表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
会社ごと異世界に転移してしまったが、うちの社員は商売上手だった件  作者: 早寝早起き
変化する国々編(ハーメリック~ファインブル・グ-テモルゲン)
155/200

絆(きずな)

傷心の速水。まだ現実を受け入れられないでいた

 タオカさんが亡くなった事で、かなりのショックを受けていた。


 しかしこの件も仲間に伝えたい気持ちがあり、何とか切り替える事を優先したんだ。


 本来なら葬儀に出席するつもりだったのだが、タオカさんはこの国では既に亡くなった存在になっていたんだ。


 処刑された皇帝も隠したい事があったのだろう。周辺国ではタオカさんの実績は、文献に乗っていたんだけどね。俺としては同じ転移者として、葬儀ぐらい行って欲しかった。


 しかしジャニス様からは葬儀は出来ないと言われ、密葬する事に決まったんだ。


「理由が理由だけに、仕方ありませんね。時間を見つけて、皆と一緒に墓参りに行く事にします」


「速水様はもう行かれるのですか?」


「はい。気持ちを切り替える為にも、皆のいる街へ帰ります」


「そうですか。また何かありましたら、何時でも相談して下さいませ」


 ジャニスさんへ挨拶して、馬車へ乗り込んだ。御者さんは来た時と同じ人にお願いしたよ。とっても良い人だしね。






◇◇◇






 その頃、静香達の元には騒がしいメンバ-が戻って来ていた。


「マリア! 久しぶりね。見た所元気そうだけど。トミーも変わりないようね」


「静香ぁー! 成分補給なの! クンカクンカ」


「きゃあ! 毎回何なのよ⁈ 匂いを嗅がないで!」


 キッチンカーで国中を回っていた3人だったが、マリアが急に静香成分が足りないと騒いだらしい。


「全くあのお嬢ちゃんには敵わねぇよ」


「マリアにはお手上げでおじゃるよ」


 岩さんとトミーは、良い顔で笑っている。今回の旅で仲良くなったみたいだ。


 田村達は岩さんから国内の様子や、新しい食材等の話を聞かせてもらっている


「静香成分補給かんりょー! ほんとに何時も隣にいないんだからぁー!」


「マリアが勝手に動き回ってるじゃない! それに成分って何なのよ」


「私の元気の源で-す♪ 静香? はやみんも帰ってくるよ。何か悲しいみたいだけど」


「え? 速水くんと会ったの? 彼は今帝都のはずだけど?」


「えへへ。なんか分かっちゃう系? 凄いでしょ?」


 マリアは褒めて欲しい犬の様に、頭を出しながら静香に甘えた。言われた静香は頭を撫でながら、悲しいって何なんだろう? と不思議に思っていたのだが。


 






 それから3日後、本当に速水が帰って来た。直ぐに駆け寄った静香だったが、やはり元気が無い様に見えた。


「速水君、お帰りなさい。どうしたの? 何かあった?」


「静香さん。実はタオカさんが亡くなりまして」


 速水の返答に他の社員達も困惑する。色々な話をしてタオカの今後についても覚悟を決めていたからだ。それが何故? 突然亡くなる事は想像できなかったのだ。


 速水は事実だけを端的に説明した。何者かによって毒殺された事、そして犯人と思われる人物は見つけた書類に関わる事を。


「なんやそれ。ほんなら悪い奴が自分を守るために殺害を企てたんかいな!」


「田村。犯人と思われる人物は、ロザヴィア様達が捕縛してると思う。俺としても帝都に向かう際中に、危篤の連絡を受けたからな。あまりに急な展開で、正直今も受け止められないで居るよ」


「私は今聞いても、なんだか現実じゃ無いように思えるわ。目の前で人が亡くなるなんて、私は耐えられなかったと思う」


 田村に続いて静香さんも驚いていた。その他のメンバ-は、言葉に出来ないショックを受けている様だ。


「葬儀などは行われません。密葬して遺体もあの家の近くに埋葬される予定です」


「速水。ご苦労だったな。とりあえず精神的にも疲れているだろう。今日はゆっくり休んだ方が良い」


「来栖さん。ありがとうございます。お言葉に甘えさせて貰いますね」


 俺はそう言って宿の部屋へ向かった。俺もこの世界で人が亡くなる事を理解していなかったんだな。初めて襲われた時に、命の軽さを知ったはずなんだけど。






◇◇◇

 


 その夜~



コンコン!


「速水君、起きてる?」


「静香さん? 起きてますよ。ちょっと寝れそうにないですから」


 部屋を訪ねて来た静香さんに、部屋へ入ってもらった。恋人同士になってから、出来るだけ2人の時間も大事にして来たんだよ。


 ベットに腰掛けた静香さんが、俺の胸に顔を埋める。静香さんもちょっとまいってるみたいだな。


「大丈夫ですか? やっぱり気持ち的にしんどいですよね」


「うん。暫くこうしてて良い? ちょっと現実が受け入れられないんだ」


「俺で良ければ。こうして居ると、俺も安心できます」


 俺は暫くの間、静香さんを抱きしめて過ごした。ほんとならムフフな気持ちになるんだけどさ。流石に今日はそんな気持ちにもならない。


「ねぇ速水君。私達本当に帰れるのかな? 帰れたとして、日本も同じ時間が経っているのかしら?」


「必ず帰れるように頑張りましょう! でも静香さんの言うようにそれは心配ですよね。ここと同じ時間が経っていたとして、俺達は行方不明扱いですかね?」


 静香さんの疑問はもっともだ。忽然と消えた建物と多くの社員達。絶対大ニュ-スになっているはずだ。そして何も情報が無いままに年数が経っていたとしたら、果たしてどう言う立場になるんだろうか?


 一部の社員はこの世界の住人と仲良くなっていて、帰りたくないと言う意見もあるって聞いた。もしこのまま帰れないなら、この世界で生きる事も考えないといけなくなる。


「もし帰れなくても、速水君はずっと一緒に居てくれる?」


「当り前じゃないですか。俺は静香さんから離れませんよ。本来ならプ、プロポ-ズも」


「うふふ。楽しみにしてるね。出来れば日本で結婚式もしたい」


 ああ。静香さん大好きです。2人で良い雰囲気になっていたんだけど、さっきからドアの周辺が騒がしいんだ。ほんとに空気読めない奴らだよ!


「もう分ってるから! そろそろ入って来て良いぞ!」


ガチャリ......


「あれ? 気が付いてらっしゃいました?」


「ちょっと押さないでって!」


 ......ドアの前で耳がダンボ状態だった皆が入って来る。



「お前らなぁ......心配してくれてるのは分かってるんだけどな」


「あははは。バレてたか?」「だから静かにって言ったのに!」「アンタ達が押すからでしょ!」


 田村に倉木さんに安田さん。私関係ありません見たいな顔した花崎さん。


 ん? 来栖さんに安藤さんまで! って岡田さんも⁈ 


「ちょっと皆さん?! ほぼ全員いるじゃない!」


 静香さんはご立腹だ! プンプンしてる姿が非常に可愛らしい。


 色々考える事はあるけど、皆が居れば何とかなる気がする。


「ご心配をお掛けしました。でも皆の顔を見たら、不安も吹っ飛びましたよ。ありがとうございます」


「ほ、ほら! 速水は大丈夫やって言いましたやんか!」


「あら? 篤さんが見に行こうって言ったんでしょ?」「そうね。田村君。面白がってたもの」


「わ、私はついでだったわよ」「俺は何か面白そうだったから?」「来栖さんが引っ張って来たんだ」


「はいはい。分かりました。皆が確信犯だって事は」


 そう言う俺に皆が笑顔になる。やっぱり仲間って良いな。皆との絆があれば、絶対帰れるよ。


 こうして俺は前向きになる事が出来た。さぁ明日からも頑張らないとな!



 帝国での俺達の活動は、気持ちを新たに再開される――― 


この会社はやっぱり仲間意識が高い。


きっと誰かが困っていたら、皆で手を差し伸べるはずだ!


少しゆっくりとした開発だが、この事件をきっかけにして動きがあるようだ......


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 速水さんにはたくさん仲間がいて良かったなあ、とつくづく思いました (´;∀;`) [一言] タオカさんの件で、日本に帰れるのかどうか不安に思った場面が印象的でした。 集団転移してからみんな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ