必要がある為、外交問題が発生する。各国々で関税等も発生するし、不法入国防止措置も必要だ。
一通りの計画を話し終え、各国の意見交換が始まった。一旦代表団で話し合ってもらい、俺は席を外す。ここで俺が参加してしまうと、仲の良い人物に便宜を図って居るように思われるからだ。
「既にアルメリア・スレイブ・サリファスは、先んじて共同事業として締結しておる。ここにハ-メリック帝国を挟み、グ-テモルゲン・ファインブルも参加する形が望ましいのではないか?」
そう言うのはアルメリア宰相のスチュワ-ト。サリファスのム-ラン宰相・スレイブのルロイ宰相も頷く。
「ちょっと待って頂きたい。我々はまだその列車と言う技術についても知らない。どう言った物でどの様な利益を生む物なのか是非お伺いしたい」
待ったをかけるのが、ファインブルのメロ-宰相。グ-テモルゲンのデネブ宰相も同意見の様だ。
「そうですなぁ。我々の感覚で言うと、10日掛かっていた荷物や人の移動が、2日に短縮した。こう言えばどれ程の利益になるか分からないか?」
俺達商売する人間は、時は金なりって言う言葉をよく聞いた。メロ-宰相とデネブ宰相もこの話には喰いついてきた。
「な?! それは本当なのか! そんな事が可能なら産業革命が起きるじゃないか!」
うん。メロ-さん。それを起こしたいんだよ! 全ての国が素早く流通出来るなら、輸出入が大幅に改善されます。まぁそれ以外にも色々とありますけど。
......って5ヶ国が盛り上がってるのに、肝心のハ-メリック帝国が蚊帳の外じゃん! ここで話に入らないと何の意味も無いのに!
俺は仕方なくこの会話に入って行く事にした。今回だけなんだからね!
という訳で6ヶ国の会合が始まった。各国の代表は一癖も二癖もありそうな人物たち。
この妖怪たちに速水はどう挑むのか?